キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

キャンパスの植物達 HOME 生物学科 HOME

キャンパスの植物達(冬のすがた)

理学部T号館の正面

理学部T号館の正面には両脇に合計3本のモチノキを植えてあります。 枝が混んでしまい、風通しも悪いので煤病にかかっています。枝を間引いて風通しをよくしてやることが何よりも大切です。 造園屋は簡単に外側の枝だけを間引いて終わりにしてしまいました。結果として、真ん中の最も枝の混んでいるところには絶対に手を入れてくれないのです。

 

理学部T号館の花壇にヤブコウジ科のヤブコウジArdisia japonica (Thunberg)Blume、マンリョウArdisia crenata Sims 、 メギ科のナンテン(南天)Nandina domestica Thunberg、センリョウ科のセンリョウSarcandra glaber(Thunberg)Nakaiが植えられています。 みな、冬に赤い果実をつける植物たちです。ヤブコウジを一両、ヤブコウジ科のカラタチバナArdisia crispa(Thunberg) DC.を百両、センリョウはそのまま千両、マンリョウもそのまま万両としておめでたい植物たちであると称しています。 皆、常緑の低木たちです。赤い果実は鳥達の格好のエサです。ついばまれない間に座り込んで、果実を比較し、どのような枝振りかを確かめてください。

ヤブコウジ センリョウ
マンリョウ

隣の花壇にはバラ科のシャリンバイ、クサボケ、モミジイチゴと、シモツケが植えてあります。 植えはしなかったものの、ユキヤナギがでてきます。全てバラ科の植物たちですから、共通点を見いだしてください。

  

花壇を外れて、太い茎から団扇(ウチワ)のような大きな葉を広げ、太い花茎の上にピンクの花房をつけているのはユキノシタ科のヒマラヤユキノシタBergenia stracheyiです。 寒冷期から春にかけて花をつけます。

  

角に立っている大きな木は、クスノキ科のタブノキPersera thunbergii (Siebold et Zucc.) Kosterm.です。 一昨年、この木は水涸れで一時枯れかかってしまいました。たっぷりと水をやり、ようやく回復したのです。 斜め向かいにも、鮮やかな緑色の葉を展開し、緑色の壁を形成しているタブノキがあります。海岸に近い所に好んで生育し、巨木となる木です。 成長が早く、10年後にはあたりを席巻する木となることでしょう。ひょっとするとキャンパスで最も高い木になるかも知れません。 タブノキの北限は岩手県下閉伊郡山田町です。田の浜、小谷鳥、タブの大島にはとても大きな木が自生しています。 毎年たくさんの種子を実らせて、周囲には小苗も育っています。

 

北側の階段下にはマメ科のハナズオウCercis chinensis Bunge が3株あります。 その中の1本は白い花をつけ、他の2本はピンクの花をつけます。 階段の降りた所には、モクセイ科のシナレンギョウ Forsythia viridissimaが枝の節々からたくさんの花芽を生じています。 これらが温かくなると一斉に蕾となり、黄色い花を開きます。木全体が黄色い花で彩られることになります。

     

レンギョウの隣にはアジサイ科のタマアジサイが枯れた姿を見せています。 その裏側にはマンサク科のトサミズキCorylopsis spicata Siebold et Zucc.があります。 毎年根元から、適当に枝を間引いてやらないと、枝が混んで手がつけられないブッシュの状態になってしまいます。 あまりに混んでしまったので、根元から全部切り払ってしまいましたが、3年経過してまた、同じようになってきました。 高さ2mほどの低木です。毎年根元から新しい枝を生じる他に、古い枝からも新芽を生じて来ます。 春早くにそれらの芽から一斉に黄色い花穂を垂れる姿が美しく、うっかり自宅の庭に植え込むと、1株のトサミズキが巨大な藪を形成してしまいます。 一年生枝は直径3〜5o、年ごとに太さを増すけれども、大木にはなりません。灰色を帯びた褐色で、小さな皮目で覆われています。 葉痕はわずかに隆起して三日月形の托葉痕があります。冬芽はフットボール状にふくらみ、頂芽も、側芽もほぼ同じ大きさで、2枚の芽鱗の間から薄緑色の花芽が見えます。 明日にも小さな音をたててはじけそうな芽です。

  

高さ2mほどの低木で、枝はみな細く、枝先に直径2〜3oの球形で紫色の果実を見つけたら、クマツヅラ科のムラサキシキブ Callicarpa japonica Thunbergです。 枝いっぱいに紫色の果実を実らせていたのですが、鳥についばまれ、風にゆられて落ちてしまいました。 葉をつけた腋芽から果軸を生じて花をつけ、今は果実がみのっています。果軸の外側に側芽ができています。 それぞれの枝先に褐色の頂芽が見られ、枝には対生して側芽が見られます。 果軸がじゃまで詳細に観察できなければ、果実をつけていない枝を見てください。

     

秋には毒々しいほどに真っ赤に黄葉し、葉の間から米粒ほどの鮮やかな橙色の仮種皮に覆われた果実を見せていました。 ニシキギ科のニシキギEuonymus alatus (Thunb. ex Murray) Sieboldです。高さはムラサキシキブとほぼ同じくらいです。 この木の特徴は、小枝に翼があることです。2対のコルク室の翼が板状に発達している仲間は他にはありませんから、これを見つけたらニシキギの仲間です。 枝の先には1〜3個の頂芽が見られ、側芽は十字対生に並ぶ。

  

ブナ科のシラカシQuercus myrsinaefolia Blume は、成長すると25mをこえ、太さ1mをこえるほどの巨木になります。 きわめて旺盛に成長し、林の中の王者のような貫禄を示す巨樹となります。 一年生枝は直径2〜3oと細く、長さ15〜30cmあり、10〜15枚の葉を生じ、木の葉は2年間は落葉することがなく、3年目、4年目の葉を残すこともあります。 頂きから7〜8番目までの芽が成長して枝を生じます。理学部I号館と、II号館の3階の渡り廊下からシラカシを見ると、手が届きそうなところにたくさんの花の芽が用意されていることを観察できます。

 

薄暗い林の中を好み、常緑の大きな掌状葉を広げる低木がウコギ科のヤツデFatsia japonica (Thunberg) Decnc. et Planch.です。 葉の指の数は決して8個にはなりません。真ん中の指が葉の中央軸脈になるためです。 木の葉が、一年生枝の先に集まって互生しながら密生しています。花序は茎の真上に出て、若い時には早落性の苞に包まれています。 ピンポン球のような多数の花が放射状に出たものが多数集まって大きな円錐形をなしています。 1個の花は、花弁が5、雄蕊は5、花柱は4〜6に分かれています。果実は青く、球形で、春に熟すると黒くなります。 たくさんの果実を実らせてその重さによって幹は倒れんばかりに屈曲します。この果軸は果実を実らせると落花し、そこには果軸痕が残ります。 そして、腋芽の仮頂芽がのびて主軸となり枝を伸ばし、葉を広げます。

 

ツバキ科の多くは常緑ですが、ナツツバキStewartia pseudocamellia Maxim.は落葉樹です。 葉だけでなく、滑らかな樹皮が、ぺりぺりと剥がれ落ちて、サイケなモザイク模様ができる粋な風情の木です。 枝は正しく互生分枝し、ゆるくジグザグに曲がって二列互生しています。 芽鱗痕があっても、全体的には互生分枝をしています。一年生枝は直径1.5oと細く、灰褐色で、皮目が見あたりませんが、二年生枝には、小さな点状の皮目が見られます。 仮頂芽は、扁平な紡錘形で、芽鱗は灰色をおびた褐色、外側の2枚は無毛であるが、内側のものは白っぽい短い毛が密に生えています。 時に、開いた果実が残っています。

 

ツバキ科のヤブツバキCamellia japonica L.は、わが国に自生するツバキです。 濃いピンクの花弁、たくさんの黄色い葯をつけた雄蕊だけ見てもツバキと言うほどですよく知られた花です。 今回の特別訓練ではこの葉の特徴がいかに理解されるかが問われます。

ヤブツバキ

ヤブツバキの後ろには、モクセイ科のオリーブOlea europaea L.があり、北側にはツツジ科のマウンテンローレルKalmia latifolia L.が常緑の葉の間から春には花をつける細長い穂をのばしています。 その隣には、マンサク科のマンサクHamamelis japonica Sieb. et Zuccがあります。 マンサクは、高さ5〜6mになる落葉性の木です。一年生枝には枯れた葉が残っています。 離層が出来る前に寒さが来てしまい、スムースに落葉できないのだとか、花を保護するために枯れた葉が残るのだとか、講義では聴いた。 たしかなことはわからない。一年生枝は細く、突き出し、灰褐色で、短い毛が生えているようである。多数の皮目がある。 冬芽は二列互生に生じる。一年生枝の葉腋から花柄を持つ花芽を生じる。

 

BACK PAGETOP NEXT

 

All Rights Reserved Copyright / Makoto Yoshizaki, TOHO University