キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達

終わりに

校門から理学部II号館までの間に、こんなにも多種類の植物達が生活しています。春は花の季節です。今年の春はとても遅く、入学式にようやくソメイヨシノが咲きはじめました。

 ほとんどの樹木の花の原器は昨年の秋に冬芽の中に用意されていました。いっせいに咲いて私たちのまわりを飾ってくれる春の花は突然咲くのではなく、すごく長い時間をかけて用意されるのです。

 でも、多くの植物達はなぜ春に花を咲かせるのだろう?

 秋に花を咲かせるのはどんな植物達で、それらの花に訪れる虫達はどんな生活をしているのだろう?

 落下した種子達はいつ芽生えるのだろう?

 植物達の名前をおぼえることによってこれまで気が付かなかったことが見えるようになってきます。木に話しかけ、花に話しかけ、それらを摘んで机に飾ったら諸君達の生物の世界はこれまでと違ったものになるに違いありません。課題は諸君自身の勉強です。

 正門から講義が行われている理学部III号館にいたる道筋の植物達の生育地図を描くことがまず第一の課題です。学生版の牧野日本植物図鑑を携えて、必ず野帳と鉛筆を持って歩いてください。プリントを読みながら、気の付いたことはすぐに記録し、課題にはすぐにとりかかってください。時には観察会や試食会を開きます。この機会に、身近な植物をしっかりとおぼえてください。勉強は個人財産の獲得と蓄積であると考えてください。1回おぼえた植物の名前は一生忘れることのない知識財産となります。何度も、何度も回って見て歩き、声をかけておぼえてください。

 花壇にはかつて250種の草花を植えて分類学の講義や実習、日々の学習に使っていました。でも、花壇の下には地下配線が走り、工事のたびごとにひっくり返されてきました。花壇は植物たちの安住の場所ではありませんでした。工事のたびごとに、植物は引っ越しされて帰ってくるとまったく違うものが植えられていたりしました。

 キャンパスの植物たちは建物が建てられるごとに少なくなって来たのです。なるたけ、身近な植物達を、学生諸君のよく見えるところにと努力して植えついで来たのですがキャンパスは植物園ではないのです。管理する者がいるわけではありません。このキャンパスの植物達に登場する植物達は特に理学部II号館のまわりの植物は自然史研究室の仲間達によって育てられてきたものです。

 キャンパスに新しい建物が建設されると、そのたびごとにそこに住んでいた植物たちは根こそぎ無くなってしまいます。新しい建物の周囲には決まって芝生が貼られます。芝生の中には、値段の安い樹木が植えられます。値段の安い木とは、多くは二次林の構成種であることが多いのです。

 芝生にも時折樹木の芽が芽生えて伸びてくることがあります。しかし、草が生い茂ると円盤式の草刈り機でねこそぎ刈り取られてしまいます。キャンパスの中は、刈り込みにつよい草しか生えないのです。もっとも大きな被害を受けるのは低木です。センリョウマンリョウヤブコウジや、クサボケ、中にはアジサイのようなものまで刈り込まれてしまいます。そういった低木も花壇に収容しています。

  植物系統学では生物多様性の宝庫である藻類の世界を勉強します。種子植物分類学では、身近かな植物達をとりあげて、たくさんの植物を教室に持ち込みます。実際に生の植物に手をふれての観察を通じて分類学の基礎をしっかりと勉強します。分類学実習では、最初にキャンパス内の植物達と友達になることを勉強します。設問に答えながら植物の同定・識別、体構造など基礎知識を習得します。種子植物は生物界の中ではもっとも新しく、およそ2億年ほど前の白亜紀に出現した生物群なのです。いつ頃、どのような仲間から植物が生じ、どのように発展して現在に到達したのか、またその過程で生じた生物分類群はどのような所に成育しているのかを勉強します。

  いずれの講義と実習でも、1冊のしっかりしたノートを用意してこの講義専用のノートを作成して下さい。ルーズリーフやコピー用紙を綴じたものはやめてください。講義は出席を最重視します。ですから出席票は講義時間中の適当な時間に1度だけ配布します。遅れて来た人にはわたりません。講義中に配布されたプリントはキチンとファイルして毎回、講義時間に持参して下さい。また、ルーペと色鉛筆は講義の必需品ですね。

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▲ソメイヨシノ

▲クサボケ

 

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