キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達

掲示板付近

掲示板の裏は小さな植え込みです。すぐ裏にツツジ科のオオムラサキ、その上にバラ科のウメがあり、その上にヒノキ科のサワラが枝を広げています。オオムラサキは常緑の低木で、リュウキュウツツジキシツツジケラマツツジとの自然交配によって生じたものとされる園芸植物です。強健で、5月に赤紫色で直径5〜10pほどもある大きな花をつけます。高さ2mほどになり、花期には豪華な花の塊となって1ケ月も咲き誇ります。広い庭園にも見劣りすることがないことから日本各地のツツジ園の主要な品種であるばかりでなく、世界中の庭園に植えられています。

 ウメは花を愛でる紅梅と、主に果実をとる白梅とに分けられます。このウメは白梅で、「白加賀(シラカガ)」とよばれ、白梅の中では最も多く栽培されている品種で、よく結実します。わが国で売られている大きめの梅干しの実はこれです。サクラの花が咲く前のまだ寒い時期に大ぶりの花を咲かせます。ウメの香りを知らない娘は恋をする資格がないと言われます。あまり強くないよい香りがウメの身上です。

 天に向かってまっすぐにのびた木からでないと柱は作れない。ヒノキはわが国で、もっとも有用な樹木です。ヒノキ科のサワラヒノキに似ている。葉をさわるとヒノキはざっくりとした男の手、サワラはさわらかな(さわやか)女の手であるという。強く握ると少し痛い。球果はよくつき、直径5〜7oで、果鱗は四角から五角形で十字対生構造である。ヒノキほど大きくはならないけれども、まっすぐな材で縦てによく割れ、カンナで削ると白く美しい。古来より神社仏閣で行われる護摩木として使われてきました。受験前に、合格祈願した絵馬の材もこれです。

  サワラの木の高さ3mほどのところに小さな穴が開いているのがわかりますか。ここにはニホンミツバチが巣を作っています。夏になるとさかんにミツバチが出入りしています。このミツバチをねらってキイロスズメバチが襲いかかります。キイロスズメバチは数は少ないものの、何度も何度も襲撃してきて、中にはミツバチの巣の中に入り込んでミツバチの幼虫をくわえて飛び立つこともあります。ミツバチ達は集団で巣の入り口で羽音をたてて防御し、中にはキイロスズメバチに襲いかかります。かくして、秋になると、この木の下にはミツバチとキイロスズメバチの死骸が落ちていることを見ることができます。ミツバチがかわいそうだといってキイロスズメバチを追い払わないでください。自然の生き物はそうっと眺めていることが肝要です。

  ヒマラヤスギの真下にゲッケイジュがあります。4−5月に黄白色の花が咲きます。ゲッケイジュの葉を取って、もんで匂いをかいでごらんなさい学生食堂のカレーの匂いがします。常緑性で、高さ5〜10mの小高木となるのだけれど、ここのゲッケイジュはいつも刈り込まれて大きくはなれない。いつ切り倒されてもおかしくない。刈り込まれても、刈り込まれても、新しい枝を出して生き残っています。葉は互生し、長楕円形、革質でつやがあり、縁は少し波打つ。葉をとって乾燥したものがベイリーフです。カレーライスに入っている枯れた葉のことです。地中海原産の木で、月桂冠はこの木の枝を冠に仕立てたもので、古代オリンピックの勝者に与えられたのは唯一この月桂冠だけだったそうです。

 教養2号館の南側にもゲッケイジュの大きな木があります。ギリシャ神話のダフネのお話も勉強しておいて欲しいですね。

 掲示板の裏にある常緑の木はモチノキ科のモチノキとツバキ科のモッコク、それにミズキ科のミズキです。モチノキは高さ15〜20mになる常緑の高木で、葉は濃緑色で倒卵形、全縁で革質です。樹皮は白く平滑です。雌雄異株で、5月に黄色の花をつけます。直径5〜8oの果実は赤く色づき美しい。本来は平地の山野に自生する木ですが、刈り込みにも強く、成木の移植にも強いことから庭木としても用いられています。春から夏にかけて樹皮をはがして3ケ月ほど水につけて腐敗させます。これを臼でついて組織片を洗い流すと粘り気の強いゴム状塊が残ります。これが「鳥もち」です。鳥もちを細い竹の竿(サオ)先につけて、これで小鳥を捕ったものでした。鉄砲で撃ち落とすのではなく、小鳥を傷つけずに捕まえることができます。もちろん、小鳥以外に、トンボやセミを捕まえるのに使われました。衣服につくと、ベッタリとねばねばとくっついて始末の悪いものでしたが、駄菓子やさんで虫かごといっしょに売っていたものです。

  モッコクの枝は灰色がかった赤い色をしています。葉は互生し、枝の先に集まってつきます。狭い倒卵形で長さ3〜7p、幅1.5〜2p、厚く、革質で、縁はまるく、全体に照りがあります。7月に白い小さな花をつけ、11月に赤い果実をつけます。

 体育館の前に、枝をたわめたマツ科のクロマツがあります。教養2号館の前に見える背の高いマツもクロマツです。樹皮は灰黒色で、縦に亀甲状の割れ目ができます。

 アカマツであるタギョウショウの幹と色と木肌をくらべてみてください。クロマツアカマツは雌雄同株です。枝の先端に白く薄い鱗片に包まれた冬芽が生じ。春これがのびてこの枝の下に黄色い雄花穂を生じ、雌花序は冬芽の先端部に形成されます。枝の頂部に5oほどの紫色の小さなミニチュアのマツカサがついています。これが雌の花序です。下に葉に隠れてまだ青く固い球果があります。これは去年の春に咲いた球果です。さらにその枝の下に褐色の球果があります。これが一昨年の春に咲いた球果です。天気がよいと鱗片葉が開いて中に種子が見えます。マツの果実は熟するのにとても長い時間がかかるのです。

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▲オオムラサキ

▲ウメ

▲ヒノキ

▲サワラ

▲モチノキ

 

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