掲載:2014年1月14日

第113回鳥島オキノタユウ調査報告

鳥島集団の繁殖つがい数は609組に、昨年から71組も増加!
 そのうち、北西斜面の新コロニーは148組で、全体の約1/4を占める。

 2013年11月22日から12月15日まで、第113回鳥島オキノタユウ(アホウドリ)調査を行ないました。下の表は、調査結果の概要です。

 表1.鳥島におけるオキノタユウ集団の2013年11-12月期のセンサス結果。
つがい数とカウント数(平均と最大)を示す。
  従来コロニー 新コロニー 鳥島全体
燕崎斜面 燕崎崖上 北西斜面
繁殖つがい数(組)
450
11
148
609
昨年比
+38
+7
+26
+71
増減率
+9.2%
+175%
+21.3%
+13.2%
カウント数
(羽)
平均
686.4
25.3
267.4
979.7
標準偏差
38.1
3.1
12.8
51.2
昨年比
+20.6
+3.9
+32.6
+54.8
増減率
+3.1%
+18.2%
+13.9%
+5.9%
最大
725
30
282
1027
昨年比
+15
+2
+25
+45
増減率
+2.1%
+7.1%
+9.7%
+4.6%

繁殖つがい数とカウント数

 鳥島全体で繁殖つがい数は609組になり、昨シーズンから71組(+13.2%)も増加しました。とくに、デコイと音声装置を利用して形成した北西斜面の新コロニーでは148組が産卵し、昨シーズンより26組(+21.3%)も増加し、新コロニーは全体の1/4を占めるまでになりました(写真1)。

▼写真1 北西斜面の新コロニー:
平坦な場所にあり、黒っぽい羽毛の若い鳥が大部分(約84%)を占めている。

北西斜面の新コロニー

▼写真2 燕崎斜面の従来コロニー :
中央に掘削した排水路があり、右側の崖下の草地を西地区、左側の草地を東地区と呼ぶ。
東地区のうち、斜面の下側の長方形の部分が従来区域で中央部と呼び、 上側にある三角形の草地を上側の新区域と呼んでいる。

燕崎斜面の従来コロニー

▼写真3 従来コロニー西地区:
手前は2010年2月の泥流跡で(第104回調査を参照)、 地面を安定させるため、2013年7月にこの区域にステンレスの網籠を設置して、チガヤの株を移植した。

従来コロニー西地区

▼写真4.
従来コロニー東地区:中央部の上部の様子。かなり急傾斜の斜面であることが分かる。

従来コロニー東地区

 一方、燕崎斜面の従来コロニー全体(写真2)の繁殖つがい数は450組で、昨シーズンから38組(+9.2%)も増加しました。そのうち、西地区(写真3)では319組、16組(+5.3%)の増加で、東地区(写真4)では131組、22組(+20.2%)の増加でした。東地区の従来区域では85組で、13組(+18%)の増加でしたが、2005年春先の強風による被害を受けた後、2005年の産卵期から数組のつがいが移住して定着した上側の新区域(第91回調査報告を参照)では46組が産卵し、9組(+24%)の増加でした。

 北西斜面の新コロニー確立と同じ2004年産卵期に、燕崎崖上の平坦地に自然に形成された新コロニーでは、昨シーズン、交尾期と産卵期直前に当たる10月中旬に台風22号、21号が相次いで鳥島に接近し、おそらくその影響を強く受けて、つがい数は前年より3組減って4組でした。今シーズンは、ここで11組が産卵し、7組も増加しました。

 それぞれの区域でカウントした個体数の平均値は、燕崎斜面で686.4羽(昨年比+20.6羽)、燕崎崖上で25.3羽(+3.9羽)、北西斜面では267.4羽(+32.6羽)でした。鳥島全体では979.7羽で、昨年比54.8羽(+5.9%)の増加でした。また、カウント数の最大値でも、ほぼ同様の増加傾向が読み取れます。

繁殖状況の評価

 鳥島全体での繁殖つがい数は609組でした。昨シーズンには繁殖つがい数を約550組と予測しましたが、実際には538組でした。この原因の一つとして、交尾期と産卵期直前に相次いで鳥島に接近した2つの台風を指摘し、おそらく吹き荒れる強風によって繁殖行動が妨害されたのだろうと推測しました。昨年の調査の後、カウントされた個体数が大幅に増えたことを根拠に(鳥島全体では100羽も増えた)、繁殖つがい数が「予測を下回ったのは一時的なもので、来シーズンには以前の予測値である約590組が産卵するにちがいありません」と結論づけました(第109回調査報告)。

 今シーズンの事前予測では、昨シーズンの繁殖つがい数538組にもとづいて、約580組としましたが(第110回調査報告)、実際にはこれらの予測をはるかに上回る609組が産卵しました。昨シーズンに繁殖できなかったつがいや今シーズンから繁殖を開始したつがいが加わって、急増したと考えられます。

 今シーズン、最多カウント数は1027羽でした。カウントした9日のうち、4日で1,000羽を超えました。9日間の平均カウント数は980羽でしたが、1,000羽を一度に観察できる日が多くなったといえます。また、今シーズン、繁殖つがい数が大幅に増加したにもかかわらず、カウント数があまり増加しなかったのは、3年前の巣立ちひな数がその前年より少なく、今シーズンに若鳥となって帰還した個体が少なかったためだと考えられます。その後は巣立ちひな数が順調に増えたので、来シーズン以降はカウント数がかなり増加するでしょう。

今後の予測

 もし、繁殖活動が順調なら(繁殖成功率が約70%)、2014年5月に約425羽にひなが巣立つと期待され、繁殖期後の鳥島集団の総個体数は約3,560羽になるでしょう。そして、過去34年間の平均増加率で増えるとすれば(指数関数的増加)、2014-15年繁殖期のつがい数は640組、2015-16年期に690組、2016-17年期に740組、2017-18年期に800組、2018-19年に860組、2019-20年期920組、2020-21年期には約1000組となるでしょう。

 しかし、最近7年間の繁殖成功率は平均して69.8%で、過去34年間の平均値の59.8%より10%も高いので、繁殖年齢(平均7歳)に達して繁殖を開始する個体数がこれまでより多くなり、来シーズン以降、繁殖つがい数は660組、720組、780組、840組、900組、970組、1,050組と増えて行くと予測されます。そして、これまでの予想より1年早く、2018年5月に鳥島集団の総個体数が5,000羽に到達すると推測されます。

 これからの7年間は、従来コロニーから巣立った多数の個体が移入してくるだけでなく、新コロニーから巣立った個体も帰還して繁殖を開始するので、北西斜面の新コロニーは急速に成長するはずです。おそらく、繁殖つがい数は来シーズンに約180組、その後は220組、260組、310組、370組、430組、500組と増えると推測されます。

 


調査報告一覧