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大学の地域支援活動
「からだのとしょしつ」での「便利な道具の情報展」について

看護学部高齢者看護学研究室 横井郁子

 2013年3月1日から「からだのとしょしつ」の司書の方々との共同企画で「便利な道具の情報展」を開催した.当初,2ヶ月間の予定だったが,予想外の手応えがあり1ヶ月延長させていただき5月31日まで開催した.
 まずは「からだのとしょしつ」というすばらしい存在についてお伝えしたい.「からだのとしょしつ」はすべての人に開かれ(入り口で身分のチェックはない),どのような医学知識レベルにも対応できる書籍をそろえるという明確なコンセプトを打ち出した他に類を見ない院内図書室である.病気を持ってもできるだけ自分でという覚悟を持った自律心の高い方々は今後ますます増えていく,いや,増えざるを得ないであろう.そのような中,自ら足を運んで正確な情報を求め考える場所として本学は大森病院内に「からだのとしょしつ」を設置している.そこには医学メディアセンターでの経験豊富な,そして,「患者」へのきめ細かい配慮ができる司書が常駐しているのである.そんな場でなぜ道具の展示なのか.その理由には2つある.

I. 「私」の生活に早く戻るために,道具の情報を得る,活用する

 急性期病院の在院日数は短縮した.完治を持って退院というのはもう昔のことであり,今は回復の「兆し」がみえたら退院となる.まだまだ生活のちょっとした工夫は強いられる状態での退院である.自分でできなければ,家ではなく他の病院,施設を経由しなければならない.「できれば帰れる」.だから道具を知ってほしい.ちょっとの工夫と勇気で「自分でできる,できそう」と思っていただきたい.だから,病気への関心の高い方々が集まる場に道具を置いたのである.介護保険と同じで元気なときから関心を持ってほしい.そうすれば余裕を持って選択でき,さらに,機能性だけでなくやる気がわくおしゃれな道具をみつけることができる.
 「そのような道具も患者さんへの大切な情報です.ここで扱う価値があります」.からだのとしょしつの運営関係者たちの回答である.やはり,この図書室はすごい.

II. 道具の情報は急性期病院には入りづらい

 福祉用具など療養のための道具の情報は急性期の次の段階の病院や施設で,という認識が看護師にもある.だから,病院で展示する意義はあると考えている.「こんなものがあれば一人でできます」といったアドバイスができるかは患者・家族の「やる気」に大きく作用する.

 道具によってはあるだけで元気にしてくれる力を持つものがある.だから,今回の展示では便利さの他にデザイン性を重要視し,インテリアデザイナーや商品を提供してくれるメーカーの方々の協力もいただいている.近所の介護用品店からも情報をいただいた.展示アンケートでは好意的な意見ばかりで,とくに中高年の方々の関心の高さに驚いている.食事に関するもので企画をスタートさせたが,これだという道具に出会えたら新たなテーマで開催させていただきたいと思っている.

花水木134号(2013年7月1日発行)


<写真説明>
写真1:第1回の展示は「オクソー」.「こんなところでの展示は初めて」とニューヨーク本社にこの展示が報告されたとのこと.
写真2:5月からの展示は「ルクエ」を中心に便利食器.「ルクエ」は火を使わずに料理ができることだけでなく色がきれい.色で元気がもらえる.

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