大森病院ボランティアによる「なのはな文庫」の活動
「なのはな文庫」は、患者さんのアメニティ向上を目的に、病棟のデイルームや外来の待合エリアを巡回して、本棚の本を整頓し、不要な本を取り除き、新しい本を補充する活動です。現在6人のボランティアが活動登録しており、毎週火曜日の午後、院内15か所を巡回して活動しています。
「なのはな文庫」の活動は、「からだのとしょしつ」のボランティア活動の一環として、平成21年8月からおこなわれています。
「なのはな文庫」立ち上げのきっかけは、「からだのとしょしつ」を利用される患者さんから寄せられた声「医学書ではない、ふつうの本も読みたい」でした。
「からだのとしょしつ」の司書として、日々、患者さんやご家族が医学情報を入手するためのお手伝いをするなかで、いずれは、このようなご要望が出ることを予測していました。
そこで、ボランティアコーディネート委員長に相談したところ、当時、病棟のデイルームの何カ所かに本棚があること、その本棚の管理はそれぞれの病棟でおこなわれていることなどを知りました。つぎに、ボランティアコーディネート委員会の専任委員に相談したところ、外来案内ボランティアのなかに、「入院患者さんに読書を楽しんでもらうための活動をしたい」と考える方たちがいることを知りました。
そこで、「からだのとしょしつ」で活動中の1人にも参加していただき、ボランティア5人、司書1人の「活動開始準備グループ」ができました。
具体的にどのようなことができるか、どのようなことに注意して活動するかといったことについての検討を始めると同時に、病院側にも、この活動の許可をお願いしました。幸い、病院長、看護部長のご了承をいただき、本格的な活動開始準備に入ったのは平成20年6月のことでした。
その後、活動開始までの約1年間におこなったことは、まず、当時の病棟デイルームにすでに設置されていた本棚の状況の調査、つぎに、他病院のホームページから院内図書室の活動の様子を学ぶこと、昭和大学病院の院内文庫の見学、大田区の公立図書館からリサイクル本を寄贈していただくための話し合い、そして、活動マニュアルや選書基準の作成などでした。この準備期間中に病棟の看護師さんたちのご意見をうかがうことができ、また、「なのはな文庫」ボランティアグループとしての気持ちのまとまりができたことが、スムーズな活動開始につながったと思います。
活動開始後は、病棟だけでなく外来からもご要望が出て、現在の活動場所は、外来の待合エリア6か所、病棟のデイルーム9か所の計15か所に増えています。
「なのはな文庫」ボランティアグループは、本を読むことで、入院患者さんには日々の暮らしに安らぎと癒しを、外来患者さんには待ち時間をゆっくりと過ごしていただけるようにと願って活動しています。
入院患者さんからは「毎週火曜日が楽しみ」とか「本が読めるだけでなく、ボランティアさんたちが働いている姿を見るのも楽しい」といった声をいただきます。
病院ボランティア活動は、単なる活動ではなく、活動をとおして“病院に社会の風を入れる”ことができる(日本病院ボランティア協会編「病院ボランティア:やさしさのこころとかたち」中央法規出版 2001)といわれますが、「なのはな文庫」ボランティアたちは、患者さんに単に本をおとどけするだけでなく、病院の外の空気も一緒にお届けできているのかもしれません。
「なのはな文庫」は、これからも無理せずじっくり活動を続けてゆこうと思っています。
「なのはな文庫」の活動についてのお問い合わせは「からだのとしょしつ」(2号館3階内線3519)へ、ボランティアの申し込みは「ボランティアルーム」(5号館3階内線3518)へお願いします。
医学メディアセンター 司書 「からだのとしょしつ」担当 押田いく子
【医学部ニュース124号(2011.7.1)】