柳田邦男氏来訪「からだのとしょしつ」(2011.10.1)
昨年10月1日(土),作家柳田邦男さんに「からだのとしょしつ」をご覧いただき,あわせて,お話を伺う機会を得ました。
柳田さんと聞くと,私はいまだに1980年代の航空機事故の報道番組での,テクノロジーだけでなく人間の心理にも注目した独自の視点による解説を思い出します。
その後も幅広いテーマで発言されていますが,患者や家族への情報提供についても,早くから関心を持たれていました。1990年代の終わりごろ,私は,医学図書館関係の講演会で柳田さんが「21世紀は医療が大きな社会問題になる」と話されたのを聴き,「医学図書館のサービス対象は医学関係者だけれども,いずれは,患者さんやご家族の要望にこたえて直接,情報をお伝えするときが来るかもしれない」と思ったことがありました。
1993年に厚生省(当時)が「インフォームド・コンセントの在り方に関する検討会」を設置し,2年にわたる検討を経て1995年6月に報告書が纏められましたが,柳田さんはこの検討会の座長をされました。提出された報告書には「元気の出るインフォームド・コンセントを目指して」という公的文書には珍しい表現の副題がついています。この報告書で,患者と医療者双方が歩み寄ってコミュニケーション不足を解消し,納得のいく医療を実現することを提唱されています。
ご来訪の後にいただいた葉書に,次のような感想を書いてくださいました。
「からだのとしょしつのゆったりとしたスペースは,患者さんや家族の方々がゆっくりと,病気について詳しく調べたり考えたりするうえで,とてもふさわしい空間になっていると感じました。」また,司書が常駐することについて,「詳しく知りたいという利用者が,容易に必要な情報にアクセスするうえで不可欠の存在だと思います。」とも書かれています。
「からだのとしょしつ」を引き続き発展させていこうとの思いを新たにした柳田さんのご来訪でした。
【医学部ニュース 126号(2012.1.1)掲載】