ギッブスの振動    Gibb's oscillation

 下図のような周期 秒の繰り返しパルスに対して、フーリェ級数展開がどのように近似するかを調べてみましょう。

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とおいて、フーリェ級数展開を有限項で打ち切った式は、

のようになります。 が 5, 15, 25, の場合について、 が近似してゆく様子を下に示します。

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ギップス(Josiah Willard Gibbs, 1839-1903)は不連続点の近くの を右図のようにズームアップして観察し、 を大きくしても振動の高さがなかなか収まらないことを発見しました。 その様子を、具体的に見てみましょう。 そのために、不連続点に一番近いオーバーシュート(第1オーバーシュート)の頂点に注目し、これが でどんな軌跡をたどって、どこに収束するかを調べます。 時刻ゼロの直後の第1オーバーシュートの頂点は、

を満たす一番小さな時刻で生じます。 右辺カッコ内の各項は余弦関数を等間隔にサンプルしたものですから、半周期を( から までを)サンプルして総和がゼロになるように時刻 を選べばそれが最小です。 その時刻は

となります。 実際、上の{  }の中は項数 が偶数か奇数かにかかわらず、常に

を満たすことは明らかです。 しがって、この時刻を に代入して、第1オーバーシュートの値が

のように求まります。 項数 を増やしながら上式を数値計算すると下のようになり、より少し大きな値に収束してしまうことがわかります。 

N=5        1.18233
N=10
       1.17981
N=20
      1.17919
N=40
      1.17903
N=80
      1.17899
N=160
    1.17898

ギッブスの現象は、フーリェ級数がすべての時刻で一様に収束するのではなく、自乗誤差の積分

の意味で を近似することを物語っています。 すなわち、不連続点の近くでは、減衰しながらオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返して近似しますが、項数 を大きくしてもそれらのピーク値は小さくならず、ちょうどジャバラを押し縮めるようにして上の自乗誤差積分をゼロに収束させています。