:杉森先生 :インタビュアー
■研究テーマとの出会い温泉微生物を研究テーマに選ばれたのは何故ですか? 東邦大学に来る前は、日本歯科大にいて、口腔内の微生物を、その前の北里では、ウィルスなどを研究していました。 21年前に東邦大学の生物の部屋に移って来たんです。 高温で、なおかつ酸性がすごく強い温泉をターゲットに調査して回りました。 そうこうしているうちに92年にロシアでの調査の話が持ち上がりまして、海外にも目が向いてきたんです。 そうしますと、東邦に来てなかったら温泉微生物じゃなかった? そうかもしれないですね(笑)。 *********************************************************** 温泉微生物というのは聞き慣れない言葉ですけれど、研究されている方はまだ少ないのですか? 好熱菌というのは実は非常に有用な分野で、工業分野でも注目されていますので、お金と人材の溢れているところでは、酵素をとったり遺伝子の分析とかもやっているようです。 ただ、私はもっと、温泉と微生物の接点、基礎面を重要視してやっていきたい。 何十キロも機材背負って、単純に温泉を採取しに行くってことをやってる人はあまりいないかもしれません。発表もあまりないですね。 現地まで機材背負って行って、サンプル取って来るのを楽しんでやってるのは、私くらいかもしれません(笑)。 *********************************************************** ところで、現地で採取したサンプルは、そこで直接顕微鏡を覗くのではなくて、持ってきて調べるのですか。 そうですね。 だいたい、経験で、こんなところにいるだろうとめぼしをつけるんです。 こちらに運んで来る間に、低温で保管して好熱菌が死んでしまったりということはないのですか? それはよく聞かれますね。 ■国際研究調査チーム結成秘話国際的なチームを組んで調査を行っているようですが、どのような経緯でチームを組むことになったのですか? そうですね…(しばし考え込む)。ソビエト崩壊後、ロシアになってカムチャッカとかを全てフリーにしたということが一番重要なポイントですね。 東大で研究をしている高野先生のところにも、「とにかく一度見に来ないか」という話がきたんです。それで、その時は真冬に高野先生がカムチャッカに一人で行きました。 今度は翌年の夏、少し研究費もあるからということで、日本から4人、ロシア側からもチームを組んで一緒にやりましょうということで、火口湖の調査が始まったんです。 でもまあ、こんなところは二度と来ることは出来ないだろうと、夕日を見ながら思ってたんです。 ところが、翌年、科研費が通りまして、もう一度本格的に調査を行おうということになりました。 そうこうしているうちに、カムチャッカ自体が、石油がなくて、電気がない、暖房がないという厳しい状況の中で、火山研究所の研究者たちが居着かなくなっちゃったんですね。開店休業みたいな状況になってますんで、私が3年間一緒にやった連中も、もうモスクワに帰ってしまいました。 その後、95年に国際会議がウラジオストックでありました。 カムチャッカの火山研究所の人にも好まれて、毎年来い来いと言ってくれて。 共同研究をして、お互い成果もでています。 ウラジオストックの方は地質学研究所で、そこは今でも盛んです。お金のないご時世ですがいろいろとつてがあるらしくて、私のロシアでの滞在費くらいは出してくれるんですよ(笑)。 97年の調査に関しては火山研究所の研究者たちと一緒にやりました。 向こうでは、ロシア科学アカデミーの横のつながりがありますからね。 研究チームはまあ、そんな経緯で今も続いているというわけです。 ■食事についてロシアで食事などに困られたことは? それもよく聞かれるんですけど。一時日本で報道されてた、パン屋にパンがないのに人々が行列をしている映像、あれは嘘です(笑)
って。あれは、パンが焼けるのを待ってる人たちの列だったらしいですよ。 山へ入ってからは、どんな食事をしているのですか? ほとんどは街で買って持っていきます。道すがら野生のブルーベリーを食べたりもしますが。 忙しいので、自分で鮭を取って食べたりはあまりしません(笑) ■日本にいるときはどんなことを?日本にいるときにはどんなことをされているのですか? 授業もしますし、論文も書きます(笑)。 温泉微生物に関する本ですか? そうですね。 そういえば、温泉学会というと、なにやら怪しげに思われるのは困るんですよ。 温泉に浸かりに行くと思われるんですね(笑)。 そうみたいです。 *********************************************************** そういえば、先生がモデルになっている漫画があるそうですね。 中学校の同級生が漫画家の…、酒井美羽ってご存知ですか。 連載の次の号では、今年調査に行ったときのカムチャッカでの出来事なんかも描くらしいです。 でも、絵とか、ストーリーとかは全然実話じゃないんですよ。見たら笑っちゃいますよ。細面の二枚目で。足なんかすごい長くて。白泉社から出ているシルキーという雑誌に連載されてます。単行本も出てるんですよ。もう5巻くらいなのかな? 面白そうですね。是非読ませていただきます。 →酒井先生の公式HPはこちら!http://www.sakai-miwa.com/
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