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徳島県、伊島における両生類/陸生・陸水生甲殻類/陸生貝類調査要綱

2005.6.3

第1部 伊島における両生類調査要綱

はじめに

 伊島に生息する両生類は、カエル類3種、有尾類2種+とあまり豊かではないが、非常に大型化したヒキガエルが生息すること、小型サンショウウオが生息することなど、島嶼としては非常に特異な生物相を示している。小さな島であるにもかかわらず、放棄された水田跡地の広大な湿地、渓流、水路、ため池など多様な水域が存在する。そこで、それぞれの両生類がどのような微環境を利用して生息しているのかを、野外調査によって明らかにする。夜行性の種類が多いので、夜間調査が主になる。
 ともかく、伊島の両生類相でもっとも注目すべきなのは、巨大なヒキガエル(ニホンヒキガエル)の存在である。これまでの調査(2002年10月、2003年6月)で、体重500gを超え、最大で800gに達する非常に大型の個体から構成される集団であることがわかってきている。さらに、カスミサンショウウオの生息が確認されており、生息する両生類は、以下の目録のように、カエル類3種、サンショウウオ類2種にのぼる。伊島の面積と環境を考慮すると、かなり種類数が飽和した状況にあることがうかがえる。

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伊島産両生類目録

ニホンヒキガエル カスミサンショウウオ アカハライモリ

 伊島における両生類の生態調査では、どんな点に注目すればよいであろうか?やはり、巨大ヒキガエルの生態調査がもっとも魅力的なテーマである。そこで、今回は過去に撮影したヒキガエルの写真画像を活用し、伊島に生息するヒキガエルの個体数推定をテーマとしたい。伊島には6月10日から12日まで、3泊を予定している。夜間はこの3日間をフルに活用して、巨大ヒキガエルの生息個体数を推定するのである。個体数の推定方法は生態学のテキストを参考にして、班員で考案して実施してもらいたい。個体数が推定できれば、生物量(バイオマス)の推定も可能であり、小さな島嶼生態系における巨大ヒキガエルの存在意義についても示唆が得られるであろう。その鍵を握るのが、ヒキガエルの食性である。

 食性調査の方法としては、吐き戻し法と糞分析法が適用可能である。吐き戻し法はカエルの胃を反転させて内容物を得る方法である。今回は糞分析法をもちたい。捕獲したヒキガエルを個体別に袋あるいは容器に入れ、脱糞するまで宿舎にとどめておく。糞は直ちにアルコールで固定し、大学まで持ち帰り、双眼実体顕微鏡で内容物を同定していく。

ニホンヒキガエル ニホンヒキガエル

 ヒキガエルの個体識別は、体側の斑紋にみられる個体差を利用して行うことができる。2003年の6月に行った実習では、前半の撮影された個体9個体のうち、後半で捕獲された11個体の中で2個体が斑紋判定によって同一個体と判断された。予備的な推定によれば、個体数は約50となる。
 そこで、3日間毎晩夜間に、捕獲・測定・写真撮影(デジタルカメラを用いて)を行って個体識別を行い、標識再捕獲法と除去法を適用し、個体数推定とバイオマス推定を行う。

 6月は、上陸したヒキガエルが繁殖した池から分散する時期でもある。変態直後の幼体がどのような場所で発見されるのかに注目して、繁殖・産卵場所の推定を行いたい。過去の観察から、巨大なヒキガエルが発見される地域は島中央部の貯水池を中心としたごく狭い範囲に限られていた。なぜ、そのような範囲にしか見つからないのであろうか?夜間にヒキガエルが出現する環境の特徴を明らかにすることもこの実習のテーマとしたい。

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伊島で捕獲されたニホンヒキガエルの体側斑紋の個体差と測定値

ニホンヒキガエル メス 620g 153.5mm ニホンヒキガエル メス 750g 180mm ニホンヒキガエル オス 580g 154mm
▲ メス 620g 153.5mm ▲ メス 750g 180mm ▲ オス 580g 154mm
ニホンヒキガエル メス 560g 177mm ニホンヒキガエル メス 700g 169mm ニホンヒキガエル メス 820g 168mm
▲ メス 560g 177mm ▲ メス 700g 169mm ▲ メス 820g 168mm
ニホンヒキガエル メス 710g 174mm ニホンヒキガエル オス 390g 143mm ニホンヒキガエル メス 570g 163mm
▲ メス 710g 174mm ▲ オス 390g 143mm ▲ メス 570g 163mm
ニホンヒキガエル メス 555g 170mm ニホンヒキガエル メス 740g 170mm  
▲ メス 555g 170mm ▲ メス 740g 170mm  

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第2部 伊島における陸生・陸水性甲殻類の調査要綱

2005.6.3

1.伊島産甲殻類目録の作成

 前回の調査(2003年)で確認された種の目録:以下の5種類が記録された。ただし、夜間調査で、島内の沢を懐中電灯で照らしたり、タモ網ですくってみたところ、スジエビあるいはテナガエビの仲間と思われる淡水性(回遊性)のエビ類が高密度で確認、捕獲されたので、今回は、島の淡水環境を網羅的に調べ、各水域に生息する甲殻類の種類構成とその生態分布を明らかにすることを目標とする。


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伊島の陸生カニ類

 生態分布の解明とは、各種の生理的、形態学的、行動学的特性がその生息場所選択にどのように結び付いているのかを明らかにすることであり、以下の項目を調査することによってその目標に近づくことができる。

  1. 野外において対象種の分布を明らかにする
  2. 物理的環境(温度、水分、塩分濃度、光条件)に対する種ごとの嗜好性を明らかにする
  3. 野外における環境条件の測定(温度、水分、塩分濃度、光条件)
  4. 微生息場所の選択に関わる外部形態の測定と特徴付

 環境別に確認種表を作成する。島内の環境は、人為的干渉の有無・程度にそって5つの調査区を設定する。このほか、海の影響を強く受ける場所、湿地、沢などの微環境に注目して探索する。この調査を2日目に全日をかけて行う。

 伊島における陸生、陸水性甲殻類の生息環境区分は、水系を中心に考えるとよい。そのため、まずは島の水系図、分水嶺によって区分される集水域地図を作製する。島には、3つの河口があるので、3つの集水域(北部湿地、西部渓流、南部貯水池)を区別できる。さらに、各集水域内の環境を相観植生で区分する。
 陸上での生息場所と主な産卵場所までの距離や、産卵場所となる海の状態(波当たりなど)、集水域内の環境別面積割合などがマクロにみた場合にカニ類の生息環境を規定する要因(種類構成に影響を与える要因)となるだろう。
 淡水性エビ類については、伊島で種の同定を行うのは難しいので、現地では仮の命名をした上で、標本を持ち帰り、実習室の実体顕微鏡を利用して同定を行う。

  集水地
微環境 北部湿地 西武渓流 南部貯水池
森林渓流
水路 × ×
湿地 ×
湧水
開水面(自然) ×
貯水池 × ×
○:存在する、 ×:存在しない、 ▲:少ししか存在しない

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2.生態調査

 陸生傾向の強いアカテガニは山頂部分にまで達し、そこで陸生の土壌動物や植物を餌として利用しているが、産卵は海岸で行う。ベンケイガニにも同様な傾向が見られる。つまり、この2種は島の環境を立体的に利用しているのである。そこで、産卵間際の個体、産卵前あるいは産卵後の個体、交尾をしようとするオス個体(交尾は雌が脱皮して甲殻がまだ柔らかい状態の時に行われる)、未成熟の個体、がそれぞれどのような環境を利用しているのかに注目することにより、性、年齢、繁殖活動の異なる個体が島内でどのような生態分布を示しているのかを明らかにする。

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分布調査

 1日目に島内の分布調査を行い、各種の分布図を作成する。そのためには、野外で種を識別して記録できるように準備が必要である。カニは種類が少ないので、それほど難しい作業ではないだろう。密度が高くない場合には、発見した地点を地図に書き込み、GPSで緯度、経度を記録するとともに、環境(マクロ、ミクロ)を記録する。発見地点を書き込んだ地図と発見した種の表を作成する。この元データから、種別の分布図を作成する。
 前回の実習で、クロベンケイがもっとも海岸近くの湿地にと用水路に多く、山際の水路や石垣にベンケイガニ、そして山の森林内にアカテガニが生息するという傾向が見られた。この傾向が確実なのかどうか、確かめることが今回の実習における大きなテーマでもある。
 生態観察:海に近く、産卵待機個体がいる場所と、海から離れ、未成熟個体や繁殖に参加していない個体がいる場所を区別し、この2箇所で個体群の調査を行う。できる限りたくさんの個体を捕獲して、種、性別、繁殖状態(メスならば抱卵の有無)、サイズ(背甲の幅と長さ、甲の厚み、鋏のサイズ)、体重を測定し、場所ごとの個体群構造を比較する。個体の捕獲を効率よく行うための工夫が必要である。昼間は穴や石垣の隙間に潜ってしまうので、捕獲が難しい。夜間調査が中心になるので、その準備(懐中電灯と電池の用意)をすること。

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食性

 陸上でアカテガニやベンケイガニがどのような餌を利用しているのであろうか。これについては、夜間観察で可能な限りデータを集めて欲しい。種によっては、大型のミミズや昆虫の死体などを利用している可能性がある。また、もしもそうならば、トラップを用いて捕獲が可能なはずである。2002年の9月に行った観察では、ベンケイガニがヤブニッケイ(クスノキ科)の果実とキズタ(ウコギ科)の葉を切り取って摂食していたのに対して、アカテガニはミミズの死体を摂食していた。トラップの代わりに、植物質、動物質の餌を交互に設置し、その餌を利用しに集まるカニの種類を調べることで、ベンケイガニとアカテガニのニッチ(食性)の違いを明らかにすることができるのではないだろうか。もちろん、夜間に直接観察を行って、野生状態で利用している餌のメニューを明らかにできれば、それにこしたことはない。

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繁殖活動と幼生の放出

 実習期間中の月齢と、潮の満ち引きを調べておき、産卵が確認できる可能性があれば、その観察も計画に組み込むこと。アカテガニやベンケイガニは潮の干満によって幼生の放出を行い、一般に満潮の1時間後ぐらいに幼生放出のピークがみられるという。抱卵している個体を発見したら、その卵を一部採取し、顕微鏡で発生段階を調べてみよう。もし、潮の干満に合わせた繁殖周期をもっているのであれば、卵の発生段階も集団毎に揃っている可能性がある。すなわち、海で産卵する甲殻類が島の陸上環境をどのように利用しているのか、というのがもっとも大きなテーマである。このテーマに沿って、具体的な観察、データ収集を行って欲しい。文献による事前情報収集も非常に重要である。

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形態測定

 カニを測定する際には、ハサミに挟まれることによるケガの防止を心がける。そのためには、革の手袋を利用すべきである。右利きの学生は、測定に際して、左手の親指と人差し指でカニの背甲を左右からつまみ、右手にもったノギスをカニの甲羅やハサミ、付属肢などの測定部位に正確にあてがう。素手で扱うと、強力なハサミに挟まれることを恐れるため、作業の効率が悪くなってしまう。万が一挟まれても、革手袋の上からならば痛くないので作業がはかどる。
 ここで行う形態測定は、機能形態学(Functional morphology or Ecomorphology)という分野に関連した測定である。生物の形態が有する機能は、そのサイズ、サイズ比などの表現することが可能である。地上性で早く走る鳥の足は、飛翔性でめったに地上に降りない鳥よりも頑丈で大きくできている。大きな種子を砕いて食べる種子食者の鳥は、昆虫の幼虫を食べる鳥よりも厚みのある頑丈な嘴をもっている。生物の形態は、その生活様式を反映したものである、との前提に立って、体の形態測定から生活様式との関係性を読み取ろうというのが、機能形態学の課題である。したがって、どの部分を測定するべきかは、決まっているわけではなく、対象生物の形態が有する機能の中から何を読み取ろうとするのか、どんな情報を引き出そうとするのか、前もって考えて、あるいは生物の姿を見ながら決めなければならない。
 多くの場合、生物のサイズは一定ではないから、形態的特徴は基準となる体の部位に対する相対値として表現されることになる。体の大きさを指標する基準測定値は、たいてい生物の種によって定められている。ヘビやトカゲでは尾を除いた頭胴長が、魚類では尾ヒレの付け根までの尾叉長が基準体長値として用いられる。甲殻類では、背甲の最大横幅(甲幅長)か、長さ(背甲長)が基準測定値となる。縦横比が種によって異なるから、両者を測っておくと甲羅の形の違いを知る上で役に立つ。以下、機能と形態の関係に注目した測定部位のリストを示す。

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移動速度

 カニの動きを見ていると、ハサミを除いた4対の付属肢(歩脚)を用いて移動している。基節と腿節を横に伸ばし、脛節を左右に動かすことで移動する。人の足でいうと、腿の長さ、脛の長さ、足の長さに相当する部分を全て測定し、それぞれの長さを背甲幅長の比率として表現する。移動方法の種による違いを詳しく観察してみて、もし足の使い方に何らかの違いが見られたならば、少なくとも数個体について歩脚を全て測定し、その長さを背甲に対する比として表現してグラフ用紙に書き込んでみよう。第1歩脚、第二歩脚、第三歩脚、第四歩脚の順に歩脚の全長(座節+長節+腕節+前節+指節の合計)の相対値を図示するのである。種による違いは、各歩脚の相対値(背甲幅の何倍か)と、どの歩脚が一番長いか、という点に現れるであろう。歩脚の全長だけでなく、各節の相対長にも違いが見られるかもしれない。まずは、主に水中にいて泳ぎを主な移動手段とするモクズガニと陸上での歩行が主な移動方法であるアカテガニを比較することで全体的な変異のあり方に眼を向けてみてはどうだろうか?

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配偶行動

 陸上生活を送るカニは対面姿勢で交尾を行う。その際に、オスは鋏脚でメスの体をはさんで固定し、交尾器を挿入する。交尾に至る前に、オス同士の身体的闘争や儀式的闘争が行われる場合があり、その際に武器として鋏が用いられることがある。この行動が繁殖に関わる形態の性的二型をもたらすわけである。したがって、繁殖行動の違いが性的二型の種間差となって現れる可能性がある。海岸に近い場所でまとまって生活しているクロベンケイガニから森林内で分散して生活しているアカテガニ、その途中のベンケイガニ、湧水地点に集中分布するサワガニを比べてみるとき、陸上への依存度の高まりと性的二型の発達程度に何らかの平行現象が見つかるかもしれない。性的二型が現れる部位としては、鋏脚の形態、左右の大きさの違いに注目するとよいだろう。下の写真はアカテガニの交尾であるが、両方の鋏をつかって、メスの歩脚4対をわしづかみにしている。こういう使い方をするのであれば、左右のサイズの違いは生じにくく、オスの大きな鋏は交尾の時のメスの保持に役立つという機能が期待される。


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食性

鋏脚の細かい形態を測定する必要がある。ハサミ脚の可動指と不動指の長さ、高さ、関節部分の高さと幅などは、ペンチの形と相似である。挟む力の強さは、可動指の長さと関節からハサミ脚の基部までの長さ、ハサミ脚の太さによって規定されるはずである。脚の太さは筋肉の断面積に比例するが、挟む力はハサミ脚の長さと可動指の比率(支点の位置)によっても異なってくる。可動指と不動指にある鋸歯の形状についても記録を取っておこう。利用する餌の種類との関係が見えるかもしれない。

アカテガニハサミ脚 上面 アカテガニハサミ脚 正面
▲ アカテガニハサミ脚 上面 ▲ アカテガニハサミ脚 正面

 住み場所又は隠れ場所:カニは多くの生物に捕食されるため、危険を感じると素速く隠れ場所に避難する。避難する場所が狭い岩の隙間であれば、平たい体型が有利であり、自分で掘った丸い穴に入るのであれば、丸っこい体型でもよい。背甲の幅、背甲の長さ、胴体の厚みを測り、直方体に近似した上で、体の厚みが立方体からどれだけ隔たっているのかを示数で表示してみよう。
体の厚み指数=厚みの実測値÷ 3√(甲幅×甲長×厚み)
である。もし、カニが隠れる場所の隙間サイズを測ることができたら、その隙間幅とカニの体の厚みの関係をみてみよう。

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第3部 伊島における陸生貝類の調査実施要網

2005.6.3

1.伊島産陸生貝類目録の作成

1.前回の調査(2003年)で確認された種の目録

*前回の調査では、淡水環境の貝類がまったく発見できなかったので、今回はそれにも注目して採集を行う。

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2.生息環境別確認種目録の作成

 環境別に確認種表を作成する。島内の環境は、人為的干渉の有無・程度にそって複数の調査区を設定する。このほか、海の影響を強く受ける場所、湿地、沢などの微環境に注目して探索する。この調査は2日目に全日をかけて行う。

 伊島の主な環境区分(白地図にこの区分をラフに書き込んだものを用意する)

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2.多産種の生態調査:微生息場所の記載、個体群構成

 上で示した9環境区分から最低3箇所の比較調査地を選び、そこに調査区を設置して、生息する陸貝の種類構成、生息密度、個体群構成(成貝、幼貝、死殻)を明らかにする。
 森林に対する人為的圧力の違いが陸貝の種類構成、個体群構成にどのような影響を与えているのかを明らかにする、というのが最も設定しやすい目標である。前回の調査で、大型のアワマイマイ、セトウチマイマイ、コベソマイマイ、ヤマナメクジ、ヤマタニシの密度や、サイズに違いが確認されているので、これらに注目することで明確な結果が得られるだろう。ただし、キセル貝などの小型種、土壌中の微小種に注目することで、新たな結果が得られる可能性が大きい。

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調査方法

相観植生図

 航空写真と地図(パウチしてあり、耐水性をもたせたもの)を手に島内を巡回し、植生の概要を把握する。白地図に、現在の島の相観植生図(土地利用、植生、森林のタイプ別に地表の被覆状態を地図に表記するしたもの)を作成する。
 方形区の植生環境調査:方形区のサイズは地形に合わせて任意に設定して良く、方形区内の植生については、次の項目を記録する。

 各項目の測定方法については、図書館などで調べ、記録用紙をあらかじめ作成し、必要枚数を印刷しておくこと。

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種類構成

 標本は、新鮮な死殻(色彩が確認できる成貝)を採取し、その場で確認された生きている個体と照らしあわせておく。生きている個体は、1種につき最低1個体分、採集前に生態写真を撮影する。撮影の際には、種の特徴(色彩パタン、殻の形、軟体部の模様)、生息環境(ex.地上性、樹上性など)の違いがわかるように気をつけること。
 採取した死貝は、採取地点の位置を記録し、紙でくるんで箱に入れ、宿に持ち帰る。宿では、泥などの汚れを落とし、きれいな標本にする。標本をいれる箱(タッパーウエア)をあらかじめ用意しておく。貝が動かないように、仕切りあるいは脱脂綿などを敷くとよい。種の同定には、図鑑を用いるが、同行される黒住研究員からレクチャーを受ける。

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個体群調査

 方形区内で、一人一人が受け持つ区画を決め、その中で発見した個体を採集する

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小型個体(林床性)

 方形区内を踏み荒らす前に調査する。1人が1m四方内の落ち葉や石をめくって、発見個体を全て採集する。採集した個体は種類を分けずに一旦同じ袋に入れ、袋内にはビニルテープで作ったタグに油性マジックインキで方形区番号と採集者氏名、採集日時を記入し、袋内に入れる)。採集に際には、白いバットか、ビニール袋を広げ、その中にすくい上げた落ち葉を入れ、丁寧に探す。

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小型個体(樹上性)

 方形区内の中にある樹木を一定の基準で選び、その幹、枝、葉についている個体を採取する。採取の定量化には、一定時間法(3分間のように探す時間を決めて採取する)を用いるのが適当である。個体を発見したら、密度が低い場合には全て採集し、その個体がいた木の種類、高さ、木の太さをフィールドノートあるいは記録シートに記録する。採集した個体は、小型の袋に入れ、袋にノートの記録と対応させる番号を書き込む。
 大型個体(地上、樹上性):密度が低いので、随時発見に努め、発見するごとに採取し、データをノート、記録シートに書き込む。

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ハンドリングと持ち運び上の注意

 採取した個体の測定は、その場ではおこなわず宿に持ち帰って行う。測定後にはもとの場所に戻すので、採集地点を間違えないように、ノートと袋の番号をきちんと対応させておくこと。また、陸貝は圧迫に弱いので、採集個体を重ねないようにする。直射日光にも当てないようにする(特にビニル袋に入れた状態で直射日光に当てるとすぐ死亡させてしまうので絶対にしないように気をつける)。雨に弱いのが欠点であるが、適当な大きさの段ボール箱を用意するとよい。

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貝の測定方法

 種類、成熟の有無(殻の口が外側に反り返っているかどうか)、年齢、胎殻直径、殻直径、殻高、体重、殻の色彩パタン、軟体部の色彩パタン、を記録する。長さはノギスを用いて0.1mm単位で、体重は電子天秤を用いて0.1g単位で記録する。ノギスを使用する際は、個人差が出ないように、測定前に同じ物体を班員で繰り返し測定し、精度、誤差を確認しておくこと。データの記入に際しては、測定者、記録者の氏名をかならず記録しておくこと。

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野外実習から戻ってからの作業

  1. 日本沿岸島嶼の陸産貝類相の文献を探して、島の面積と生息種類の関係一覧表にまとめ、そのデータを種数面積曲線にして描く。伊島の結果をこの図に当てはめて、伊島の陸貝種数が面積当たりにして豊なのか、貧弱なのかを評価する。
  2. 伊島に生息する陸貝のニッチを量的に表現する。利用していた物体(樹木、岩)のいた場所の高さ、幅(幹や枝ならばその太さ(直径)、岩ならば無限大として)、基質のサイズと高さの2次元マトリックスにおける生息場所の分離を描く。
  3. 同じ微生息場所を利用している陸貝のサイズを比較する。

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