共同研究
尖閣諸島におけるアホウドリの歴史と繁殖現状 
 

2.アホウドリ再発見と繁殖の確認

   

 しかし、その翌年、1971年4月1日、琉球大学理学部の池原貞雄教授らは南小島の南向きの断崖の中段にある岩棚で、12羽のアホウドリ成鳥を観察した。これは、確実な記録としては、尖閣諸島における70年ぶりのアホウドリの再発見であった(琉球大学 1971)。ただし、このとき、ひなの姿は観察されなかった。

 その後、池原教授らは1979年3月10-18日に魚釣島の学術調査を行なったが、そこではアホウドリは観察されなかった。この時に南小島に上陸できなかった池原教授は 、3月20日にヘリコプターで空中から南小島を調査し、16羽(成鳥13羽と若鳥3羽)を 観察した。しかし、ひなの姿は発見されなかった。

 翌1980年2月25日から3月1日に、池原教授らは黄尾嶼の学術調査を行なったが、アホウドリは確認されなかった。その直後の3月3日にヘリコプターで南小島を観察し、35羽(成鳥28羽、若鳥7羽)を確認 したが、ひなの姿はやはり見つからなかった。そして、同年5月2日の再調査でも、19 羽が観察されただけで、ひなは発見されなかった。

 1988年4月13日、朝日新聞社の小型ジェット機によって、空中から南小島を観察する チャンスを得た私は、断崖中段の岩棚で数羽のひなを観察した。
 この時に撮影された写真を分析して、少なくとも7羽のひなを確認した。こうして、再発見から17年後にアホウドリの繁殖が実際に確認され、尖閣諸島南小島は伊豆諸島鳥島につぐ第2の繁殖地となった。  

 その後、私は1991年3月28日にフジテレビの取材チームといっしょに南小島に上陸 して、10羽のひなと18羽の成鳥を観察し、翌年の1992年4月29日には朝日新聞社のチ ームと上陸して、ひな11羽と成鳥1羽を観察した。そして、これらの観察結果から、 南小島の繁殖集団が少しずつ増加していると判断した。しかし、そのあと突如、領土 問題が再燃し、調査は困難になってしまった。