繁殖地でカウント(計数)した若鳥と成鳥を合わせた個体数(ひなを除く)は、567羽で(従来コロニーに557羽、新コロニーで12羽)、近年最高を記録しました。
抱卵期にあたる11-12月と育雛期の3-4月の観察個体数について、最近10年間の観察結果を表2にまとめました。
| 産卵年 | 同年11-12月 | 翌年3-4月 | 増加率(%) * | 
| 1993  | 260 | 301 | 15.8 | 
| 1994  | 281 | 324 | 15.3 | 
| 1995  | 303 | 337 | 11.2 | 
| 1996  | 309 | 349 | 12.9 | 
| 1997  | 327 | 403 | 23.2 | 
| 1998  | 363 | 394 | 8.5 | 
| 1999  | 343 | 380 | 10.8 | 
| 2000  | 366 | 423 | 15.6 | 
| 2001  | 381 | 481 | 26.2 | 
| 2002  | 469 | 569 | 21.3 | 
| *11-12月から3-4月への観察個体数の増加分を%で表す | 平均16.1% | ||
 この表を見ると、まず、観察される個体数は、抱卵期の11-12月よりも育雛期の3-4月のほうが平均して16%ほど多いことがわかります。
    これは、繁殖年齢前の若い鳥が繁殖期の後半にコロニーに帰ってくるためです。
 また、とくに最近2年は、11-12月から3-4月への観察個体数の増加率が20%以上で、以前よりかなり高くなっていることがわかります。
    これは、コロニーに帰還する若鳥の数が急増したためです。
この値の小さい1998産卵年は、それより3年前に超大型台風が鳥島を直撃し、営巣地の植生が吹き飛ばされて、繁殖成功率が39%、巣立ちひな数は62羽と、近年最低だったため、この年に帰ってきた若鳥が少なかったからです(産卵から数えて3歳で、生き残っている鳥の約半数が鳥島に帰り、4歳では大部分が帰り、つがい形成のために求愛行動を始める)。
 2002産卵年には、抱卵期も育雛期も観察個体数が急増しました(それぞれ88羽、23%;88羽、18%)。
   これは、3、4年前に巣立った140羽以上のひなが成長して鳥島に帰ってきているためです。表1の巣立ちひな数から予想すると、鳥島に帰還する若鳥の数は今後も増加し続けるはずで、それにともなって観察個体数も、500羽、600羽へと増加するにちがいありません。 
抱卵期にあたる11-12月の観察個体数は、8〜9年後の産卵数にほぼ対応することが相関関係の分析からわかっています。実際、1993年の抱卵期の観察個体数は、2002年の産卵数にほぼ対応しています。すると、2003年の産卵数は1994年の抱卵期の観察個体数と対応することになり、約280個と推測することができます。さらに来年は300個ほどになると考えられます。これらの数字は、前述の予想値とほぼ一致しています。 2003年6月時点での鳥島集団の推定総個体数は、繁殖年齢(7歳)に達した成鳥が約650羽、それより若い未成鳥(巣立ったひなを含む)は約890羽、合計1540羽となります。
1000羽に到達したのが1999年だったので、4年で500羽近く増加したことになります。もし海洋と陸上(鳥島)の両環境が大きく変化しなければ、あと4年で500羽増えることはじゅうぶんに可能で、2007年6月にはきっと2000羽に回復するでしょう。