東邦大学名誉教授
長谷川 博 |
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アホウドリ観察報告更新:2015年7月12日
●神奈川県三浦半島城ヶ島の沖で、陸上から若いアホウドリを観察(2015年7月12日掲載)
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日付 |
観察者 |
個体数 |
内訳 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
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2015年4月6日
|
森越 正晴 |
1羽 |
2-3歳若鳥 |
35度08分 |
139度36分 |
神奈川県 城ヶ島沖 約500m |
正真正銘のオキノタユウ(アホウドリ)を観察しました。2013年11月3、4日、釧路沖南へ35 km 辺り行った太平洋上です。昨年も行きましたが、コアホウドリ、クロアシアホウドリなどが多く集まるところです。今年は念願のオキノタユウ見ることができました(添付された写真:くちばしだけがピンクで、全身黒褐色の1歳程度と推定されるごく若い個体。海上を飛翔中)。
日付 |
観察者 |
個体数 |
内訳 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
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2013年11月3,4日
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東 治彦 |
1羽 |
1歳程度1羽 |
42度40分 |
144度22分 |
釧路南 約35Km |
伊豆大島の近海では、1981年4月6日に大島の南にある「大室出し」という浅根で、「みやこ」の鳥島航海に便乗してアホウドリの若鳥1羽を認めただけでした。しかし、最近、東京都島しょ農林水産総合センター大島事業所の調査指導船の乗務員や波浮港の漁船からアホウドリの目撃情報が寄せられるようになりました(位置情報はGPSにより正確)。また、大島近海でのアホウドリ観察記録がホームページやブログに掲載されています(これらの位置情報は、定期船の航路と観察時刻から地図によって推定)。それらと私自身の最近の観察記録をまとめました(表1)。
表1. 伊豆大島近海におけるアホウドリの観察記録 | ||||||
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日付 |
観察者 |
個体数 |
内訳 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
|||||
1981年4月6日 |
望月英夫 |
1 |
若鳥1羽 |
34.5度 |
139.5度 |
大島南沖大室出し |
2007年3月27日 |
「やしお」1) |
1 |
成鳥1羽 |
34度35分 |
139度33分 |
大島南東沖 |
2008年1月19日 |
「白幡丸」2) |
1 |
若鳥1羽 |
34度38分 |
139度29分 |
大島南東沖 |
2008年1月19日 |
「白幡丸」 |
1 |
成鳥1羽 | 34度32分 |
139度33分 |
大島南東沖 |
2008年2月19日 |
「みやこ」1) |
1 |
若鳥1羽 |
33度52分 |
138度59分 |
銭洲近海 |
2008年3月10日 |
望月英夫 |
1 |
若鳥1羽 | 34度41分 |
139度26分 |
大島南端波浮港口沖 |
2008年3月10日 |
「みやこ」 |
4 |
成鳥4羽 |
34度47分 |
139度30分 |
大島東沖 |
2008年3月10日 |
「みやこ」 |
1 |
若鳥1羽 | 34度46分 |
139度29分 |
大島東沖 |
2008年4月24日 |
「みやこ」 |
1 |
成鳥1羽 |
34度29分 |
139度39分 |
大島南東沖 |
2008年5月15日 |
「みやこ」 |
1 |
若鳥1羽 | 34度33分 |
139度26分 |
大島南沖大室出し |
2008年5月16日 |
「みやこ」 |
1 |
成鳥1羽 |
34度39分 |
139度45分 |
大島南端東沖 |
2012年4月19日 |
ワイバード3) |
1 |
若鳥1羽 |
34度25分 |
139度35分 |
大島南東沖 |
2012年4月19日 |
ワイバード |
1 |
成鳥1羽 |
34度38分 |
139度36分 |
大島南東沖 |
2012年4月19日 |
ワイバード |
1 |
成鳥1羽 |
34度44分 |
139度37分 |
大島東沖 |
2013年1月26日 |
願法真理美4) |
2 |
成鳥1羽 若鳥1羽 |
34度47分 |
139度25分 |
大島泉津沖 |
2013年3月5日 |
望月英夫 |
1 |
若鳥1羽 | 34度32分 |
139度37分 |
大室出し東 |
2013年3月5日 |
望月英夫 |
3 |
成鳥2羽 若鳥1羽 |
34度36分 |
139度37分 |
大室出し北東 |
2013年4月23日 |
ワイバード5) |
1 |
成鳥1羽 | 34度44分 |
139度34分 |
大島東沖 |
注: 1)「やしお」と「みやこ」は東京都島しょ農林水産総合センターに所属する漁業調査指導船 2)「白幡丸」は伊豆大島波浮港の漁船 3)ワイバードの石田光史さんによる記事「東京〜八丈島航路 海鳥ウォッチング」2012年4月18〜19日から抜粋 (http://www.ybird.jp/field/index.cgi?no=r641) 4)願法真理美さんは伊豆大島グローバルネイチャークラブのスタッフで、グローバルネイチャークラブの ガイド日記「どうもアホウドリっぽい」2013年1月26日(http://blog.goo.ne.jp/gscrikuguide6/m/201301)による 5)ワイバードの石田光史さんによる記事「東京-八丈島航路 海鳥ウォッチング」2013年4月22〜23日から抜粋 (http://www.ybird.jp/field/index.cgi?no=r713) |
この10年間で、大島近海では1月から5月にかけて、アホウドリがしばしば観察されるようになりました。鳥島での積極的保護計画が実って個体数が増えた結果、「アホウドリは大島近海ではふつうの海鳥になりつつある」と言ってもよいのではないかと思います。
大島・神津島間を日帰りで往復して、これまで50回以上、海鳥の調査をしてきました。観察されたアホウドリ類はコアホウドリが大部分で、クロアシアホウドリが少々、アホウドリは観察されませんでした。また、昨年から伊豆半島の先端の下田と神津島・式根島・新島を結ぶ定期航路「あぜりあ丸」での観察を始めました。駿河湾には定期航路がないので残念です。
今までのところ、伊豆諸島北部の列島の東側の海域での観察がほとんどなので、今後、西側の海域でもアホウドリが観察されることを期待しています。
長谷川博のコメント:
もう37年近く前の1976年11月16日午前9時40分、ぼくは東京都水産試験場大島分場(当時)の漁業調査指導船「みやこ」に乗船して、波浮港から初めての鳥島航海に出発しました。晴れ、北東の風、風力4で、海にはやや波がある程度でした。10時からブリッジの上に立って海鳥類の観察を始めましたが、30分で船酔いになって立っていられなくなり、船室にかけ込んで横になりました。大島南端にある波浮港から南に約50分の地点は、「大室出し」と呼ばれる水深100m以内の浅い海域に差かかったところで、そのため波が高く、海が荒れていたのでしょう。ぼくにとっては辛い思い出の海域です。
その大室出しと大島の東側一帯は、水深1500-2000mの相模トラフに落ち込む急傾斜の斜面となっています。おそらくこの斜面に沿って湧昇流が起こり、海洋生物の豊かな海域が形成されているのでしょう。アホウドリは食物を求めてこの海域を訪れているに違いありません。
大島近海から少し離れますが、ぼくは1980年2月23日に、東京大学海洋研究所(当時)の調査船「淡青丸」の研究航海中、三宅島の南西沖で(大野原島・三本岳の南、およそ北緯33度50分、東経 139度20分)、ごく若いアホウドリ1羽を観察し、写真撮影しました。これが伊豆諸島北部海域でのもっとも古い観察記録でしょう。
アホウドリ再生チームの責任者、ロブ・サーヤンさんからの報告によると、2012年8月12日、アホウドリの幼鳥1羽がベーリング海峡を越えたチュコート海で、キャサリーン・ファム(Catherine
Pham)さんによって、観察されました。
日付 |
個体数 |
内訳 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
||||
2012年8月12日
|
1羽 |
幼鳥1羽 | 70度1.6分 |
166度59.5分 |
アラスカ リズバーン岬北 130Km、 アイシー岬西 167Km |
アホウドリが、1951年の「再発見」以降、北極圏のチュコート海で観察されたのは初めてです。羽毛採取のために乱獲される以前、まだ個体数が多かった時代(1880年代から1930年代まで)、アホウドリはチュコート海でもごくまれに観察されました。たとえば、ロシア側のチュコート海では、1881年7月にベーリング海峡のほぼ中間に位置するダイオミード諸島の沖で1羽の幼鳥が観察されました。また、個体数が著しく減ってしまった時期にあたる1939年9月4日にも、チュクチ半島北東部のチュコート海に面したSerdtse-Kamen' 岬の沖60kmを航海中に8羽が観察され、うち2羽は採集されました(1, 4)。アメリカ側のチュコート海では、以前にアホウドリが観察されたという確実な記録はありませんが(3)、1982年に出版された「ソ連邦鳥類誌」には分布が想定されています(2)。
今回、アホウドリが北極海の入口のチュコート海で観察されたことは、個体数の増加にともなって、アホウドリが以前の海洋分布域に広がっていることを示し、非常にうれしいことです。白夜の海をたくましく飛翔するアホウドリの姿を想像するだけで、ぼくは楽しくなります。
文献:
1)Dement'ev, G. P. and Gladkov, N. A. ed. 1968. Birds of the Soviet Union. Vol. 2. 12+553pp. Israel Program for Scientific Translations, Jerusalem. (とくにp.343)
2)Il'ichev, V. D. and Flint, V. E. ed. 1982. Ptitsy SSSR. Istoriia izucheniia, gagary, poganki, trubkonosy. 446pp. Akademiia nauk SSSR, Moskva.(とくにp.359の第40図)
3)Palmer, R. S. ed. 1962. Handbook of North American Birds. Vol. 1. 10+568pp. (とくにpp.117-118)
4)Portenko, L. A. 1981. Birds of the Chukchi Peninsula and Wrangel Island. Vol.1. 24+446pp. Amerind Publishing Co., New Delhi.(とくにp.59)
日付 |
個体数 |
内訳 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
||||
2012年2月16日
|
6羽 |
成鳥1羽 | 35度56分 |
141度09分 |
鹿島沖20Km |
若鳥2羽 | |||||
極若鳥3羽 |
観察者のコメント:
この日、銚子の外川漁港から沖メバル釣りの釣り船に乗船し、鹿島沖約20kmの鹿島灘で海鳥を観察してきました。海は大荒れで、うねりが高く、常につかまっていないと、船から放り出されそうになりました。この海域には、水深100-130mほどの浅くなっている場所(瀬)があり、そのようなところに魚が集まっているようでした。
朝8時から3時間くらいの間に、アホウドリを6羽(成鳥1羽、若鳥2羽、ごく若い若鳥3羽)、コアホウドリを4羽、クロアシアホウドリを2羽、観察することができました。また、銚子沖約10kmの海域には、数万羽のカモメ(オオセグロカモメ、セグロカモメ、ウミネコ、ミツユビカモメ)が群れていました。外洋性のミツユビカモメも多く見られました。彼らはトウゾクカモメに執拗に追いかけられ、えさを「盗賊」されていました。
ロシア科学アカデミー極東部のユーリー・アルツヒンさん(Dr.Yuri Artukhin)からのメール(2011年8月20日)によると、2010年10月初旬にカムチャツカ半島南部・オクチャーブリスキーの沖約200kmのオホーツク海で、アホウドリの小群が観察されました。そのとき彼は、漁船に乗って延縄漁業による海鳥類の混獲防止方法の比較研究をしていました。
日付 |
個体数 |
内訳 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
||||
2010年10月3日
|
6羽 |
成鳥2羽 | 53度27分 |
153度24分 |
カムチャツカ半島南部西沖 |
若鳥2羽 | |||||
幼鳥2羽 | |||||
2010年10月4日 |
9羽 |
成鳥2羽 | 53度29分 |
153度36分 |
カムチャツカ半島南部西沖 |
亜成鳥1羽 | |||||
若鳥5羽 | |||||
幼鳥1羽 |
これらの観察の日付や場所が近いので、このときこの海域には少なくとも10羽(成鳥2羽、亜成鳥1羽、若鳥5羽、幼鳥2羽)が生息していたと見なせるでしょう。また、これらすべてに足環標識が観察されたので、鳥島から巣立った鳥であることが分かりました(年齢は確定できない)。
このように、オホーツク海の内部でアホウドリの小群が観察されたのは初めてで、また、アホウドリの繁殖期(10月から翌年5月)が始まる直前にオホーツク海で観察されたことも初めてです。
これまでの観察を総合すると:1)アホウドリが個体数の回復にともなって海洋分布域をオホーツク海に拡大したこと、2)繁殖地の鳥島に帰還する「秋の渡り」のとき、アホウドリはアラスカ海域から千島列島に沿って南下する可能性があること、が明らかになってきました。
参照:
2008.10.09 オホーツク海でのアホウドリの観察記録(追記)
2008.10.07 カムチャツカ半島西方沖のオホーツク海でのアホウドリの観察(2005年7-8月)
日付 |
個体数 |
内訳 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
||||
2011年2月24日
|
6羽 |
成鳥1羽 | 35度45分 |
141度20分 |
千葉県銚子市犬吠埼の東沖40km |
亜成鳥2羽 | |||||
幼鳥3羽 |
房総半島沖から鹿島灘にかけての海上で、春先から初夏にアホウドリがしばしば観察されると聞いています。また、江ノ島沖の相模湾で観察されたこともあります。アホウドリの個体数がさらに増加すれば、房総沖から相模湾は、東京から比較的近いところでアホウドリを確実に観察できるスポットになるでしょう。この海域でアホウドリが観察されたら、ぜひ、お報せください。(長谷川博)
日付 |
個体数 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
|||
2011年7月16日
|
3-4羽(かなり若い個体) |
43度40分 |
146度55分 |
北海道色丹島の南沖約20数km |
足環標識をされた1羽(白225)は、おそらく2011年5月に、鳥島の北西斜面の新コロニーで、海に飛び立つ直前に山階鳥類研究所によって装着された幼鳥で、鳥島から飛び立ってアラスカ海域に初めて渡る途中だったと考えられます。近年、北海道東部の知床半島や根室の沖、北方四島の近海でアホウドリがよく観察されるようになりました(以前の観察記録を参照)。この海域は海鳥類だけでなく海生哺乳類も多く、野生動物の宝庫として知られるようになりました。夏期にはツアークルーズが行なわれています。(長谷川博)
追記:山本 巧さんから、上述の観察記録の他に、以下のアホウドリ観察記録が寄せられました。
日付 |
観察海域 |
2007年10月20-21日 | 大洗〜苫小牧航路 |
2008年 6月14-15日 | 大洗〜苫小牧航路 |
2008年 7月18-20日 | 歯舞諸島、色丹島沖 |
2009年 4月30日 | 銚子沖 |
2010年 5月16日 | 銚子沖 |
2010年 6月12-13日 | 大洗〜苫小牧航路 |
2010年11月20-21日 | 大洗〜苫小牧航路 |
2011年 6月18-19日 | 大洗〜苫小牧航路 |
これらの観察記録やそのとき撮影された写真は山本さんのホームページ(以下)に掲載されています。
http://www.bf.grrr.jp/fieldnote/list_after_2001.htm
うっかり失念していましたが、下記の学術出版物にオホーツク海におけるアホウドリの観察記録があることをふと思い出しました。それらの観察記録を表にまとめました。 アホウドリは、すでのオホーツク海の広い範囲で8月前半に観察されていたのです。
日付 |
個体数 |
年齢 |
位置 |
海域 |
|
北緯 |
東経 |
||||
1995年8月15日 |
1 |
若鳥(2年目) | 47度17分 |
144度32分 |
サハリン南東端沖 |
1997年8月 7日 |
1 |
若鳥 | 58度47分 |
156度11分 |
シェリホフ湾 |
1997年8月14日 |
1 |
成鳥 | 54度43分 |
153度17分 |
カムチャツカ西沖 |
文献: Shuntov, V. P. 2000. Seabird distribution in the marine domain. Kondratyev, A. Ya., Litvinenko, N. M. & Kaiser, G. W. (eds). Seabirds of the Russian Far East,pp.83-104. Special Publication, Canadian Wildlife Service.
これらの情報から、アホウドリが非繁殖期にオホーツク海のほぼ全域で過ごしている、と推測することができます。
(2008年10月9日)
アホウドリの最新状況をユーリー・アルツヒン(Yuri Artukhin)さんに報告したとき、彼から、2005年7月から8月にカムチャツカ半島の西のオホーツク海でも5羽のアホウドリが観察されていたことを教えてもらいました。その観察記録を下表にまとめました。
文献: Vinnikov, A. V.2006. Records of albatrosses in the Kamchatka waters of the Sea of Okhotsk. Artukhin, Yu. B. & Gerasimov, Yu. N. (eds) "The Biology and Conservation of the Birds of Kamchatka, 7: 123-124. Moscow, BCC Press[原文はロシア語]
日付 |
個体数 |
年齢 |
位置 |
水深 |
|
北緯 |
東経 |
||||
2005年7月26日 |
1 |
若鳥(2〜3歳) | 56度18分 |
155度28分 |
50〜70m |
2005年7月31日 |
1 |
若鳥 | 53度18分 |
154度40分 |
200m |
2005年8月15日 |
1 |
若鳥 | 54度55分 |
153度55分 |
522-525m |
2005年8月15日 |
1 |
成鳥 | 55度01分 |
154度30分 |
246m |
2005年8月21日 |
1 |
若鳥(約3歳) | 54度33分 |
154度00分 |
542m |
このホームページで、2008年7月12日に、「アホウドリがオホーツク海で初めて観察された」と記述したのは、ぼくの誤りでした。上述の観察記録から、アホウドリの若鳥・成鳥ともオホーツク海で非繁殖期を過ごしていることは明らかです。
最近(2007、2008年に)、北海道沖のオホーツク海でも観察されたことは、個体数の増加にもとなって、アホウドリがオホーツク海の広い範囲に海洋分布域を拡大したことを示します。
今後、オホーツク海からもっともっと多くの観察記録が報告されるにちがいありません。 (2008年10月7日)
参照: 2008年7月14日 9月5日のお知らせ
2007年6〜8月に、知床半島と国後島に挟まれた根室海峡で、アホウドリの幼鳥が観察されたという研究報告が、つい最近、発表されました(佐藤晴子・田澤道広・長谷川正人:知床博物館研究報告,29:11-15,2008.http://shir-etok.myftp.org/page/shuppan/kempo/kempo29/03_SATO-etal.pdf)。 この報告には、2007年6〜7月に、知床半島北西側の岩尾別沖や硫黄山近くの沖で、アホウドリの幼鳥が目撃されたことにも触れています。
昨年に続いて、今年も知床半島沖でアホウドリの幼鳥・若鳥・成鳥が観察されたことは、この種が非繁殖期の海洋分布域をオホーツク海に拡大したことを示します。
知床半島沖で再びアホウドリが観察されました。
---瀬川康彦さん(送信日時:2008/07/13 (Sun) 17:58:58)--------------------------
ホームページに掲載ありがとうございます。
さて、今日(2008年7月13日)、また1個体を同じような場所で見ました(北緯44度26分、東経145度27分)。
添付された画像から、アホウドリの若鳥(およそ5〜8歳)であると確認されました。
前回の個体( 6月22日に観察)と同一である可能性も否定できませんが、それからだ いぶ日数が経っているので、別個体である可能性の方が高いと思われます。この観察の重要性は、7月半ばまでアホウドリがオホーツク海に生息している事実を明らかに したことです。
渡りの途中に立ち寄っただけではなくて、非繁殖期の一部の期間を過ごしているのかもしれません。(長谷川博)
このバーチャルラボラトリ宛に、オホーツク海でアホウドリが観察されたという嬉しいニュースが、あいついで寄せられました。
---AAさん(送信日時:2008/06/03 (Tue) 15:11:44)---------------------------
私は北海道宗谷岬で漁業をしてる39歳の男です。昨日(2008年6月2日)沖で見た事の無い鳥をみました。ちょっとインターネットで調べて見たのですが、若いアホウド リによく似ている感じがします。携帯で写真を撮ったんですがあまり写りがよくありません。色は濃い茶色、ピンクの大きな口ばしに白いアイラインみたいなのが付いて いました。ちょっと翼を広げたら細くとても大きかったです。こっちの方へ来る事もあるのでしょうか?
---瀬川 康彦さん(送信日時:2008/06/25 (Wed) 18:47:30)---------------------------
初めまして。私は北海道の東にあります知床半島の玄関口・斜里町で遊漁船をしているものです。先日(2008年6月22日)の日曜日、遊漁船で知床半島沖を北東に11キロ くらい沖合いで釣りをしていて、アホウドリを見ました。3個体居ましたのでお知らせしました。今まで20年釣り船をしてますが、初めて見ました。連絡頂ければ、デジ カメの映像がありますので、添付ででもお送りしますのでよろしくです。
お二人から送ってもらった映像によって、アホウドリであることが確認されました。宗谷岬沖の宗谷海峡で観察された1羽の個体は、全身黒褐色で、ごく若い未成熟の鳥でした(おそらく2〜3歳)。また、知床半島沖の個体は、全身白色の成熟した成鳥(おそらく10歳以上)が1羽、背面が大部分黒褐色で、腹面が淡黄白色の成熟しかけている若鳥(おそらく5〜8歳)が2羽、合計3羽でした*。
* 残念ながら、足環標識を確認するチャンスが与えられなかったので、これらの鳥が鳥島生まれの個体(足環付き)であるか、尖閣諸島生まれ(足環なし)であるかわかりません。
近年、千島列島の近海や島嶼間の海峡・水道でアホウドリが観察されたことはあっても、オホーツク海からは確実な観察記録がありませんでした(杉村直樹さんが2004年7月7日に、稚内から礼文島への航路でアホウドリの若鳥らしい鳥を観察した)。今回のあいつぐ観察は、個体数の回復にともなって(現在、およそ2500〜2600羽)、アホウドリが海洋分布域を拡大していて、オホーツク海にも再び生息し始めていることを示します。
ただ、これらの鳥が渡りの途中でオホーツク海を一時的に訪れたのか、それとも非繁殖期(7月から9月)をも過ごしているのか、まだわかりません。今後、こうした観 察記録が積み重ねられれば、どちらであるかが明らかになるでしょう。(長谷川博)
■アホウドリの洋上観察に便利なように、北太平洋のアホウドリ類3種の識別ガイドをpdf形式で作成し、このホームページで公開する予定です。