後藤先生の徒然日記

アンチエイジング:ヘビの油?ガマの油? (2008年8月25日)

 高齢社会を背景にした最近のアンチエイジング健康サプリメントの宣伝はかなり激しい。 堅実だと思われる大企業も例外ではない。中高年の人々だけでなく若い人たちも対象にしている。若いころから老後のことを考えるのは結構なことではある。 しかし、科学的な証拠があるとは思えないような、いや、しばしば明らかに間違っている誇大宣伝文句とともに "専門家"のお墨付きで大新聞に登場する広告に乗せられているとしたら不幸なことである。

  "手口"は大体似ている:○○は身体に重要である、年を取ると減ってくる、だから補わないと、それには何とかに比べて○○が何倍入っている、あるいは効力が非常に高い△△を。 使っている人はこんなに若々しく元気です、云々。 件の人は確かに若々しかったり、元気だったりするようだが△△を飲んだり塗ったりしたことによるという証拠は全く示されていないのだから、信用するのは振り込め詐欺に引っかかるのと大差ない。 新聞やテレビは学術誌ではないので記事がその道の専門家の批判に耐えうる内容かどうかは問われない。 一定水準以上の学術誌に投稿された研究論文は実験条件や方法に問題があったり、結果が疑わしかったりすれば採用されない。重要な論文が出るとたいてい誰かが追試をする。 結果が再現されないと論文の信憑性が疑われたり、実験条件の違いなど細かい点が議論になったりする。その上で評価が確立する。薬と違ってサプリメントの効用に関して厳格な検証がされているのを見たことがない。 一般的な効果が怪しくても、人によっては効くかもしれない、もしかしたら自分には、と思うのは自由ではある。

 研究者の中にも、効くか効かないか分からなくても経済の活性化には役立つだろうから結構じゃないかという人もいる。 しかし、長期にわたって摂取したらどうなるか。無益でも無害ならともかく、健康を害することだってあり得る。 活性酸素の消去能力が強いという宣伝文句にしばしばお目にかかるが、体内で消去力が本当に強いものは、大量に摂取すれば間違いなく有害である。 世の中では産地偽装のかば焼きには大騒ぎをするけれど、健康サプリメントには実に寛大だ。

 西洋では効能不明の万能薬売りをsnake oil salesmanという。筑波山に住むという"四六のガマ"の油売りはお客の目の前で腕を傷つけて血を止めて見せるのだから実証的・"科学的"である。 昔、筑波山に登った学生がお土産にガマの油入りを謳った軟膏を買ってきてくれた。 手を擦りむいたときに使ってみたら早く治った・・・、ような気がした。アンチエイジングサプリメントの口上にもせめてsnake oil売りではなくガマの油売りくらいの証拠を示してほしい。 と叫んでみても利益優先、儲かれば何でもあり、の市場経済が変わらなければ効果はないだろうな。少々大げさか。


8月終わりの水田風景(印旛村):刈り取られる直前で頭を垂れる稲穂。
昔は実りの秋といったけれど、温暖化のせいか、品種改良のせいか、それとも世の中が変わったせいか。

 

 

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