文 : 習志野メディアセンターSTAFF
新入生の皆さん!ご入学おめでとうございます。学問と探求の世界へようこそ。
当メディアセンターはみなさんの学習・研究を全力でバックアップします!
いつでもお気軽に館員に声をおかけ下さい。
さて、この「月刊マキシマム!」では、ほぼ毎月、一定のテーマに沿ってメディアセンターの蔵書を紹介しています。
今回のテーマは「饒舌な科学者」です。
科学者が語るのは何も科学の話ばかりとは限りません。
科学者とは時に研究者であり、またあるときは教育者であり、またあるときは作家であり、またあるときは父であり、なによりも一人の人間なのです。
愚痴も出れば、小言も言うし、詩を吟じたかと思えば、物語も草します。
そんな彼らの人間くさい饒舌なおしゃべりに、ちょっと耳を傾けてみませんか。
伝記などの本人以外の第三者が書いた本ではなく、なるべく科学者本人の手による本を集めてみました。
展示期間中も通常通り貸出が可能です。もし、読んでみたいと思った本が貸出中であれば、お気軽に予約をしてください。
予約方法についてはこちらをご覧ください。 貸出中資料の予約
科学者ごとにその著作を紹介したいと思います。
いわずと知れた(?) 本大学の学祖です。
自分が通う学校の学祖の文章を読むというのは、なんだか気恥ずかしいものです。
しかしそういった気恥ずかしさを抑えて、ひとたびその文章に触れてみれば、必ずや新しい景色が開けることでしょう。
短文が多く、また平明な言葉で書かれていることもあり、あっさりと読めてしまいますが、
科学を切り口に人生や宇宙の真理に迫ろうとする珠玉の言葉ばかりです。
額田晋は文豪・森鴎外(1862-1922)の主治医でもあり、鴎外との交友関係をつづったエッセイなどもあります。
東京 : 東邦大学. 東邦大学付属中高等学校同窓会 / 2002.6
【請求記号】2002.6 121/Nu 1000485555【配架場所】1階書庫
森鴎外の息子にして東邦大学のお医者さんでした。 父との思い出、職業上の理由から起こる様々な考察、靴下の話、世相の話・・・ さすが鴎外の子どもと思わせる落ち着きのある筆致で縦横無尽に話を展開していきます。 その文章の根底を貫くものは、耄碌し始めた自分の姿すら冷静に見つめる徹底した客観主義です。 解剖学者としての鋭いメス捌き・冷静な観察眼は、文章の上にもその冴えを見ることができます。
鴎外・鴎外ときて、次は明治のもう一人の文豪・夏目漱石(1867-1916)に縁のある科学者を紹介しましょう。 寺田は漱石の小説中にもしばしば姿を変えて登場する漱石のお弟子さんの一人です。 現代の「複雑系」といわれる学問や統計物理学の先鞭をつけた物理学者です。 俳句・叙情文から映画や文学・絵画などの藝術批評など、多くの文章を起し文学者としても様々な引き出しを持っていた寺田ですが、 やはりその真骨頂は物理学者としての視点から日常の様々な現象を観察した随筆でしょう。 茶碗に湛えられたお湯、線香花火の瞬き、金平糖の製造過程におきる不思議などなど。 身近なものの観察から、自然や生命・社会の神秘に迫る文章に、優美な化学実験を目の当たりにしたかのごとくひきこまれてしまうことでしょう。
日本人として初めてノーベル賞を受賞(1949年:ノーベル物理学賞受賞)した物理学者で、その名前はだれもが知っていることでしょう。 幼い頃から漢文に触れ、多くの本を読んでいた湯川は、物理学者であると同時に非常に教養の豊かな人でもありました。 そしてまた、世界トップレベルの科学者として、日本のみならず世界の科学の牽引者としての責を負った彼は、研究以外の分野でも多くのことを考え、また発言することを求められる存在でもありました。 随想や軽いエッセイに始まり、講演録、対談録、科学に関連した思想や哲学をまとまたもの、趣味や生き方について語ったものなどなど、非常に多くの著作を残しています。 日本を代表する知の鉄人は、なにを考え、何を伝えようとしたのでしょうか。
湯川秀樹に縁の深い科学者です。湯川と同じくノーベル物理学賞を受賞(1965年)した朝永は、中学・高校・大学・職場とずっと湯川秀樹とともに歩んできた科学者でもあります。 幼い頃から病弱だった朝永は、身近な現象への愛着を強く持ち、ただただ自然の不思議に見せられた人でした。また、浄瑠璃や寄席をこよなく愛する、和の心に通じた粋人でもありました。 その文章は不思議な柔和さを備えています。決して多くは語らなくとも、語るべきことを語り、人の心に理解と共感を生み出すその言葉は、彼の提唱した理論のごとくエレガントなものです。 「科学には、人間を不幸にも、幸福にもしない第三の見方があると思うのです・・・」その彼の言葉の続きは、どうぞ皆さんで探してみてください。
東京 : 岩波書店 / 1979.5-1979.11
【請求記号】イワナミ420/To/1-2 0001354661/0001354679 【配架場所】3階閲覧室
日本人として始めて「Nature」に論文を載せた科学者です。熊楠は博物学、民俗学、生物学(特に菌類学)に通じ、19世紀に単身海外に渡り多くの伝説を残しました。また、生涯研究組織に属さず、在野の研究者としてすごしました。 「研究をするのに肩書きはいらない」「世界に不要なものはない」変わり者ではありながらも、この世界の隅々にまで限りない愛を注いだ彼の文章は、読むものの心を打ちます。 しかし、彼の日本語の文章はすこし古めかしく、読むのには多少の苦労を伴うことでしょう。むしろ、彼が「Nature」に発表した英語論文の方が、言葉も平明でなにより1〜2ページの短報が多いため、読みやすいかもしれません。 辞書を片手に、19世紀に世界に挑戦した日本人研究者の言葉を読み解くのもまたオツな体験かもしれません。
東京 : 平凡社 / 1973.11
【請求記号】380/Mi/10 0000552604 【配架場所】1階書庫
日本の植物学の代表的人物。自叙伝。
生態学者、文化人類学者。中国奥地の探検記録(編著)。
朝永の弟子。ソリトン物理の草分け。おもちゃ博士。
世界の科学者にも目を向けてみましょう。
イギリスの自然科学者。進化論の提唱者として有名。自伝。宗教と科学の間で揺れ動く心のうちなども吐露しています。
ドイツ生まれのユダヤ人理論物理学者。1921年ノーベル物理学賞受賞。自伝及び発言集。
「私たち信念のある物理学者にとって、過去・現在・未来の区別は、しつこくつきまとって離れない一種の幻想に過ぎないのです。」
「宗教をともなわない科学は、びっこである。科学をともなわない宗教は盲目である。」
物理学の概念は人間の頭が自由に創造したものであって、外界によって一意的に決まっているように見えても、実はそうではない。」
引用元:アルベルト・アインシュタイン. アインシュタインは語る. アリス・カラプリス編 ; 林一訳. 大月書店, 1997, 260p, ISBN4-272-43051-3
アメリカの物理学者。1965年ノーベル物理学賞受賞。「科学はおもしろいものです。そしてぼくは人をおもしろがらせるのが大好きなんです。」屈託なくそして軽妙洒脱に人生と科学について語ります。科学と人生の達人ファインマンここにあり!
東京 : 岩波書店 / 1986
【請求記号】420.28/Fe/1 0000674945【配架場所】2階書庫
【請求記号】420.28/Fe/2 0000674952【配架場所】2階書庫
オーストリアの生化学者。DNAの二重らせん構造の発見につながる法則を発見。
鋭く辛口の箴言集です。思わず笑ってしまうようなものから、一見不可解ながらも突っ込んで考えてみるとどんどん深みにはまってしまうものまで。一行にこめられた世界を楽しんでください。
「日本人は自発的にギリシャ人からトルコ人になった民族である。」
「世界で最も哀れな者とは、怒りで煮えくり返ってるのに、煮え切らない男である。」
「学問は頭のない目である」
「自然科学は、穴を隙間だらけの欠陥物でふさごうとする絶望的な試みである」
他にもたくさんの言葉が収録されています。
東京 : 法政大学出版局 / 2002.12
【請求記号】404/Ch 1000343291 【配架場所】2階書庫
ドイツの理論物理学者。行列力学と不確定性原理によって量子力学に絶大な貢献をしました。1932年ノーベル物理学賞受賞。自身と物理学について語った自伝。多くの著名な科学者との交友録でもあります。アインシュタイン、ディラック、シュレーディンガー、ボーア、プランク、パウリ、ボルン(いずれもノーベル賞受賞者)など、世界最高レベルの科学者の生の姿が垣間見えます。
東京 : みすず書房 / 1974.7
【請求記号】420.28/He 0001011584 【配架場所】2階書庫
さて、この章では少し趣向を変えて、ある一つの研究に関係した複数の科学者の著作を紹介してみたいと思います。 一つの研究が成るまでに、科学者の間ではどんな交流が行われるのでしょうか? 同じ研究をしている科学者のその心のうちはどのように異なっているのでしょうか? これらの複数の著作を読むことで、研究の奥深さ、面白さ、難しさ、恐ろしさ、といったようなものを感じていただければと思います。 とりあげた研究は、1953年に論文発表され、1962年にノーベル生理学・医学賞に輝いた「DNA二重螺旋構造の発見」についてです。今世紀の生物分子学研究の中で最重要に位置するこの研究の裏には、どんな物語が隠されていたのでしょうか?
アメリカの分子生物学者。DNA二重螺旋構造を発見。1962年にノーベル生理学・医学賞受賞。 読み物的に研究当時のことを回想しています。
イギリスの生物学者。ワトソンとの共同研究でDNA二重螺旋構造を発見。1962年にノーベル生理学・医学賞受賞。当時を回想しつつ、研究に必要な哲学を語っています。
東京 : TBSブリタニカ / 1989.7
【請求記号】460.28/Cr 0001226356 【配架場所】2階書庫
イギリスの生物物理学者。X線回折によるDNAの構造研究を行いました。1962年にノーベル生理学・医学賞受賞。50年の沈黙を破り当時の研究の様子と自身の生き方とを語ります。
イギリスの物理化学者。DNAの二重螺旋構造の解明につながるX線回折写真を撮りました。夭折した彼女は、長らく不当な評価を受けてきました。その彼女の業績に光を投げかけます。(第三者による伝記)
京都 : 化学同人 / 2005.8
【請求記号】460.28/Ma 1000468346 【配架場所】2階書庫
アホウドリの研究者として高名な長谷川先生は本学で教鞭をとっておられます。 研究の成果が時に思わぬ副産物を生み出すこともあります。本来アホウドリの生態を記録するために撮られた写真が、研究から独立して一つの写真集になりました。非常に貴重で、そして美しい写真集です。