ロシア・極東プリモーリエ地区に点在する鉱泉を訪ねて

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図1 > 図2 > 図3 

テント初日

 シュマコフカの鉱泉群を後にして,まずはその日の宿営場所を探しました。キャンプ地には川淵が良いのではないかということから,シュマコフカの鉱泉群からアムール川の支流方向に25km内陸に入った場所の大きな川の橋のたもとにキャンプを設営することにしました。どうも天候が下り坂ということで,広い河原をさけ一段高くなった場所の木々が生い茂っているところを選び,水はけをよく考え,テントの周囲の溝も掘り何とか寝る場所は確保できました(写真10写真11写真12)。


写真10 向こうに見えるはアムール支流

写真11

写真12

 釣りが大好きな長男を同行させたので,設営後は大切に持ってきた数万円するお気に入りの釣り道具で釣りを始めました(写真13)。ここで釣りをした外国人は俺が初めてだといいながらルアーやワームを投げ込んでいましたが,それにかかるほどの大きな魚はおらず小さな魚が沢山よってくるだけでした。ところで・・・予想は的中! 夕食の準備あたりから降り始めた雨は大降りになりたたきつけるような激しい雨になりました。夕食がほぼできあがってこれから食べようとした矢先に降り出したので,急いで夕食をワゴン車の中へと運び込み,あわただしく夕食をとりました。『うわっ〜大変だ〜』などと叫びながら食事を運び込みあわてたのですが,着ている物が相当にぬれていたのでどのような雨だったのかは想像がつくかと思います。テントの中には寝るだけのスペースがありそこは濡れてなく快適に休むことができました。


写真13

写真14クロコダイルの内部(荷物でいっぱいです)
エピソードをひとつ

 いやぁ〜ロシアの夏のフィールドはものすごく蚊の量が多いのです。中途半端ではありません。草むらの中でお尻を出して数分たつととてもかゆくなってきます。手でパ〜ンとたたくと、手一面黒ごまをこぼしたように大量の蚊が取れるのです。気持ち悪いくらい大量にいます。トイレは短めに!

大雨にもめげず次の目的地へ

 一夜明けテントを出て川の方に目をやると,昨日とはうって変わり茶色の水が濁流となって流れていました。水かさも増え,河原も無くなっていました。河原にテントを張ってはいけないということがよくわかりました。自然は美しいものですが,反面,恐いものだとよくわかりました。

朝食後,そこでの大雨にもめげずに, 図1 に示した3,4 地区のサンプリングに向かいました(写真14)。地図でいうと左から右方向に向かってシホテアリンの山々を横断することになります。

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写真15どうしましょ、土砂で源泉がうまってる

写真16ネロビンスキー鉱泉

 シホテアリン山地を横断する道路から少々山中に入った所に以前リゾートホテルがあったという場所を見つけました。今は建物もなく土台のコンクリートのみが残る廃虚と化し,そこにはサウナや温浴に使っていたらしき場所もありましたが,現在はその名残も無く温泉も湧出していませんでした。その場所より車でさらに数百m奥へ行ったところの小さな川の淵に鉱泉が湧出していました(写真15)。ここはネロビンスキー (Nerobinsky) という鉱泉で,いくつかの湧出している小さいプールがありましたが,昨日の豪雨で土砂が崩れ試料採取にはあまりよい状態ではありませんでした。土砂が崩れて湧出している場所をふさいでない方のプールの鉱泉水を採取し,もう一方の土砂で埋まってしまっているプールを掘り返して水をため,ガスサンプルを採取しました(写真16)。このような状況なので,個々の鉱泉水の試料に関しては相当雨水の影響があるものと心配をしながらサンプルを採取しました。


写真17サンプリングだ!

写真18ミネラルたっぷりの鉱泉水を飲む。
冷たく、炭酸がきいていておいしい。

 シュマコフカの鉱泉群より車を走らせて来たシホテアリン山地を横断する道路に再び出て,もと来た道路を数km戻った位置に次のサンプリング地点があります。この横断道路からわずかに森の中に入ったところに今は使われていない小屋とバーニャ(ロシア風サウナ)の建物を発見しました。源泉井戸はその小屋から数十m 先の小川の脇に位置していました。この場所はバリショイ・クルーチ (Bolchoi Kluch) と呼ばれ,源泉は見た目にも湧水量やガスの量が他の源泉に比べ非常に多かったと記憶しております。源泉は直径約 40 cm の円筒形で,普段人がいない割には整備され,きっちりふたがされていて,管理がされている様子でありました(写真17写真18写真19)(図1の5)。筒の内側には他の鉱泉でも見られたような赤茶色の沈殿物が付着していました。源泉のそばには風呂を焚いて入れるように西洋式バスタブと薪で沸かす風呂釜がおいてありましたが,最近使われた形跡はありませんでした(写真20)。


写真19こんこんと涌いている。 ガスも大量に出ている。(バリショイクルーチ鉱泉)

写真20

 

 

いやぁ〜まいりました!


写真21背後は濁流→→しかし→→

写真22 次の日の朝、水流は落ち着いていました。

写真23道の真中で野営

写真24カンパイ!!
写真25月明かりの下での食事

 ここまでなんとか順調に行われていたサンプリングでしたが,昨晩の豪雨でこのシホテアリン山地を横断する道路の中間部に位置する小さな橋が決壊しており(写真21),迂回するか水位が下がったら浅瀬を横断するかの選択をするはめになりました。迂回するには相当大廻りをしなくてはなりません。幸いわれわれの車が四輪駆動であったのと歩いて確かめた川底の状態が平らであった事から,水位が下がってからこの場所を横断することにしました(写真22)。

結局,この橋のたもとで2泊することになりました(写真23)。夜中にスピードを出してくる車がありましたが,われわれの車が道の真ん中に停車していたことと道の上にテントを張っていたことが彼らに注意を促し,橋がないのに気づかずに事故を起こすようなことがなかったのが幸いでした。また,長男の誕生日にぶつかり,月明かりのもと,買っておいたケーキとシャンパンで彼の誕生日に乾杯したことは忘れられない思い出になりました(写真24写真25)。

 移動できないからといってわれわれは仕事をおろそかにしたわけでなく,ここを拠点として試料を採りに行ける場所へと車を走らせました。ナザン (Nazan) へ7 km という標識があるところを曲がり,森の中を谷に下りていく道の終点に車が数台駐車できるスペースがあり,その渕に二ヶ所の源泉がありました。二ヶ所とも高い板で三方向が囲まれており湧出部が管理されていましたが,一ヶ所はほとんど水が出ておらず水たまりの状態になっていました。もう一ヶ所はある程度の量の水が流れており,やはりこの湧水地とその流れには赤褐色の沈殿物が認められました。車で時折水を採りに来る人々がいましたが,それほど多くはありませんでした。ここはソドヴッイ (Sodovy) という場所です。この湧水がある場所は シホテアリン 山地のちょうど中央部で,堆積岩を主とした地層で構成されているそうです。

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