伊豆諸島鳥島
鳥島におけるアホウドリの繁殖状況
 

4.まとめ

 2002年8月11日に鳥島が噴火し、一時は今シーズンの調査が可能かどうか懸念されたが、幸い火山活動が極めて小規模で、早期に終息したため、アホウドリの繁殖状況を調査することができた。
 鳥島のアホウドリ集団は順調に数を増加させ、今期、267組のつがいが繁殖している。これから繁殖年齢(平均7歳)に達した個体の総数は670羽と推定される(非繁殖個体を20%とみなして)。そのほか繁殖年齢未満の未繁殖個体は、巣立ったひなの数に平均の生残率(毎年95%として)をかけて総和して、約740羽と推定される。したがって2002年11月時点で、鳥島集団の総個体数は推定1410羽となる。
 2003年5月までの半年間に、このうちの約35羽が自然死亡する。しかし、約180羽のひなが巣立つので(今シーズンの繁殖成功率は最近5年間の平均レベルの67.6%に維持されるとすると、267卵の67.6%で180羽)2003年5月には集団の総数は1500羽を超すに違いない(1410-35+180=1555)。さらに、2007年5月には、約2000羽に到達するだろう。

 1993年に日本では「種の保存法」が施行され、アホウドリは保護増殖対象種に選定された。そして、環境省が従来コロニーの保全管理や新コロニー形成の人為的促進、さらに衛星追跡による渡りルートの解明などに取り組んできた。2002年はそれからちょうど10年の節目にあたる。これを機に、これまでの保護の成果を批判的に総括し、これからの10年間の保護基本構想を検討する必要がある。