伊豆諸島鳥島
鳥島におけるアホウドリの繁殖状況
 

3.新コロニー形成の人為的促進

 地すべりのない鳥島北西斜面に新コロニーを人為的に形成する計画は、1992年11月にスタートし、今期で11年目を迎えた。開始から3年目の1995年11月に、最初の卵が生まれ、それからひなが誕生して成長し、1996年6月はじめに、無事、巣立った。4年目の96年11月には2組のつがいが新コロニーで産卵し、好調な出だしを思わせた。
 しかし、その年には2組とも繁殖に失敗し、それからは最初に繁殖した1組のつがいだけが毎年繁殖し続けていて、これまで5羽のひなを育てた。

 今シーズンも、このつがいだけが産卵した。滞在中、このつがい以外に新コロニーに着陸していた個体は、11月30日に2羽、12月1日に1羽、12月2日に1羽、12月3日に2羽であった(4日間の平均、1.5羽)。昨年の同時期には、繁殖以外に1羽から4羽(7日間の平均1.9羽)であったから、着陸個体数は減少している。

 この8年間に、鳥島集団の繁殖つがい数は100組あまり増加し(表2)、観察個体数も150羽以上増えたにもかかわらず、新コロニーでの繁殖つがい数や観察個体数が増加していないことは、深刻な問題である。
 残念ながら、新コロニー形成計画は停滞ないし後退局面にあると判断せざるを得ない。