近況

新刊 『健康に老いる−老化とアンチエイジングの科学』 (東京堂出版、2012年11月刊行)
(2012年12月10日)

 最後にこの欄を書いてから4年以上も経ち、とても近況報告欄とはいえませんが、この度、老化と抗老化について表題のタイトルの本を出版したので紹介したいと思います。

新刊 『健康に老いる』 (東京堂出版、2012年11月刊行)

 このHPでは、老化に関心のある方々に出来るだけ正確な情報をお届けしたいと思ってきました。新聞・テレビ・雑誌などのマスメディアで書かれていることや言われていることには不正確なものも少なくありません。そのことはHPの本文や徒然日記で何度か取り上げてきました。昨年古稀になったのを機会に、学問への情熱がさめないうちに、こうした問題も含めて“遺言”を書き残しておきたいと考え、本書を執筆しました。

 一般の人たちにも手にとってもらえるようにと出版社と相談の上で
タイトルは『健康に老いる』としました。科学の本らしくないタイトルだという人もいます。タイトルは確かにそうかもしれませんが、内容は元の論文を引用しながら図表も出来るだけ多くしたのでサブタイトルに “科学”という言葉をいれました。

 老化は生物の宿命ですから、“老いる”こと、そして、やがて死を迎えることは避けられません。どう老いるか、が問題です。タイトルには、老化の結果である“長寿”という言葉ではなく、 “老いる”という老化の過程を表す言葉を使いました。サブタイトルにある“アンチエイジング”もイメージが定着している言葉で“老化防止”という風に誤解されやすいので避けたかった表現ですが、一般に馴染みのある言い方でもあるので出版社の意向を踏まえて、採用しました。

 あれこれ講釈や言い訳を述べましたが、本の内容は、このHPや市民講演会でお話したこと、専門雑誌や本に書いた総説解説をもとにしています。

最初(第一章)に生物学的老化について、あとの章で役に立つ事柄を説明しました。たとえば“加齢”と“老化”はどう違うのか、ヒトの寿命はどこまで伸びるのか、ヒトと動物の老化はどこが似ていて、どこが違うのか、などです。

第二章では老化メカニズムの学説について私の評価を入れて説明しました。専門的な説明もあるので出来るだけ註を入れました。一般の人たちにも知られている活性酸素の害(そして、あまり知られていない益)については特に詳しく説明しました。

第三章では前の章で学んでいただいたことを背景に高齢者に多い病気(動脈硬化・糖尿病・認知症・白内障・加齢性筋萎縮症など)や老化と薬について解説しました。

第四章では、生物学的には避けがたい老化の進行と老年病の発症を遅らせるには、どうしたらいいか、サプリメントには世の中で言われているような効果が期待できるのか、カロリー制限はどうなのか、運動は?といったことについて基礎的な研究、ヒトに関する調査報告などのデータを示して解説しました。

第五章は全体のまとめで、『健康に老いる』ために、伝えたかったメッセージの要約です。

 

 

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