近況

老骨は鞭打てど、走らず・・・(2008年10月16日)

 老年学は学問領域でいうと生物学から医学(歯学)・看護学・心理学・社会学・経済学・法学・工学など非常に幅広い領域をカバーしています。 芸術や文学さらにはスポーツも関係していますから人間活動の大半に関わるといってもいいでしょう。

 20年近く前に東京大学出版会から初版が刊行された『新老年学』の第三版が来春の出版予定で準備が進んでいます。 1500ページを超えるこの本は上記学問領域のほとんどに亘り200人以上の研究者が執筆します。 第二版は1999年に出たのでほぼ10年ごとに改版されることになります。 初版(1992年) の序に折茂肇先生が『・・・わが国では平均寿命が76歳〔後藤註:男性の場合〕に達し、・・・65歳以上のいわゆる老年者が全人口の約12%をしめるようになり・・・』とお書きになっていますが、それが現在(2007年)では79歳を超え、高齢者の割合は21.5%に達しています。 高齢者がますます増加する中で介護保険や後期高齢者医療制度の問題に見られるように老化の問題は人々の日常的関心事になっています。 関心が持たれるだけでなく総合学問としての老年学の重要性が一般にも認識され、研究・実践の両面で社会のサポートが得られるといいと思います。

 『新老年学』は「老化の生物学」・「老年医学」・「老年社会学」の三部から成っていますが、第三版の「老化の生物学」の編集は東京都老人総合研究所の丸山直記副所長が担当します。 僕も冒頭の“老化とはなにか”を執筆します。すでに高齢者の仲間入りをしている僕がたとえ生きていたとしても第四版を執筆することはないでしょうから、いわばこれが“絶筆”ということになります。いつもながらの遅筆で締め切りを大はばに超過した今日も出版会のS氏から催促がきました。 老骨は鞭打てど、走らず・・・。(2008年10月16日)