掲載:2007年1月09日

第94回鳥島アホウドリ調査(2006年11月-12月)報告

鳥島全体で341組、北西斜面の新コロニーで24組のつがいが産卵

 2006年11月19日から12月8日に、伊豆諸島鳥島で第94回のアホウドリ繁殖状況調査を行ないました。11月下旬には、八丈島から鳥島にかけての海域を低気圧が通過したり、付近に前線が停滞したりしたため、時化がつづき、11月29日にようやく八丈島を出帆することができました。翌30日早朝、鳥島に到着し、雨の中をただちに上陸して、12月1日から5日まで調査をし、6日の朝、鳥島を離れて、7日未明に八丈島にもどりました。

 鳥島の現地では、燕崎の断崖の中段から従来コロニーを見下ろして、東地区・西地区の地図を作り、その上に巣の位置を記入して、それぞれの巣に卵があるかどうかを調べて、繁殖つがい数を確定しました。また、北西斜面で新コロニーの地図を作り、同じように産卵したつがいの数を調べました。
  鳥島の近くにいる大部分の個体は、夕方、営巣地に帰ってくると考えられるので、日没時刻に従来・新コロニーに着陸している個体だけでなく、その上空を飛翔しているものや、沖の海上に群れて浮遊しているものもハンドカウンターで計数しました。
  そのとき、全身白色の壮齢(およそ10歳)に達した個体をも数えました。そして、それらを除いた若齢個体が占める割合を区域別に求めました。

 調査の結果を表1、2にまとめ、昨シーズンと比較しました(*印は新コロニー)。
なお、調査期間は、2005年には11月24日から12月1日までで、新コロニーで8日間、従来コロニーでは5日間、観察しました。2006年には11月30日から12月5日までの期間に、新コロニーで6日間、従来コロニーで5日間、調査をしました。観察個体数と若齢個体の割合は平均値で示します。

▲新コロニー 2006.12.2撮影
▲従来コロニー 2006.12.3撮影

 

表1.鳥島におけるアホウドリの繁殖つがい数(組)と増減

区域
2005年
2006年
増減(%)
燕崎
東地区
93
84
-9 ( -10% )
西地区
213
230
+17 ( +8% )
崖上平地*
4
3
-1 ( -25% )
北西斜面*
15
24
+ 9 ( +60% )
合計
325
341
+16 ( +5% )

 繁殖つがい数は、鳥島全体で16組(約5%)だけ増加しました。燕崎の斜面にある従来コロニーでは8組(3%)の増加にとどまりましたが、北西斜面の新コロニーでは9組(60%)も増加しました。

表2.鳥島におけるアホウドリの平均観察個体数(羽)と若齢個体の割合

区域
2005年(若齢率)
2006年(若齢率)
増減(%)
燕崎
東地区
128 ( 43% )
128 ( 34% )
0 ( -9% )
西地区
394 ( 67% )
429 ( 65% )
35 ( -2% )
崖上平地*
11 ( 74% )
6 ( 65% )
-5 ( -9% )
北西斜面*
34 ( 86% )
68 ( 91% )
34 ( +5% )
合計
579 ( 63% )
635 ( 62% )
56 ( -1% )

 日没時刻に観察された個体数は、鳥島全体で平均して昨年より56羽(10%)増加し、とくに北西斜面の新コロニーでは、昨年の34羽から68羽へと倍増しました。その増加は、若齢個体(およそ10歳未満だが、繁殖個体も含む)によっているので(その割合は91%)、今後、新コロニーでは繁殖するつがい数が急速に増加すると予測されます。

 一方、従来コロニーの東地区では、観察個体数は増えも減りもせず、若齢個体の割合は43%から34%へとむしろ減少しました。この区域では、昨シーズンから今シーズンにかけて減ったように、今後も繁殖つがい数が減少するはずです。鳥島全体でみると、若齢個体の割合は63%、62%とほどんど変わらず、また西地区でもその割合は67%、65%とほぼ同じでした。このことから、若い鳥たちは東地区を避けて、北西斜面の新コロニーに移動して、そこに住み着こうとしていると考えられます。
  その理由は、おそらく先の繁殖期に東地区での繁殖成功率が西地区と比べてもかなり低かったためでしょう(東地区:2004-05年繁殖期に28%、2005-06年期に45%、西地区:両繁殖期とも65%。この原因は、2005年の春先に南西から強風が吹き、砂嵐が発生して東地区を直撃したことだと推測された。第89、92回鳥島アホウドリ調査報告を参照)。若い鳥たちは、賢明にも、繁殖に不適な東地区を避けて、好適な新コロニーに移動しているといえます。

 もし、これらの卵からひなが順調に孵化して成長すれば、2007年5月には、東地区から約42羽、西地区150羽、燕崎崖上1羽、新コロニーから19羽、鳥島全体から210〜215羽のひなが巣立ち、鳥島集団の総個体数は推定でおよそ1925羽になるでしょう。

→鳥島の位置とコロニーの場所を地図で確認する