掲載:2011年1月7日
2010年11月21日から12月11日に、伊豆諸島鳥島で第105回アホウドリ繁殖状況調査を行ないました。その結果を下表に示します。
従来コロニー | 新コロニー | 鳥島全体 | |||
---|---|---|---|---|---|
燕崎斜面 | 燕崎崖上 | 北西斜面 | |||
繁殖つがい数(組) |
396 |
6 |
79 |
481 |
|
昨年比 |
+14 |
-1 |
+22 |
+35 |
|
増減率 |
+3.7% |
-14.3% |
+38.6% |
+7.8% |
|
カウント数 (羽) |
平均 |
577.7 |
13.3 |
163.6 |
770.9 |
昨年比 |
+44.8 |
-1.4 |
+46.5 |
+95.9 |
|
増減率 |
+8.4% |
-9.5% |
+39.7% |
+14.2% |
|
若齢個体割合(%) |
48.9 |
84.8 |
86.4 |
58.2 |
今シーズン(2010-11年繁殖期)の鳥島集団の繁殖つがい数は全体で481組昨シーズンより35組(7.8%)増加しました。うち燕崎斜面の従来コロニーでは396組、燕崎の崖上の平坦地に6組、北西斜面の新コロニーでは79組でした。
また、鳥島でカウントした個体数は、従来・新コロニーを合わせて7日間の平均で771羽、最多793羽(昨年比94羽、13%増加)でした。そのうち、燕崎斜面の従来コロニーに着陸していた個体は、平均して578羽、最多600羽(+47羽、+8.5%)で、北西斜面の新コロニーでは、平均164羽、最多172羽(+46羽、+37%)でした。
この、鳥島全体での繁殖つがい数(+7.8%)とカウント数(+14.2%)の順調な増加は、2005年以降も従来コロニーの周辺部にチガヤの株を移植して営巣環境を改善した結果、59.2%、67.8%だった従来コロニーでの繁殖成功率が、3年前から70.3%、72.9%、72.5%へと引き上げられたからです。そこから巣立ったひなの数が181羽、213羽から241羽、264羽、277羽と急増し(最近3年間に、小笠原諸島聟島列島に運ばれて育てられた、10羽、15羽、15羽のひなを除く)、それらが成長して、若鳥となって、鳥島に帰り始めているのです(産卵から数えて3年後には生存個体の約半数、4歳で大半が鳥島に戻ってくる)。
そして、それらの若鳥の多くが、混雑してきた従来コロニーを避けて、北西斜面の新コロニーに定着し、新コロニーで繁殖つがい数とカウント数が急増しているのです(それぞれ、39%、40%増加)。体に黒褐色の羽毛を残している、10歳以下と推定される若い個体の割合を比較すると、従来コロニーでは49%であったのに対して、新コロニーでは86%でした。新コロニーでは、じつに7羽のうち6羽が若い個体です。今後、これらの若い個体がつぎつぎに繁殖を開始するので、新コロニーの繁殖つがい数は急増するはずです。来シーズンにはきっと約100組になるでしょう。
鳥島のアホウドリ集団はきわめて順調に増加しています。来年5月、順調にゆけば(過去3年間と同様なら)、鳥島から約340〜350羽のひなが巣立つと期待され(2011年2月に小笠原諸島聟島に運ばれる15羽を除く)、それらを含めた鳥島集団の総個体数は約2,790羽になるでしょう。
さらに、来シーズン(2011-12年期)の鳥島全体の繁殖つがい数は505〜510組となり、350〜360羽が鳥島から巣立ち、総個体数は3000羽に達するでしょう。繁殖つがい数の増加が今シーズンの35組と較べ、来シーズンは25〜30組にとどまるのは、7年前の2004-05年期の巣立ちひな数が151羽と極端に少なく、来シーズンから繁殖を開始するつがいが少ないと予想されるためです。
その後の数年間は、平均して毎年40〜50組のペースで繁殖つがい数が増加し、5年後の2015-16年期には約700組のつがいが500羽ほどのひなを育てると期待されます。さらに、2020-21年期には繁殖つがい数は約1000組、巣立ちひな数がおよそ700羽になると予想されます。そのころ、北西斜面の新コロニーでは、およそ500組のつがいが産卵するようになるはずです。