掲載:2012年9月25日

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鳥島から小笠原諸島聟島へのアホウドリのひなの移動が終了

 アホウドリの主な繁殖地である鳥島は、日本列島に110ある活火山(「過去1万年以内に噴火した火山」という気象庁の定義による)のうち、活動度がとくに高い(ランクA)と評価された13の火山の一つです。もし、大規模な噴火を起こせば、アホウドリ集団にかなりの影響を及ぼすはずです(ただし、噴火が高頻度で起こらない限り、繁殖集団は消滅しない)。また、鳥島集団に感染性の病気が流行すれば、アホウドリははるかに大きな被害を受けます。もし、致命的被害を受ければ、残る繁殖地は国境問題の渦中にある尖閣諸島のみとなり、アホウドリという種の存続に再び赤信号が点ります。
 こうした事態に備えて、火山島ではなく、国境問題をも抱えていない“安全”な島に、なるべく早期に第3繁殖地を確立する大計画が2004年8月にまとめられました(第3回国際アホウドリ・ミズナギドリ類会議報告[2004年9月13日掲載]を参照)。その基本計画にそってさまざまな準備が進められ、鳥島集団の総個体数(ひなを含めた)が2000羽を超えた2008年2月から、実際に鳥島の従来コロニーから第3繁殖地の形成場所として選定された小笠原諸島聟島にひなが運ばれ、現地での3ヶ月半にわたる野外飼育が開始されました。
 それから2012年までの5年間に、合計70羽のひなが鳥島から聟島に移されて飼育され、69羽が巣立ちました。聟島から巣立った幼鳥のうち、すでに1割ほどが聟島に帰ってきたことが確認され(山階鳥類研究所の出口智広さんたちによる観察)、この計画は順調に進んでいます。
 今シーズンでひなの移動は終了しました。来シーズン以降は、聟島に帰還した個体の求愛行動や繁殖行動が継続して観察され、新コロニー形成の過程が追跡調査されます。