掲載:2009年2月23日

苦境に立つアホウドリ

アホウドリ類、さらなる苦境に

 2008年、アホウドリ類はさらなる苦境に立たされました。2008年8月の第4回国際アホウドリ・ミズナギドリ類会議で、BirdLife Internationalから発表されたアホウドリ類の生息状況はこの5年間でいっそう深刻になりました。

 つぎの表1に、生息状況を1998年から5年ごとにまとめました。調査研究や保護活動が進められた結果、生息状況の評価が変わり、「絶滅のおそれのある 種」(注)の総数は、この10年間で20、19、18とわずかに減少していますが、絶滅の危険度がより高いと評価された種(CRとEN)は4、9、10 と、むしろ増加傾向にあります。

表1 アホウドリ類の生息状況
特別危惧種
(CR)
絶滅危惧種
(EN)
危急種
(VU)
準危惧種
(NT)
資料不足
(DD)
問題なし
(LC)
1998
2
2
16
1
2
1
2003
2
7
10
2
 
 
2008
4
6
8
4
 
 

注)絶滅のおそれのある種(threatened species)はCR、EN、VUを含む。種分類の基準が変化したため、1998年24種、2003年21種、2008年22種になっている。

 

表2には、各種の生息状況を示しました(BirdLife International, 2008)。

表2 アホウドリ類各種の生息状況

* 前年(2007年)と絶滅危険度のランクが変化した場合、その方向を示す。矢印はランクの上昇、はランクの低下を示す。その他の種のランクは変化せず。BirdLife Internationalのウェブサイト(http://www.savethealbatross.net/)では、まだ上記のように変更になっていない(2009年2月15日時点)。

生息状況
変化
Amsterdam Albatross アムステルダムアホウドリ
CR
 
Chatham Albatross チャタムアホウドリ
CR
 
Tristan Albatross トリスタンアホウドリ
CR
Waved Albatross ガラパゴスアホウドリ
CR
Northern Royal Albatross キタシロアホウドリ
EN
 
Black-browed Albatross マユグロアホウドリ
EN
 
Atlantic Yellow-nosed Albatross ニシキバナアホウドリ
EN
 
Indian Yellow-nosed Albatross ヒガシキバナアホウドリ
EN
 
Sooty Albatross ススイロアホウドリ
EN
 
Black-footed Albatross クロアシアホウドリ
EN
 
Wandering Albatross ワタリアホウドリ
VU
 
Southern Royal Albatross ミナミシロアホウドリ
VU
 
Antipodean Albatross アンティポディーズアホウドリ
VU
 
Campbell Albatross キャンベルアホウドリ
VU
 
Grey-headed Albatross ハイガシラアホウドリ
VU
 
Salvin’s Albatross サルビンアホウドリ
VU
 
Short-tailed Albatross アホウドリ(オキノタユウ)
VU
 
Laysan Albatross コアホウドリ
VU
 
White-capped Albatross シロボウシアホウドリ
NT
 
Shy Albatross ハジロアホウドリ
NT
 
Buller’s Albatross ニュージーランドアホウドリ
NT
Light-mantled Sooty Albatross ハイイロアホウドリ
NT
 

 

  とくに生息状況がきびしくなった2種について、個体数減少の原因を説明します。南大西洋のトリスタン諸島のゴフ島で繁殖するトリスタンアホウドリは、繁殖期・非繁殖期をつうじて、はえなわ漁業による混獲で成鳥や若鳥が犠牲になり、成鳥の生残率が低下した(約91%)だけでなく、繁殖地の島で大型化したハツカネズミによってひなが捕食され(単独ではなく十数頭の群れによって襲われる)、繁殖成功率がいちじるしく低下しました(平均32%)。そのため、最悪の場合には繁殖集団は維持されず、30年後には姿を消すと、集団モデルから予測されました。この研究結果にもとづき、今後、大がかりなハツカネズミ撲滅作戦が実施され、混獲防止措置の普及も推進されます。

 ガラパゴス諸島で繁殖するガラパゴスアホウドリも、2007年に行なわれた全域 調査によって、以前よりも繁殖分布域が狭まり、個体数も減少したことが追認されました。その主な原因は東太平洋の沿岸海域における漁業による混獲で、驚くことに、南アメリカの太平洋岸の一部の地域では、この鳥は意図的に釣られて、住民の食用に供されているとのことでした(記念にプラスチック足環が集められていた)。現状を放置すれば、この種は確実に個体数が減少して絶滅に向かうと集団モデルから予測され、漁民へのアホウドリ類保護の啓発や実際の混獲防止方法の普及が早急に必要だと指摘されました。

 

参照)苦境に立つアホウドリ類(前回の報告 2004年3月18日掲載)
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/ahoudori/information/topics/topic031007.html