掲載:2004年7月31日

第87回鳥島アホウドリ調査(2004年6月)報告より

2004年6月、従来コロニー保全管理工事(第87回調査)

 2004年6月8日から26日まで、従来コロニーの保全管理工事のため鳥島に行ってきました。これは環境省・東京都の予算による工事で、八丈島の(株)大勝組の人たちと鳥島に渡り、6月14日〜24日まで10日間、鳥島に滞在しました。台風4号が去ったあと快晴の日々が続き、その暑さの中で、ぼくたちは、燕崎斜面の中央排水路(約80m)の上流側半分に堆積した土砂を除去し、営巣適地を拡大するためシバとチガヤの株を植栽する工事をしました。

  従来コロニーでの繁殖成功率は、この7年間に64〜73%(平均67.3%)に維持され、ここから1113羽のひなが巣立ちました。このことから、この事業は成功を収めてたと評価されます。こうして、アホウドリの個体数がかなり回復したため、環境省はアホウドリに対する保護基本方針を、これまでの「積極的保護増殖」から「繁殖状況のモニタリング(継続監視調査)」に切り換えました。そのため、環境省の予算による従来コロニーの保全管理工事はこれが最後になるかもしれません。

  しかし、だからといってこの工事が中断するわけではありません。ぼく自身で、「アホウドリ基金」からのご支援によって、保全管理工事を継続します。これまでの追跡調査で、この工事を行なって営巣環境を整えれば、繁殖成功率を67%程度に維持し、巣立つひなの数を増やすことができると、はっきりわかっているからです。単純にいえば、お金をかければ、アホウドリの数をもっともっと増やすことができるのです。

 かつて、日本人は莫大な数(数百万羽以上)のアホウドリの生命と引き換えに、羽毛貿易によって多額の外貨を稼ぎました。羽毛を買った欧米人は、アホウドリの犠牲によって生活の安楽を得たのです。ぼくたち人間は過ちを犯したのです。だからいまこそ、ぼくたちはそれ以上の資金と努力を注いで、アホウドリを地球上に完全に復活させるために努力しなければならないのです。