掲載:2004年5月18日
2004年3月19日から5月2日に、第86回鳥島アホウドリ調査を行ないました(鳥島には 3月29日に上陸し、4月30日に離れました)。
今シーズンは好天に恵まれたため思う存分に調査することができ、休養しなければならなかったのは、台風1号が小笠原諸島に接近した4月15日前後と強風や雨の日など8日間だけでした。うれしいことに、ぼくの予想(180〜185羽)より多く、近年最高の193羽のひなが巣立ちました(従来コロニーから192羽、新コロニーから1羽)。
来シーズンにはおそらく200羽以上のひなが巣立つでしょう。ついについに、1929年以来76年ぶりに、200羽のひなが巣立つことになるのです!とてもたのしみです。また、滞在期間中にカウントした、ひなを除いた羽数は603羽で、この数字も近年最高です。
昨年12月の調査で、277個の卵を確認し、それらから193羽のひなが巣立ったので、繁殖成功率は約70%となります。これは近年2番目に高い値です。そして、この7年間で従来コロニーから巣立ったひなの数は合計1,113羽(!)になりました。
これらの数字は、1993年から環境省と東京都によって行なわれてきた従来コロニーの保全管理工事が成功したことを物語ります。これで、鳥島集団の総個体数は、繁殖年齢に達したもの推定約680羽、繁殖年齢未満の若鳥約780羽、巣立ちびな193羽で、合わせて約1,655羽になりました。
もし、アホウドリが営巣する鳥島の陸上環境や、かれらが採食する北太平洋の海洋環境が大きく変化しないならば、鳥島集団の総個体数は、2005年5月に約1780羽、2006年5月に約1915羽、2007年5月に約2075羽と、今後も増えつづけると予測されます。
鳥島の北西斜面の新コロニーでは、今シーズンに1個の卵が生まれ、1羽のひなが巣立ちました(これまでに合計10個の卵から7羽のひなが巣立ちました)。ここに定着している繁殖つがいはまだ1組だけですが、訪れる鳥の数は昨シーズンから増えています。日没時に滞在している個体-----新コロニーへの定着傾向を強く示すと考えられる-----の数は、昨年4月には平均10.5羽でしたが、今年は14.3羽でした。最近、従来コロニーから非常にたくさんのひなが巣立ち、それらが成長して出生地に帰ってきたため、従来コロニーは込み合ってきました。その結果、そこでの混雑を避けて、繁殖前の若鳥たちが新コロニーに移ってきていると考えられます。
これらの中から、数組のつがいが形成されつつあります。ぼくは、2、3年のうちにそれらが営巣を開始すると予測します。そうすれば、新コロニーは最終的に確立します。新コロニー確立は時間の問題だとぼくは考えています!
この6月中旬に、環境省の予算によって、従来コロニーの保全管理工事がおこなわれます。ぼくは現場でその指導にあたります。環境省による工事はこれが最後になるかもしれません。
しかし、それで保全管理工事自体がなくなるわけではありません。
ぼくは、その他の資金でこの工事を継続します。工事をすれば巣立つひなを増やすことができると、はっきりわかったからです。
かつてアホウドリの生命と引き換えに、日本人は羽毛貿易によって多額の外貨を稼ぎました。
いまこそ、ぼくたちは、それ以上の資金を注いで、アホウドリを地球上に完全に復活させるために努力しなければならないと、ぼくは思います。