月刊 センター長! 【No.005/2007年8月】

文 : 山内 長承

前の回の「図書館不要論」に関わって、「図書館員が極めて重要である33の理由」という記事を見かけましたのでご紹介します。 国立国会図書館のニュースにあったものです。

→ http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/cae/item.php?itemid=618
33個をざっと見ると、ネットには出来ないものは「人のサービス」と「場のサービス」、ということになりそうです。

 

さて、今回は分類変更の話題を取り上げましょう。習志野メディアセンターでは蔵書の分類の方式を変更する作業を始めました。 今までもいろいろな下準備を進めて来ましたが、8月に入って、書架の周囲で実地作業を始めています。ご利用にご不便をかけます。 ここでは、変更の意図・意味と作業の具体的な内容について、ご説明したいと思います。

 

図書の分類は、おそらくは図書館で本を並べる(配架。排架とも書くらしい)時に、利用者にもっともよく見える仕組でしょう。 本をあらかじめ主題・内容によって分類し、その分類に従って並べる、つまり同じ主題・内容の本は同じ書架にあるように、また分類を知っていればその話題の本が集まっている棚に行き着けるように、並べるわけです。 手元の「図書館ハンドブック」によると、利用者が様々な図書の中から求める情報を収録した図書を容易に見出せるための工夫、と書いてあります。

 

図書の分類には、いくつかの広く使われている分類法があります。 図書館では、デューイ十進分類法(DDC)、国際十進分類法(UDC)、米国議会図書館分類表(LCC)、コロン分類法(CC)、日本十進分類法(NDC)、国立国会図書館分類表(NDLC)などが使われるし、米国の書店の棚分類にはBISACが使われているそうです。分類法によって力点が違い、分類手法が違っていて、図書館によって採用する分類法が異なります。 どれが有力かというデータは見つかりませんでしたが、米国で主流といわれるデューイ法も多少採用館が減っているという記述もあります。

→ http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/car/index.php?p=2382

国による違いも大きいようで、特に日本の場合は、1948年文部省刊「学校図書館の手引き」が日本十進分類法採用を推進し、また国立国会図書館で和漢書の分類に採用(1968年まで)した経緯から、公共・学校図書館では日本十進分類法が支配的に使われています(図書館ハンドブックによる)。

 

習志野図書館では、従来は国際十進分類法(UDC)を使ってきました。採用当時の理由はおそらく、自然科学に強いこと、国際性などを重視したものと想像できます。 それを今回、日本十進分類法(NDC)に変更します。 その理由を整理すると、

  • 国際十進分類法の日本語版は1994年以来改定されておらず、分野の成長に対応しない(注:本家の国際十進分類法はコンソーシアムが組まれ、毎年追加が行われている)
  • 日本十進分類法が公共図書館・小中高校の図書館の殆どで採用されており、利用者がなじんでいる
  • 国際十進分類法は、複数の分野への分類など難しいことが出来るが、その分複雑になる

などがあります。

 

改定されていないことの影響は、理科系での分野の栄枯盛衰が急速なために、新しい分野の分類がされず、大くくりの分類のままにするか、本家の英語版を参照して細分類を作るかしかありません。 大きな分類のままでは使いにくくなりますし、勝手に分類項目を作ると後で困ることになるでしょう。また、細分類項目を立てる作業は図書館員にとって大きな負担になります。

 

利用者が日本十進分類になじんでいるという点については、どの分野の本がどのかたまりとして配架されているかが想像できるので、目的の書架へスムーズに行き着けて、背表紙を眺めて本を選ぶ(ブラウジング)時に具合がよいかもしれません。

 

日本の他の大学の図書館でも、特に理工系の図書館では国際十進分類を使い続けている大学もありますし、和書と洋書で分けている館もあります。 習志野メディアセンターではセンター所蔵の図書を、日本十進分類法へ分類しなおす決心をしたわけです。

 

分類変更作業には、図書のラベルの貼り換え、収蔵書架の変更、オンライン検索システム(OPAC)上の登録変更、などが必要です。 センターに収蔵するすべての本についてこの作業を行うため、外部に作業を委託しますがそれでも4ヶ月ぐらいかかる予定です。 この間は、数個の書架を単位にして作業を進めますので、その時ちょうど作業をしている書架についてはアクセスできなくなります。 ご不便をおかけしますが、ご容赦ください。

 

なお、各教室の蔵書は作業対象としません。 教室の閉鎖等、何かの理由でメディアセンターに戻された本について、そのときに変更をすることにします。

 

さて、分類の意義について、もう一度考えて見ましょう。 昔は、本を探し当てるには主題が分かっていて分類を頼りに探すか、著者が分かっていて著者名カード(著者目録)を探すか、どちらかでした。 図書分類は本を探し当てる有力な手段の1つだったわけです。 ところが最近は、検索システムを使うとタイトル中の文字列からでも著者名からでも、容易に本を探し当てることが出来ます。 分類番号は、検索で探し当てた本の位置を書架で見つける道具だけになってしまった観もあります。

 

もともとは、そうではないのです。主題から書架位置を見つけ、書架で背表紙を眺めて欲しい本とその周辺の本を眺める(ブラウジング)ことが出来るはずなのです。 本の探し方・見方として、ブラウジングは重要な知的活動のはずです。 図書館へ行かない人も、本屋に行って背表紙を眺めることはあるでしょう。 Amazonなどでタイトルから検索して、「この本」と言ってオーダーするのとは、違うはずなのです。 だからAmazonだけではなくて、街の本屋さんも大きな存在意義があるのです。 同じ視点から、図書館を自動書庫にして(使い方は必然的に閉架式となり、端末で検索した本を指定すると書庫から自動的に取り出される)館員の手間を減らす(人員削減・コスト削減につながる)と、ブラウジングが出来なくなります。 これは利用者の知的活動を大きく制限するものではないかと思います。

脱線ですが、オンライン資料や電子ブックなどの形で電子化されていくと、ブラウジングがしづらくなります。 検索の使い勝手を、現在のようなピンポイントの指定、たとえば書名や著者名の文字列がその通り指定できないと探せない方式ではなくて、似たような主題の本を並べて見せるような使い勝手にして、ブラウジングに近い形にしようという方向性があります。 似たような主題を探すには類語辞書を使ったり上下概念の辞書(例えば犬の上位概念は哺乳類、下位概念は○○犬・××犬、のような情報)を使うやり方 が提案されています。また一緒によく出てくる概念を探す「連想検索」を使った例もあります。

国立情報学研究所のWebCat Plus:http://webcatplus.nii.ac.jp/

新書マップ:http://shinshomap.info/search.php

 

物理的な本は、1冊しかなければ1つの書架にしか置けません。 主題がいくつかの分類に属するときや主題が複数あるときには、従来の考え方ではうまくゆきません。 分類法によっては複数の区分を書くことが出来るものもあります。 たとえばUDCでは複数の分類にまたがることを記述でき、関連の仕方(「○○と××」とか「○○地域における××」とか)によって書き分けています。 それであっても、1冊しかなければどちらかの分類の書架にしか置けないので、ブラウジングの時には一方の分類には入っていないわけです。 そこで、書架をバーチャルにしたらどうか、という議論が出るでしょう。 上で触れた新書マップは、バーチャルな本棚を見せてくれます。 もし図書館の検索(OPAC)がこのようならば、つまりタイトル内の語との完全一致ではなくて、分類単位を基にした書架を仮想的に表示するならば、もしくは連想検索で引っかかるような本を仮想的に並べて表示してくれるならば、ブラウジングを実現できるかもしれません。 まだ、実働している図書館の検索システムでこのようなものは見たことがありませんが、近い将来作ることができそうな気がします。

 

これでも足りないのが、ブラウジング時に本を手にとってパラパラとめくってみるという機能です。 将来、本がすべてオンライン化されれば、画面上の仮想書架から手にとってパラパラ見ることも出来るでしょう。 しかし、それには既存の本をオンライン化するという膨大な手間がかかります。 異なるアプローチとして、本のごく一部だけをオンライン化して見られるようにする、具体的には前書きと目次程度の限定したページをオンライン提供する、という考え方があります。 既にAmazonが「なか見!検索」(Search Inside!) として本の一部の閲覧を可能にしているものがありますが、それと似た考え方です。 出版社がここまで許可してくれれば、仮想書架もだいぶん使いやすくなると思います。 ここまでできれば、フレキシブルなブラウジングによる本の選択という意味でも、また非来館型のサービス提供という意味でも、現状を大きく超える図書提供サービスが実現できるでしょう。

 

 

 

 


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