ダブルサンプリング等化    Double sampling equalizer

 受信信号をシンボルレートの2倍の速さでサンプリングして入力します。 3倍や4倍も考えられますが、この場合はタップ間隔がT/3やT/4になります。この意味から、このような等化器を fractional(分数の) tap space equalizer と呼んでいます。 シンボルレート等化では受信信号をちょうどシンボルレートでサンプルし、それを で表しましたが、ここでは のように表わすことにします。 それにともなって、タップ重みも のように表します。 ブロック図は下のようです。 等化は を一個おきに間引いた が送信シンボルに近似するように最適化します。

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シンボルレートとダブルサンプリングの二つの等化器について、下記のような応答(T/2 秒サンプル)に対して実際にシミュレーションしてみました。

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等化が成功した後、スペクトルがどのように変換されているかを下に並べて描きます。 左側がシンボルレート、右側がダブルサンプリングです。 実際は位相特性も表示する必要がありますが、図が煩雑になるので振幅特性のみを描いてあります。 シンボルレートでは、等化前にスペクトルが重畳し、それを等化します。 一方、ダブルサンプリングでは、等化した後で、間引きによってスペクトルの重畳が生じます。 すなわち、スペクトル重畳と等化の順序が逆になっていることを読み取ってください。

 

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の収束カーブ

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等化入力の振幅特性

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等化器の振幅特性

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                          のスペクトル

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等化後 ( )のスペクトル

 

上の図では、たまたま両者とも等化が成功していますが、シンボルレート等化のプロセスには等化不能のリスクが潜んでいます。 そのリスクは、スペクトル重畳によって、ロールオフ領域でゼロを生ずることにあります(シンボルレート等化を参照)。 一方、右側のプロセスでは、重畳しないスペクトルに対して等化が行われ、その目標が間引きサンプリングによる重畳結果をフラットにするように動作しています。 したがって、シンボルレートのような等化不能は、帯域内にスペクトルヌルが無い限り起こりません。 同じタップ数で比較すれば、性能カーブは下のような傾向(概念図です)を示し、最小値はシンボルレートの方が若干勝ります。 しかし、タップ数を十分多くすれば、ダブルサンプリング等化も十分な性能をもつので、サンプリング位相に依存しないダブルサンプリング等化を採用した方が無難といえます。 なお、等化アルゴリズムの収束速度に関しては、確率的最急降下アルゴリズム高速等化アルゴリズムを参照してください。

 

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