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薬草園の世界
東邦大学名誉教授
小池 一男

12月-December-


アカバナサツマノギク

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ダイトウチャ

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クロガネモチ
(実)
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オオシラビソ
(北八ヶ岳)
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オオシラビソ
(尾瀬)
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フィルムに収められた思い出の植物 −撮影者二十歳頃の植物−

オオシラビソ[撮影地:北八ヶ岳]

 大寒波が来た時の北八ヶ岳。麓に車を止めバッテリーを外し毛布で包みアタック。目当てはテンに会いに行く。 尾根にたどり着いた時の1枚。カメラを懐に入れておかないと寒さの為シャッターが落ちない。シャッターを切っては 又懐に。ウサギに会いシャッターを切るが寒さの為切れない。夜明け前、リンドウ色に空が染まり吐く息が凍りダイヤモンドダストに、呼吸をすると肺の大きさが実感できる。この中で生きている彼らの逞しさに脱帽。

オオシラビソ[撮影地:尾瀬]

 たまたま豪雪の年の12月下旬の尾瀬。天気予報とにらめっこ。快晴になるのを予想しアタック。よみが大当たり。静寂の中シジュウカラ3羽が寄ってきて話しかけてくる。彼らにラーメンを砕きあげるととても喜び「チーチーチー」。私もコーヒーをドリッパーで落とし飲もうとするとアイスコーヒーに。新雪を入れさらに冷やし味わう。3羽と30分ほど遊んでいる時に撮った1枚。

■オオシラビソ
 マツ科モミ属の常緑針葉樹 高さ30mに達する 雌雄同株 花期は6月頃 円柱形の暗紫色をした球果が印象的
 本州北中部の亜高山に分布し、広い樹林帯をつくる。特に日本海側によく発達する。
 別名 アオモリトドマツ、ホソミノアオモリトドマツ

 

11月-November-


オオミノサンザシ
(実)
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イソギク
(交雑種)
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ブルーベリー
(紅葉)
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ヒイラギ

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ヒラタケ

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ヒイラギ

モクセイ科モクセイ属 関東北部以西、四国、九州の山地に自生する常緑小高木。高さ3-8mほど。
雌雄異株。 白い花には芳香があり、花後は黒紫色の核果をつける。

 和名「ヒイラギ(柊)」は、古語の自動詞 ひひら・く【疼らく】 より、ひりひりと、あるいはずきずきと痛むことから、触るとひりひりと痛い葉を持つ植物であることに由来すると言われる。別称に いたいた(三重)・おにざし(高知)・おにのめつぶし(奈良)・かみなりよけ(静岡)・ねずみさし(千葉,神奈川ほか)などがある。いずれも痛そうな呼び名である。

 「古事記」、「延喜式」、「土佐日記」など古文献に登場するヒイラギは魔除けの意味合いが濃く、葉の堅く艶やかな様子やその形状に何か特別なものを感じていたのかもしれない。現在、一般的によく目にするのは節分の飾り用に売られる頃だろうか。イワシの頭を刺して玄関などに飾るヒイラギは鬼を払うとされる。

 クリスマスに飾られるヒイラギはこれとは別で、モチノキ科のセイヨウヒイラギである。こちらはトゲトゲの葉だけでなく、赤い実にも由来があるそうなので、そろそろ始める飾り付けの準備に合わせて調べてみるのも良いかもしれない。

 

10月-October-


ゴボウ
(実)
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イヌマキ
(実)
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カイトウメン

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タマゴタケ
ザトウムシ

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カッシア

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イヌマキ

マキ科イヌマキ属の常緑高木。高さ20m、直径60cmほどになる。雌雄異株。
関東南部以西の太平洋沿岸、四国、九州、琉球列島の暖帯林の中などに自生。九州では1000メートルの山地にまで生える。

 和名を 「犬槇」 と言い、コウヤマキ(コウヤマキ科)とともに槇(真木)として最も有用な樹種とされた。
本来、マキは「真木」で、イヌマキ、コウヤマキだけでなくスギ、ヒノキなどの優れた樹木を指す美称として使われた。コウヤマキをホンマキともいい、耐水性ではとくに優れ、正に「真木」であり、これに対し劣るという意味で犬の接頭語がつけられたと言われる。
 マキのマ(真)は、「まことの、優れた」の意。

千葉県の県木 − 昭和41年9月29日、イヌマキの名称を単に「マキ」と改め、県の木として指定。

 

9月-September-


ラシャカキグサ

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ボタンヅル

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クコ

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シュウカイドウ

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キタダケトリカブト

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クコ

東アジア原産 ナス科の落葉低木
本州、四国、九州の原野や土手に自生し、垣根などに植えられることもある。実は楕円形で赤く熟す。
和名 「クコ」 は、クウキ(食木)の意味から。あるいは、漢名の枸杞に由来すると言われる。

 中国、日本では古くから漢方薬として知られている。現在はドライフルーツでも利用され、料理のトッピングなどに用いられることも。杏仁豆腐の上の赤い実などがわかりやすい例だろうか。有名なクッキングSNSにも多数のレシピが掲載されている。

2012年12月のカレンダーで クコの実 をご覧いただけます。

 

8月-August-


シロバナ
キツネノカミソリ

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ツルレイシ

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オミナエシ

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コガネバナ

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ルコウソウ

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ツルレイシ −夏の美味しい食材が実ります

ウリ科ニガウリ属 熱帯アジア原産の1年生の蔓植物
葉は巻きひげと対生。このひげで他物に絡みつく。
ツルレイシの名は、蔓性になり、果実が裂けると赤い果肉が現れる様がニシキギ科のモクレイシに似ることに由来する。

 濃緑色の実は「ゴーヤー」としてスーパーなどの野菜コーナーに並ぶ。カロチンやビタミンCが豊富で、暑い夏を乗り切るための栄養素がぎゅっとつまった食材。また、近年は強い日差しを避けるためのグリーンカーテンに用いられることも。
 学名【 Momorudica charantica L. 】は「私は噛んだ」の意で、種子に噛み跡のような凸凹があることからつけられたようである。外見の凸凹も随分印象的ではあるが、種子の形状から命名されているところが面白い。

 日本に渡来したのは17世紀頃と言われる。
 「ゴーヤー」は沖縄の方言。

 2013年2月のカレンダーにモクレイシがあります。

7月-June-


ヨモギギク

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カキラン

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カッコウチョロギ

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ナガバノモウセンゴケ

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ミヤマハナシノブ

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フィルムに収められた思い出の植物 −撮影者二十歳頃の植物−

[ ナガバノモウセンゴケ ]絶滅危惧植物

 本州では尾瀬にしか自生がなく、見たいと思っていた植物のひとつ。

 この写真はナガバモノウセンゴケだが、これとモウセンゴケの中間種に‘サジバモウセンゴケ’がある。その名の通り、先が匙の形状をしている。共に同じようなところに生えており、よく見ないと間違えることがある。

 初めてこの植物を見たときに、腺毛の先の水玉がキラキラ光りとても綺麗だったのが印象的であった。


− モウセンゴケ科モウセンゴケ属 
北海道の一部と尾瀬にのみ自生する食虫植物。 高さは10cmほど。上面に赤紫色の腺毛が密生する。花茎を直立し、片側に白色の小花を並んでつける。花期は8月頃。

[ ミヤマハナシノブ ]絶滅危惧植物

 南アルプス鳳凰三山のひとつ、観音が岳の稜線を歩いていると、目の前に青空をバックにブルーのミヤマハナシノブが飛び込んできた。 「これはシャッターチャンス!」 と思い、アングルを決めシャッターを切る。ホッと息をつき、ひと休みしながら暫くこの花を眺めた。

 周りにはヒナコゴメグサもたくさん咲いており、とても印象深かった。

− ハナシノブ科ハナシノブ属
飛騨三系と赤石山系の一部にだけ見られるが、北岳の大樺沢では大群落をつくる。(2001年5月出版書籍による)

6月-June-


ウチョウラン

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ヒロハセネガ

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マロウ

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ツチアケビ

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ギンリョウソウ

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ギンリョウソウ − 薄暗い林の中で出会ったら・・・

ツツジ科ギンリョウソウ属の腐生植物 花期は夏。


 日本各地および南千島、サハリン、台湾と東アジアからヒマラヤに分布し、山地の林中の落葉の中に生える。葉緑素を持たないため光合成をせず、 地中に伸ばした根で菌類から養分を吸収する。菌類は樹木などから養分を得て生きるのだから、おすそ分けか横取りか・・・とにかく菌に寄生している植物である。

 地上部分は全身白色の半透明。日の光を浴びれば、透き通ってさぞ美しい造形だろうと思うが、いかんせん日陰に生きる植物。林の奥に会いに行くしかなさそうである。ただし、うす暗がりの中、うっかり気を抜いたところで出会ったら・・・こちらを向いて咲いていたら・・・想像すると冷や汗が流れます。

 別名 ユウレイバナ(幽霊花)、ユウレイタケ(幽霊茸)、スイショウラン(水晶蘭)。 よく似た植物に‘ギンリョウソウモドキ’(花期は夏から秋)がある。
和名 「 銀竜草 」 は、その姿を竜に見立てたところから。

5月-May-


アケボノツツジ
(アカヤシオ)
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カルミア

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ムユウジュ

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ウラジロヨウラク
(ツリガネツツジ)
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ゼンマイ

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フィルムに収められた思い出の植物

 [ アカヤシオ ] 奥多摩にスミレを視に行った時
 尾根筋に上がるといきなり目の前に綺麗なピンクの花、背景の尾根筋を入れ撮影し一休み。
 帰りたくなくなるひと時。

 ツツジ科 ツツジ属 紀伊半島と四国の日当たりのよい山地に生える落葉低木。
花柄に腺毛のある変種に「アカヤシオ」がある。北関東に多い。


4月-April-


オオアマドコロ

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サクラ

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ケマンソウ

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タイセイ

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ミズバショウ

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ケマンソウ (華鬘草)

 ケマンソウ属 中国原産の多年草。高さ40−80cmほど。

 「小さなバレリーナが並んで踊っているよう」、「たくさんのハート」や「不思議な髪型の女の子がたくさんいる」と言った人も。

 和名の「華鬘(けまん)」は、仏殿の装飾具である。花がたくさん並んで垂れ下がった様子を、華鬘に見立てたことからつけられた。漢名を「荷包牡丹(カホウボタン)」という。
 日本各地の呼び名を見ると おいらんばな(青森)、たいつりそう(和歌山)などの他、きんちゃくぼたん(岩手)、ふじぼたん(和歌山・新潟)と呼ぶ地方もある。青森では花魁道中の艶やかな様子に例えたのだろうか。タイ釣りとすると、なかなかの大漁である。ボタンに例えるのは‘ボタン色の花’ということだろうか。形は華鬘がしっくりくるように思う。

 一風変わった形の植物は名前の由来を想像するのも面白い。

3月-March-


キクバオウレン

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ウグイスカグラ

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クロモジ

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ネコヤナギ

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フクジュソウ
(チチブベニ)
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クロモジ 魔除けに垣根にお茶の席

 クスノキ科クロモジ属の落葉低木 雌雄異株で高さは2−4mほど
 春、葉に先んじて黄色い花をつける。花・枝葉・樹皮、特に材には独特の芳香がある。

 クロモジの名は「黒文字」の意で、一般に、この樹皮上の黒い斑点を文字になぞらえてつけられたものといわれる。また、実ると黒くなる果実の様子からついたとも。

 人とのかかわりは古く、魔除けの道具のひとつである卯杖(うづえ)に用いられ、諸儀式に深く関与していたようである。同じく材を用いた道具に楊枝がある。クロモジを用いた楊枝は弾力性に富み、けば立ちが少ないところが良いらしい。特に根元に樹皮を残すものが上品とされ、現在でもお茶席や日本料理店などで利用される。江戸時代に武士の内職として始められた楊枝づくりが、後に主要産業となった土地もあるほど。
 また、晩秋から冬の落葉期に刈り取って束ね、垣の材料にする。黒文字垣の名で知られ、光沢のある暗褐色が雅味深く、普通の萩垣や竹垣とは比較にならぬほど高級な籬(まがき)として、古くから賞用されている。

2月-February-


ザゼンソウ

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ウメ

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セリバオウレン

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原種スイセン

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ヒマラヤスギ
(実)
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シダーローズ

 マツ科ヒマラヤスギ属 ヒマラヤ原産の常緑針葉高木、「ヒマラヤスギ」の実。
 和名は、ヒマラヤ産のスギであることから。高さ20m、径1mほどにもなる。写真はその実の先端部分。
シダーローズの名の通り、まるでバラの花のように優美な姿をしている。初めて見る方には「スギのマツボックリで・・・なので、スギボックリで・・・」と、なかなかに説明が難しい。
 キャンパスの薬草園内にあるヒマラヤスギは大きく、花や実の撮影が難しい。その分、実は高所から降ってくるため、落ち葉の上に転がる実の中からきれいなものを見つけるのは、まるで宝探しのよう。薬草園のスタッフが拾い集めて、箱に収めてくれた。かすかにスギの良い香りがする素適な贈り物である。

1月-January-


クチナシ
(実)
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ロウバイ

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ヨクサクスミレ

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クリスマスローズ

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ヤブコウジ
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クチナシ

 アカネ科クチナシ属の、高さ約2mほどにもなる常緑低木

 花期は初夏で芳香がある。晩秋、実がいくら熟しても決して自分から口を開かないところから「口無し」の名がついたと言われる。

 このクチナシの実をかたどって作られているものに碁盤の足がある。碁は唐、宋の時代に生まれ、朝鮮半島を経て7世紀頃に日本へ渡来したとされている。貴族の娯楽として好まれ、江戸時代には庶民の間にも広まった。この足は、 「口無し」 つまり碁の対局への 「助言無用」 を意味しているという。打ち手もギャラリーも口を閉じていれば諍いは起こらない。仮に起こっても道具を示して諌めるには良いアイテムとなる。対戦ゲームはいつの世も白熱するもの。なるほど妙案である。

著作権について

ここに掲載する写真は著作権で保護される著作物です。 許諾の無い複製、商用目的の利用を禁じます。

Copyright Yoshiko Hosoda
著作権者 細田凱子

Copyright Medicinal Herb Garden, TOHO Univ.
著作権者 東邦大学薬学部付属薬用植物園

参考図書

  •  図説 花と樹の大事典 (木村陽二郎監修/植物文化研究会編 柏書房)
  •  季節の花事典 (麓次郎著/八坂書房)
  •  日本植物方言集成 (八坂書房編)
  •  ニセアカシアの生態学 外来樹の歴史・利用・生体とその管理 (崎尾均編/文一総合出版)
  •  染め草の散歩道 (こきかほる著/山と渓谷社)
  •  ポケット図鑑 日本の高山植物400 (新井和也/文一総合出版)
  •  APG牧野植物図鑑 U スタンダード版 (北隆館)
  •  増補改訂 フィールドベスト図鑑9 高山植物 (大場達之監修 永田芳男写真/学研)
  •  学生版牧野日本植物図鑑 (牧野富太郎著/北隆館)
  •  食虫植物の世界 420種 魅力の全てと栽培完全ガイド (田辺直樹著/エムピージェー)
  •  フィールド図鑑−植物4 山地の森林植物 (解説 奥田重俊 写真 武田良平/東海大学出版会)

参考WEBサイト

‘PICK UP’ 文責:習志野メディアセンター(バーチャルラボラトリ担当)