自動能のイオン機構−洞房結節とプルキンエ線維の自動能の比較−

プルキンエ線維の心房より(右脚や左脚部分など)の活動電位は弛緩期脱分極を有し、それゆえ自動能を示します。この自動能の頻度は洞房結節自動能の頻度より低く、通常の状態では表面には出ませんが、心房からの活動電位が伝わらなくなった場合にはこの自動能が表面化します。

洞房結節の最大弛緩期電位が−60mVであるのに対し、プルキンエ線維では−90mVに近くなります。したがって弛緩期脱分極が洞房結節ではおよそ−60mVから−40mVの範囲で起こるのに対し、プルキンエ線維ではおよそ−90mVから−60mVの範囲で起こります。

自発性活動電位の比較

弛緩期脱分極のイオン機構

弛緩期脱分極のイオン機構には未確定の部分が多くありますが、現時点ではおおむね次のように考えられています。

洞房結節

弛緩期脱分極は再分極の終わりに活性化されたK+チャネルが徐々に不活性化されることと、Ca2+チャネルが徐々に活性化されることによって形成されると考えられています。

活動電位脱分極相(立上り相)はCa2+チャネルの開口により形成されます。活動電位立上り相を形成するCa2+チャネルは通常のL−型チャネルですが、弛緩期脱分極には異なったタイプのCa2+チャネル(T−型カルシウムチャネル)の関与も示唆されています。

プルキンエ線維

弛緩期脱分極には、If電流と呼ばれる過分極によって活性化される電流の関与が示唆されています。この内向きの電流成分は主としてNa+電流です。