温泉と微生物の関係-概要-

2.温泉とは?

 ところで、温泉について説明しますと、温泉とは地中から湧出する水(温泉水・鉱泉水)のみならず、それに伴う水蒸気、ガス等もあわせて考えられるべき性質のものです。

 日本の温泉法によると温度および温泉水に含まれている溶存物質の種類とその量が詳細に規定されています。従って、ある一定以上の条件を満たさなければ温泉という名称が使用できません。
  また、"狭い意味での温泉"では25℃という温度で鉱泉と分けられています。
  さらに温泉はそれらの含有成分の違い、温度、pH 等により詳細に分類されています。  

 ところで、その泉質(温度・pH を含む)は四季の変化等の環境条件の変化に大きく左右されずに一年を通じほとんど変化がないので、生物にとっては格好の生息場所になっていると考えられます。
  江本によると(歴史の項参照)我が国では100年以上も前から温泉に生息する生物に関する研究が行われていたとされています。
  かつては活発な研究が行われていましたが、近年では、特殊環境に生息する生物という観点に立ち研究が行われているのが現状です。
  その代表的な書物は Kushner D. J. (1978) によって編集された特殊環境の微生物という表題の本で、それは第一線の研究者によって、様々な特殊環境に生息する微生物について書かれたものであります。 さらに、高温環境下における微生物(藻類や細菌類)については Brock T.D. (1978) によって書かれた非常に興味深い書物があり、それにはアメリカ合衆国の Yellow Stone National Park を中心として行われた彼の膨大な研究内容が紹介されています。

 現在、温泉に生息する生物については藻類や細菌類(特に、特殊な環境に生息する種)を中心とした研究が行われており、それらが持っている特殊な性状は産業面での利用価値が高く、また、それらが持っている遺伝子の資源としての有用性が認められ、分子生物学的にも研究価値が高いということからも注目を集めています。また、温泉環境には進化学的にも貴重な生物が生息しているという点から興味が持たれています。

→3.生命の進化の過程として

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