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その他のパラトゥンカ 温泉

 先に解説した温泉施設の他に様々な温泉施設や源泉が存在しますが、私が訪問した他のパラトゥンカ 温泉施設や源泉について解説したいと思います。

緑色をした温泉  

 1992年.ペレストロイカによって旧ソビエト連邦が解体され新生ロシアになった翌年、高野穆一郎先生を班長とする日・ロ共同の火口湖に関する学術調査隊に参加し、初めてカムチャツカを訪れた私達が連れて行っていただいたパラトゥンカの温泉は、スプートニク(=衛星とか旅仲間と言った意味)という名前がついている温泉施設で、入り口の看板から推測すると温泉療養所の様な施設であると思われます。ほぼ正方形の同じ大きさのプールが3つと高温の温泉水が入れてある小さめなプールが1つありましたが、その温泉水がきれいなグリーンの色をしていることが、この温泉施設の大きな特徴のひとつでした。この温泉に関しては調査をしてはいませんが、もちろんこのグリーンの色を形成しているのは藻類であろうと推測されます。

 地元の人々もこのグリーンの温泉は肌に良いことを自負しており、人々は温泉に浸かりながらその温泉水を肌にすり込むようにマッサージしていた事を覚えています。温水プールのプールサイドにはコンクリートの上に木が敷いてあり、冬場に利用しても足が凍り付かないような対策がなされているそうです。また、そのプールの深さは階段と手すりがある手前側から反対側へと深くなり、深いところで我々の背丈くらいあった様に記憶しています。プールには先に述べたような木で作った階段が設置してあり、手すりもあったので結構年をとった方々にも多く利用されていたようでした。→動画へ

セイウチとトド?!

 1998年11月にカムチャツカを訪れた時に連れていっていただいたのは、無色透明の温泉水で下に敷いてある砂利の中から適度の温泉が湧出し、さらに時折気泡(ガス)も砂利を敷き詰めている間から出ていた温泉です。

 日本の銭湯では富士山と松等を壁に描くのが定番になっていますが、この温泉施設の壁にはトドとかセイウチが陸上でたわむれている姿が描かれていました。その絵が書かれている向かいの板張りのプールサイドでは水着を着た私とロシア人の友人たちが、壁面のトドに負けないくらいの巨体を横たえ日光浴を楽しんでいました。でも、カムチャツカの11月は相当に寒く、日光が出ていても、結構長時間温泉であたたまっていないと外に出てから寒かった記憶があります。ほぼ正方形のプールが2つありそれぞれ温度が異なっていましたが、温かい方でないと体があたたまらないので泉温が高い片方のプールにばかり浸かっていました。トドが描かれているもう一方の壁には大海原を渡る帆船の姿が立体的なモチーフのように描かれていました。

温泉ばかりではありません  

 ピンク色の花が咲き乱れるパラトゥンカの草原に一軒の小屋がありました。中にはいると直径約30cmのパイプが設置されその上にはノズルがありました。ここからは天然ガスが出ているそうです。案内をして下さったのはロシア科学アカデミー地震学研究所のガリーナ・コピロヴァ(Galina Kopylova)女史で、パラトゥンカ温泉にある井戸の水位のわずかな変化と地震との関連性について調査しているそうです。

 ここに来るまでにあるアクシデントがありました。砂利道で我々のトラックを追い越した警察のパトカーが, 追い越しざまにトラックの前のバンパーに接触し軽い交通事故がおきてしまいました。
 警察はトラックを運転していた人間が悪いとばかりに罰金を払えと言ってその場で切符を切ってしまいました。そのパトカーの左後方はへこんでえぐれた形で、警官達はトランクを開けて内側からたたいて出していました。上司に怒られるのかな?その車は日本製の乗用車で、こちらはロシア製のトラックでしたがこちらのバンパーはビクともしませんでした。ロシア製は強い!日本製は何ともろいものなのか、とがっかりしてしまいました。

 取り調べの時間が長く、そのあいだに木陰でガリーナ女史のレクチャーがありました。話は余計な方向にずれてしまいましたが、このガスが出ている井戸でガリーナ女史が連れてきてくれた研究所のスタッフはいきなりマッチで火を着けタバコを吸い始めました。おいおいここは火気厳禁じゃないの?と思った矢先、そのマッチの燃えかすを先程のノズルに近づけたではありませんか。もちろんそこに火がついたのですが、なんと大胆な証明の仕方かと思いました。日本でしたらこんなことをしたら大変です。が、何とおおらかなお国柄でしょう。そこが私がこの国を好きな一因でもあるのですが。

近代設備の温泉

 ところで、近年、カムチャツカに行くと案内されるのが、先に書いた高級ホテル・レストラン付きの温水プールです。ここには入り口を入るとクローク付きの受付けカウンターがあり、そこでは大きな荷物を預けるようになっています。そのとなりには飲み物(ソフトドリンクやアルコール類)やスナックを売っているコーナーがあり、そこから男女の更衣室が別れています。更衣室には鍵付きのロッカーがあり日本で銭湯に入るように皆輪ゴム付きの鍵を腕にはめてプールに入っています。時間貸しもできるきれいな個室のサウナも併設されています。更衣室の床がぬれると随時清掃の方が床の水をきれいに拭き取っており、他のロシアの施設では見ることができない至れり尽くせりのサービスがされています。

 更衣室を出るとそこはもう外で、体を暖めるジャグジーがありこの施設の隣りにある大きな湖が見渡せます。ジャグジーは板の壁でプールと区切られていますが、その板壁の所にあるドアを抜けると、どこにでもあるような25mのプールがあり、深いところは2m位でその反対側は非常に浅くなっています。その向こうには別の小さいプールがあり、そこにはウオータースライダーのくねくねととぐろを巻いているパイプが見え、次々にそのパイプから歓声を上げながらヒトが吐き出されて来るのが見えます。

 プールに集う人々のにぎやかさは他の施設と変わらず、また設備が整っているのは結構ではありますが、プールのぬるま湯から塩素臭がし、どこかの国の遊戯施設にいるようで落ち着きません。どうもロシアとしての風情がなくなってしまっているような気がし、少々寂しい思いをしています。

 温水プールで遊んだ後は隣の湖畔でシャシーリク(各家庭での独自の味付けをした肉を串に刺して炭で焼くバーベキュー)パーティーがあり、豪快に串に刺した大きな肉をほおばる時には、周りの自然と相まってロシアに来たな!と実感する一時です。

 

 

パラトゥンカ 温泉の科学にふれる

 このパラトゥンカ温泉の広さは約 690 km2、総湧出量は最大 780 litter / sec で、広大なロシア全土の温泉の中で、有数の湧出量を誇っている温泉です。チュダエフ (Oleg V. Chudaev, 1997, 2000) 氏らの長年の研究により、その源泉は基本的に上部パラトゥンカ (Upper Paratunka) 群 、中部パラトゥンカ (Middle Paratunka) 群、下部パラトゥンカ (Lower Paratunka) 群、 カリムシナ(Karymshina) 群の4グループに分類されています。全体的にパラトゥンカ温泉の温泉水は中性からアルカリ性の温泉であり、 Na や SO4 が多く含まれています。 下部パラトゥンカ群においては高温泉が多く存在し、パラトゥンカの源泉の中でも最高温度の温泉はこの群に属しています。また温泉の湧出に伴って産出するガスは、メタンガスを主成分とする天然ガスであるということも報告されています。先に述べたように我々はそのガスに点火し燃焼性のガスであることを確かめました。また、温泉ガス中のHe の同位体比の研究により火山のマグマ溜まりが非常に浅いことを意味する結果が学術的に非常に興味深い温泉であることもわかっています。

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