東京湾海藻日誌

東京湾の海藻(1)

2.カイガラアマノリとのであい

カイガラアマノリ 三浦昭雄先生の話では、1968年頃の東京湾での養殖海苔はアサクサノリ(Porphyra tenera Kjellman)にかわってスサビノリ(Porphyra yezoensis Ueda)が使われていた。久々田や鷺沼でも海苔の種網は福島県の小松浦から取り寄せた海苔網を使っていたのだが、主流はアサクサノリということだったが、スサビノリである可能性が高いそうである。

 筆者が津田沼の海で採集したノリは細長く薄いノリであった。その薄い海苔に混じって、厚ぼったく、大きく、真っ赤なノリが採れた。北海道の東岸で採れるベニタサによく似たノリであった。
 しかし、体は一層で、ベニタサとは異なるものであった。漁師達はこのノリが入ると漉き海苔としては色ツヤが悪くなり、味も良くないと言っていた。当時、筆者にはこのノリの名前はわからなかったのだが、これが実はカイガラアマノリであったのである。
 片田(1989)によると、カイガラアマノリは江戸の頃から東京湾に生育していたノリで、養殖が行われるようになる前のノリのほとんどがこの赤い海苔であったそうである。カイガラアマノリが記載されたのは1961年のことである。当時東京水産大学の助手であった三浦昭雄先生が羽田空港近くの海岸で、潮間帯の最下部に出現し、貝殻上に生育していたノリを研究したところ、このノリは貝殻に生育しているコンコセリスから生じた1列の細胞が成長して膜状のノリの体になるという特徴をもつことを発見してカイガラアマノリ(Porphyra teniupedalis Miura)と新種記載したものである。

3.カイガラアマノリとの再会

 千葉市役所、千葉県立美術館、千葉ポートタワー、千葉みなと駅のある千葉市中央区中央港の一画は東京湾の最も奥にあたる。かつては遠浅の海岸であったが埋め立てによって作られた所である。海に面した部分は千葉中央港で大型船が頻繁に出入港している。かつての遠浅の海の面影もない。

 しかし、ここに千葉ポートタワーという観光施設が作られ、付近は海浜公園として整備され、人工砂浜が作られた。ここの砂浜は、検見川、稲毛、幕張にそれぞれ作られた人工の砂浜よりはずっとなだらかで、大きな波が押し寄せないようにテトラポットで囲われてもいるので少し遠浅である。

 1996年1月26日に千葉みなと駅前にあるコダックラボにスライドフィルムの現像を頼み、現像までの2時間を千葉ポートタワーの下にある駐車場で待つことにした。夕方のことで、あたりは薄暗くなりつつあったのだが、一人でポートタワーの下の海岸に下りてみた。そこにはアオサがたくさん打ち上げられていたが、それに混じって赤い大きなノリがたくさん打ち上げられていた。

 以来、同初で10回の採集を行いたくさんのカイガラアマノリを採集して、100枚ほどの押し葉を作成した。また、カイガラアマノリの生育帯位はショウジョウケノリの生育帯の下位であること、また、もっと深所のアサリやバカガイの貝殻に生育していることも観察した。1〜3月には笹葉状であったが、3月半ばから4月のものの中には丸く大きく成長したものが見えるようになってきたし、4月には縮みの入ったものが見られるようになってきた。そして4月に入ったら急激に採集できる数が減少してしまった。これらの押し葉をもとに成長の様子をとって見ようと思っている。

 

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