01-ダルスの四分胞子嚢

ダルス
Palmaria mollis (Setchell et Gardner) van der Meer et Bird
(わが国ではPalmaria palmetta (J.V. Lamouroux) Kuntzeとよばれているもの)
紅藻 ダルス目 ダルス科
採集地:岩手県下閉伊郡山田町織笠港内
採集日:2004年

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紅藻の生活環は基本的に配偶体、果胞子体、四分胞子体の3世代が規則正しく交代する。磯を歩き回って見ると、ダルスは高さ30cmをこえる雄性配偶体と、同じ形で同じ大きさの四分胞子体とが採集できる。しかし、このような大きさの雌性配偶体は見つからない。そこで、この四分胞子を採って培養したところ、直径2oほどの盤状体になった。雄性配偶体はこの盤状体から直立枝を生じて直ちに上方に成長して精子を形成した。ところが、盤状体のあるものは表面に多数の毛を生じだけでした。顕微鏡でよく観察するとこの毛は雌性生殖器官の受精毛だったのである。巨視的な雄性配偶体に対して、雌性配偶体は微視的すなわち小さなものだった。この海藻の不思議さはそれだけではない。受精毛に精子が付着して受精が行われると、ダルスの受精卵から四分胞子体が成長してきた。本来受精して生じた接合子からはゴニモブラストとよばれる細胞を生じてこれが果胞子体に発達する。果胞子体からは果胞子を生じる。この果胞子が発芽して四分胞子体に成長する。しかし、ダルスでは果胞子体を形成することなく、接合子から直接四分胞子体が成長してくるのである。本図は四分胞子体の切片で、皮層のある細胞から四分胞子嚢を形成していることを見てほしい。

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