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東邦大学名誉教授
相川 厚

 | TOP | 腎不全とは | 小児腎移植への挑戦 | 腎センター | QandA |  最終更新日:2005.4.11

腎不全とはなにか

 

腎不全とはなにか

 腎臓は血液の中の老廃物を尿としてこし出すところです。

 腎臓が悪くなると(腎不全)尿が出なくなり、尿毒素がたまって尿毒症になります。それだけでなくホルモン(エリスロポエチン)が腎臓から出なくなるため貧血になります。

 またビタミンDが活性化されず骨が弱くなります。このように腎不全になるとさまざまな症状がでてきます。

原因、症状と影響

【原因】

 小児腎不全の原因は半数が腎臓や尿路の先天奇形によるものです。

 遺伝に関係あるものは少なく、御両親の問題ではないことがほとんどです。その次に糸球体腎炎(IgA腎症、巣状糸球体硬化症など)があります。

【症状と影響】

 症状としては体重の増加むくみ(浮腫)、尿量の減少貧血食欲低下けいれん骨の変形成長の遅れ(低身長)、第2次性徴の遅れ(男らしく、女らしくならない)があります。 小児では腹膜透析を行いますが、学校生活や課外授業に対応がむずかしく、友達づきあいから社会性を学ぶことまで遅れがちです。このハンディキャップは成人になって取り返そうと思ってもなかなかむずかしいのが現状です。

腎不全の国際比較と国内状況

 海外の小児腎不全患者は透析期間が短く、すぐに腎移植をするのが当たり前になっています。最近ではプリエンプティブ移植(透析に入る前に腎移植をする)が成績が良いためさかんに行われています。

 わが国では移植への理解が十分ではない小児科医が未だに多く、長期間腹膜透析につながれたままになっている患児が大勢います。

 ちなみにわが国の透析患者さんは総数で約23万人おり(ヨーロッパ全土の透析患者数と同じ)、透析・人口比は世界1位で、年々増加傾向にあるため、数年で総数でも米国を抜くとも言われています。

腎不全の治療

透析

 慢性腎不全になると維持療法である透析をまず行わなければ患者さんは死んでしまいます。

 透析は血液透析と腹膜透析の2種類ありますが、小児では体が小さいため多くの血液が体外循環される血液透析は不向きで普通は腹膜透析を行っています。

 腹膜透析は最近夜間寝ている間に行う方法(NPD)が盛んに行われています。しかし長期に及ぶと腹膜の機能が低下して、硬化性腹膜炎になり、このため死亡することも多く報告されています。

 またトンネル感染や細菌性腹膜炎、骨障害、貧血、背が伸びない、水がひけなくなるために心不全を起こしたりします。いづれにしても子供らしい生活が送れなくなります。

移植

 腎移植は免疫抑制剤の副作用、拒絶反応や感染症などさまざまな問題はいまだありますが、どの年代でも透析よりも生存率が高く、成功すれば(特に小児における成功率は高い)前述の問題はほとんど解決してしまいます。

 現在ある腎不全の治療として生活の質を考えれば、透析よりはるかに優れたものと言えるでしょう。

移植が透析よりすぐれている点は

【患者さんの意見より】

  1. 針をさされない(血液透析)。
  2. お風呂に自由に入れる。プールや海で泳げる。(腹膜透析)
  3. 食事の制限が少ない。
  4. 子供を生める(女性)。透析で出産は困難である。
  5. 旅行にいける。 6. かゆみがなくなる。
  6. 疲れがとれる。
  7. 汗をかくようになる。透析すると乾燥して汗をかかない。
  8. 食事の味がよくわかる。
  9. 自由な時間を使える。

【小児の場合】

  1. 背が伸びる
  2. 男らしく、女らしくなる。
  3. 学校の勉強ができる。
  4. 余暇を友達と楽しめる(臨海学校、林間学校、修学旅行、体育の授業に参加できる)

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