キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達(冬のすがた)

正門から体育館前

東邦大学理学部習志野キャンパスの正門の両脇に、直径1mほどのマツ科のヒマラヤスギCedrus deodara (Roxb.) G. Don in Loud. の大きな木があります。これら2本のヒマラヤスギは雄の木です。いつも下から見上げるばかりです。腕を伸ばして太めの枝をつかんで下に引っぱってください。枝の上部には小指ほどの灰色がかった緑色の雄の花が見られます。すでに、落下しているものがたくさんありますから拾って見てください。

  

ヒマラヤスギの下にクスノキ科のゲッケイジュ(月桂樹)Laurus nobilis L.があります。常緑で、葉は濃い緑色で、茎も、幹も緑色です。枝先、30cmほどをよく観察してください。枝の先端部分に芽があります。枝の頂に生じる芽を頂芽とよびます。頂芽によりそってある小さな芽を側芽とよびます。側芽は頂芽よりも小さく、葉腋に1個生じるのがふつうです。冬の寒い期間にわたって成長点を保護する芽を冬芽winter budとよびます。 冬芽は長さ3oほどの爪の先を切ったような葉に守られています。このような芽のことを芽鱗とよび、この葉を鱗片葉と言います。木の葉はその下にあるような大きな葉には成長しません。春になって芽が成長をはじめると鱗片葉は落ちてしまいます。枝の先から10cmほど下の部分を見てください。 茎に二筋の輪が見られます。これが、鱗片葉があった痕跡で芽鱗痕と言います。すなわち、この枝は、この春に10cm成長したことになります。この枝のことを一年生枝といい、この枝が木の頂にあれば頂生一年生枝とよびます。 さらに鱗片葉の痕跡部分から下に10cmほど下にも同じ鱗片葉の痕跡を見つけることができます。頂芽から下10cmは今年成長した一年生枝ですそこからさらに10cmの枝は一昨年に生長した二年生枝ということができます。このようにたどると、枝の生長は、木の勢いや、気候によって成長の度合いが異なるので、長さ1mの枝はおおよそ10〜15年かけて成長してきたことが読み取れます。

 

さて、今年のびた枝についている葉の数は7〜8枚と数えることができます。葉の腋から小枝を生じ、小枝は短い間隔で二叉に分枝して先端に直径3oほどの緑玉をつけています。これは、春に咲く花の芽、すなわちつぼみです。このつぼみをつけた枝の数を数えてみましょう。葉の数は7〜8枚ですが、その下に2〜3個の小枝がついています。ここには葉がついていたのですが、早い時期に落ちてしまったものです。 そうすると、ことしはこの枝にほぼ10枚の葉がついていたことが読み取れます。一昨年の枝には、つぼみは見られません。月桂樹の花は、昨年の伸びた枝にのみ花をつけるのです。 成長して葉と茎となる芽を葉芽Leaf bud、花を生じる芽を花芽flower budといいます。

  

ヒマラヤスギの裏側に、コブシがあります。高さ10mをこえ、春には桜に先駆けて林のへりで真っ白いはなを樹いっぱいにつけています。里山にはなくてはならない春を告げる木です。枝の刈り込みにも強い木です。昨年春に坊主状態に刈り込まれてしまったのですが、たくさんの細い枝を出して、その枝先に白い毛皮のコートを着た頂芽が見られます。 さあ、1年生枝を見てみましょう。頂芽は黄色を帯びた灰色の絹毛に覆われています。この大きくふくらんだ冬芽は花芽です。手のとどく枝を下げて、枝先から30cmの間を、ゲッケイジュにならって観察してください。大きくふくらんだ芽は枝の先のみにあります。下の方にある芽は小さいものばかりです。 その小さな芽のある基部を見ると、半月形の葉がついていた痕跡が見られます。枝は葉の腋に生じるのが原則です。

 
コブシ

ツバキ科のモッコクTernstroemia gymnanthera (Wight et Arn.) Bedd.と、モチノキ科のモチノキIlex integra Thungberg があります。 両種ともに常緑樹です。葉が密についているだけでなく、枝も密生しているので1本の木でもうっそうとしています。モッコクは、暖地の海岸に近い所に自生し、高さ5〜7mになります。枝の先端を見ると、枝の先端がふくらみ、そこに5〜7枚の葉が、互いに重なり合わないように放射状に展開しています。枝の上部ほど葉を生じる間隔がつまっています。芽は枝に成長しますから、1ヶ所からたくさんの枝を生じることになります。 枝を見ると、モッコクのように一年生枝は詰まったところから生じています。1年生の枝を見ると、モッコクほどに葉が上部に集合しておらず、基部の葉も残っています。1年生枝のほぼ中央部の葉の腋から直径7oほどの果実を4〜8個生じています。果実は熟すと赤くなります。

  

ヒマラヤスギの下にバラ科のウメの木があります。いつもヒマラヤスギの樹蔭になっているのですが、毎年白い花をつけています。 赤く小さな丸にふくらんでいるのは花芽です。

下のオオムラサキRhododendron oomurasaki Makinoは常緑のツツジ科の仲間です。秋の終わりに下の葉が紅葉します。

オオムラサキ

掲示板の裏側に、ミズキ科のミズキCornus controversa Hemsl.を植え込んであります。メデイアセンターの裏側から移植したものです。 移植した時に、根元から1.5mほどのところが傷つき、回復しないままに材部が腐食しています。また、移植時に頂の枝が伐られたのですが、その後元気に成長して上に上にのびています。成長とともに空洞になってしまう可能性があります。 成長すると高さ20mにもなる高木です。枝は、規則的に放射状に出て、階段状になります。その様子を棚をつくると言います。さあ、何段の棚ができているでしょうか。従って、小枝は水平に展開します。小枝はつやのある赤紫色です。頂芽の下の側芽の成長がよく、次々と側芽が成長してゆくので、枝は全体的にジグザグ状になります。

体育館の前に、マツ科のクロマツPinus thunbergii Parl.があります。毎年刈り込まれるので大きくはありませんが、相当の年齢に達しているものと思っています。木肌が黒いことからクロマツと呼ばれています。 一見して、葉の量が多いと思いませんか。クロマツは、マツ科の中でも葉の数の多い種です。2本の細く長い葉が根元で膜状のさやで一つに束ねられています。枝の頂に黄褐色の薄い膜でおおわれた新芽が伸びています。ここに来年春にのびる枝と葉が隠されています。この枝の基部に1cmほどの小さなナツカサが見られます。これは今年の春に咲いた雌の花です。 枝の下をたどると、今年のびた枝の基部に3〜5cmほどのマツカサがあります。これは昨年の花です。クロマツは、花の咲いた後、3年ほどかけて種子をみのらせます。来年の春に咲く雄花は黄色くのびた新しい枝の基部に、赤く小さな塊になって見えています。雌花は先端部分にまだ若い状態でかくれています。

クロマツ

 

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