キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授 吉崎 誠

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花壇の植物達

理学部保温室前の花壇

オニグルミ Juglans mandshurica Maxim. var. sachalinensis (Miyabe et Kudo) Kitamura クルミ科

  キャンパスの中には、オニグルミ、サワグルミ、ヒメグルミ、ヤマグルミ、カシグルミとペカンといったクルミ科の仲間が生えていました。結局生き延びているのはオニグルミ、ヒメグルミとカシグルミだけです。オニグルミはここと、女子寮の前にあるものと、部室の裏にあるものだけです。カシグルミは、東邦会館の前と、理学部V号館のまえにある高さ1mほどのものだけになってしまいました。ここのオニグルミは、夏には大きな葉を拡げて花壇に大きな日陰を作ってしまいます。そのために、毎年のように伸びた枝が切られてしまいます。
  オニグルミの根元にある細長い葉をもち、4月5月に青紫色の花を円錐状につけるのはシラーです。ここには、種子植物植物分類学で用いる教材としてグラジオラスを植えてあります。

グラジオラス Gladiolus アヤメ科

  グラジオラスは、18世紀半ば頃に東インド会社がアフリカ産のグラジオラスをヨーロッパに持ち込んで品種改良したものだそうです。わが国でも愛好家が多く、毎年のように新品種が発表されて美しい花が楽しめます。グラジオラスはアヤメ科の植物です。しかし、アヤメやカキツバタのような花とは随分と異なっています。植え込んだ球形から大球で3本、ふつうは1本の分枝しない剣状の葉茎がのびてきます。スラリとした葉が基部で重なり合い、その真ん中から花茎がのびてきます。花は軸に交互に、しかしほぼ同じ向きに並んで、下から上に向かって咲いてゆきます。1本に10〜20個の花をつけますからほぼ1ヶ月は咲き続けます。あまりたくさんの花が咲くと、重さで倒れてしまうことがあります。

ヤグルマギク(ヤグルマソウ) Centaurea cyanus L . キク科

  種小名のcyanusは藍色のという意味です。花色は花としては珍しい藍色です。古代エジプトではすでに栽培されてツタンカーメンの棺の中に入っていたことは有名ですね。ここのヤグルマギクは一重咲きで花数も少なく、原種に近い風情のある花です。藍色の筒形の舌状花が開いた様子が、端午の節句にたてる鯉のぼりの頂きにカラカラと回る矢車ににているというのでこの名がついたものです。全草に白い綿毛に覆われた耐寒性の強い1年草です。ここに生えているものも、昨年落ちた種子から芽生えたもので、7月から9月まで可憐な花が咲き続けます。

サルビア Salvia シソ科

  サルビアというと、Salvia splendensの赤い花を思い浮かべるにちがいありません。ブラジル原産でリオのカーニバルを思い起こすような情熱的な真っ赤な花からヒゴロモソウといいます。7月頃から秋まで花が咲き、花が咲き終わっても真っ赤な萼がそのまま残って冬が来るまで赤い、原産地では高さ1mにもなる多年草だということから、温室で管理すると何年も生き続けます。このようにサルビアの名前はこのヒゴロモソウのイメージが強いのです。しかし、今世紀はブルーサルビアの時代です。Salvia farinaceaは北米原産の青色のサルビアで、ここには2種のブルーサルビアが植えられています。ピタゴラス通りの自然亭の向かいの空き地にも毎年ブルーサルビアが咲いていますよ。

栽培種のアジサイ アジサイ科

日本には春と秋に雨期があります。春の雨期を「梅雨」といいます。秋の雨期は「秋の長雨」といいます。梅雨のうっとうしい時期に、さわやかな藍色の花を見せてくれるのがアジサイです。ガクアジサイは小さな花が密集した中央花と、その周辺をかざる飾り花とからなります。中央花を飾り花に増やしたのがアジサイです。アジサイの花の間をかき分けて見ると、小さな中央花の名残を見つけることができます。中央花は種子をみのらせることができるのですが、飾り花は萼が大きくなったもので生殖能力はありません。従ってアジサイは株分けによって増やします。アジサイは毎年のように新品種を発表しています。奥のほうにあるのが最近の品種で墨田の花火、隅田川の花火にたとえた優良種です。手前はとっても古くから知られた八重のアジサイです。アジサイの仲間は、咲き終わると花が反転し、やがて青い色を失って緑色になってしまいます。この八重のアジサイも例外なく夏の終わりには花がすべて反転します。どのような八重なのか、どのように反転するのかよく観察してください。

 ここにも馬の水飲みがあります。これには毎年ウキクサが出現します。

キングサリ Laburnum anagyroides Medik . マメ科

  マメ科の低木です。初夏にフランス、ドイツを訪れた人達は高さ5〜7mほどでの低木で、長さ20〜30cmの黄色い藤の花が下がったような木を見てきたことでしょう。ゴルデン・チェーンとよばれるキングサリのことです。日当たりの良い水はけのよい所を好みます。こんな薄暗い所にと思うでしょうが、かつてここはとても日当たりのよい所でした。目の前のイヌシデが成長し、さらにミツバアケビの成長もよいのでここはすっかり薄暗くなってしまったのです。今年は花付きもよくなかったですね。

アカフサスグリ Ribus rubrum L . スグリ科

 アカフサスグリはRibus rubrumと言います。属名のRibusは酸っぱいという意味です。種小名のrubrumは赤いという意味があります。和名の酸塊(スグリ)も酸っぱいを意味しています。赤い果実を房にしてつけるアカフサスグリの果実は見た目にはとても甘そうで、じつはとても酸っぱいものです。これをつんでビンに入れて、お砂糖をたっぷりいれたジュースはとてもおいしいものです。関東ではあまりお目にかかりませんが、東北地方から北海道には草色の果実をつける野生のスグリがあって、ちょっと紫色がついた頃、あまくなりとてもおいしい。グースベリーは、スグリの仲間の果実のことをいいます。

イヌキクイモ Helianthus strumosus L . キク科

  ここには、毎年のように直径30cmにもなるようなヒマワリ(Helianthus annuus L.)を植えていたものでした。毎年、たくさんの種子がみのり、ほじって食べたものでした。しかし、最後はかならず誰かに持って行かれてしまうのです。そこで、同じ属のキクイモ(Hekianthus tuberosus L.)と、イヌキクイモとを植えました。今は、イヌキクイモだけが残っています。キクイモも、イヌキクイモも北米から移入された植物で、塊茎に果糖とイヌリンを多量に含み、アルコールや飴の原料にされた。全国に分散して野生化しているものです。秋に掘ると親指ほどの塊茎がたくさんとます。

フランスギク Chrysanthumum leucanthemum L . キク科

 5月、6月に花壇に白いキクの仲間の代表的な花を開く。丈夫で、繁殖力が強く、世界各国に帰化している、もはや野生の花と言ってもいいかもしれない。植物分類学、種子植物分類学いずれの講義でも、キク科の代表手としてかならず登場し、頭状花、管状花、舌状花、集葯雄蘂を観察したものである。しかし、フランスギクがこの花壇に定着するまでには、長い長い悲しい歴史があるのです。畑のまわりや道端に好んで生育し、野草然としていることから、ここに植えると必ず誰かに抜かれたのである。さらに、2004年にはわざわざ岩手県から移植し、冬に適当なロゼットを形成したのに、これを根こそぎ円盤式の草刈り機で刈ってしまった人がいる。2005年改めて岩手県から移植したのだが、さらに、なぜか、花壇の真ん中の株だけが抜かれてしまった。今年になってようやく安定した群落を形成してくれている。雑草然とした部分のある花壇ではあるが、この雑然とした所こそ教材としては優秀な材料ばかりなのである。

モモイロタンポポ (学名は調査中) キク科

  モモイロのタンポポに似ていることからモモイロタンポポといいます。同じ仲間に黄色いものもあるそうです。花はタンポポほどの大きさで、花弁の色は桃色です。タンポポと同じように綿毛を開き、風によって飛んで行きます。


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