キャンパスの植物たち

東邦大学名誉教授  吉崎 誠

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キャンパスの植物達

正門付近

東邦大学の校門に向かうと、左右に太いヒマラヤスギが植えられています。高さ20mをこえ、幹は直径1mにちょっと足りません。が、大きなものは高さ50mに達し、直径2mをこえるそうです。枝は水平にはり、小枝は垂れる。樹の下には、高さ3〜5cm、直径1cmほどの褐色の指のようなものがたくさん落ちています。これはヒマラヤスギの雄の花です。左右の2本ともが雄の木です。ヒマラヤスギはスギの名がついていますが、マツ科モミ亜科の仲間です。花を球果とよび、いわゆる「松毬(マツカサ)」状です。花粉を放出したヒマラヤスギの球果は落ちて道にころがり、やがてバラバラになってしまいます。花は秋に咲きます。10月頃この樹の下はヒマラヤスギの花粉で見事に黄色く染まります。下から見上げると花が咲いているとは思えないのですが、秋に枝を下げて上から見ると、たくさんの灰青色の球果が開いて見事なものです。

 校門に向かって右側のフェンス沿いにニシキギ科のマサキが垣根として植えられています。フェンス内に木を植えると、ここに空き缶やビニール袋を捨てる人がいるので、いっそここには垣根がない方が良いという人もいますが、マサキは元気です。常緑性の低木で、葉は対生し、厚くつやのある葉のへりにわずかにきょ歯があります。

 花は6月頃に咲き、分類学実習の終わる頃に熟して、3〜4裂して黄赤色の仮種皮をもつ種子を4個生じます。高さ4mほどになる低木で、年中緑色で、梅雨時にうどんこ病が発生するのが難点ですが、刈り込みにも乾燥にも強いことから垣根の適樹です。

 上を見上げると、高く太い幹でありながら枝を伐採され、幹から細い枝をたくさんだしている樹があります。細い枝についた葉は短い柄があり、倒卵形〜広倒卵形で、縁は丸くきょ歯はなく、先端がキュッと尖っています。春早くまだサクラの花が咲く前に、にぎりこぶしほどもある真っ白い花をたくさんつけた樹です。モクレン科のコブシです。夏休みの終わり頃に太さ1p、長さ10pほどのねじれた小枝に果実が熟し、裂開して赤い種子が白色の糸で垂れ下がります。赤い果実は鳥に好まれ、大きな種子は山野にばらまかれます。わが国の山野に生える落葉性の高木で、高さ10〜20m、太さ1mをこす大樹になります。

 校門を入ると、小さなロータリーになっています。ロータリーの中に枝のひねくれた赤い幹のマツがあります。マツ科アカマツの品種のタギョウショウ(多行松)です。高さ5mほどにしかならず、横に枝を広げることから庭木とされて珍重されています。気品あると、日本軍の建物周辺に好んで植えられたものです。かつては、済生会病院の前から、大久保4丁目のバス停まで、軍の建物がならんでいました。済生会病院の建っている所には衛戌病院、東邦大学習志野キャンパスのあるところは騎兵13聯隊、日大生産工学部のあるところは騎兵14聯隊、東邦大学附属高等学校のあるところには騎兵15聯隊、大久保4丁目にかけては騎兵16聯隊がありました。現在の「大学通り」は、このように聯隊が並ぶ「軍隊通り」であったのです。多行松は「軍隊通り」の道路にそって植えられていましたが、その後切り倒されたり、持ち去られて大久保界隈で生き残っているのはここだけとなってしまいました。

 下に丸く刈り込まれているのはヒノキ科のタマイブキです。根本から多数分枝して自然に球形となる性質があることから庭木として好まれています。よく見ると、枝には鱗状の葉が密生したヒノキのような葉にまじって、鋭くとがったスギの葉からなる枝とがあります。これがこの植物の特徴です。タマイブキビャクシンの品種です。

 校門の右側に掲示板があります。掲示板の周辺にはキク科のセイヨウタンポポが大きな群落を形成しています。ここはほとんどセイヨウタンポポしか生育できない所なのです。大学の入口ですからいつも芝刈機や、草刈機で刈り込まれる所です。セイヨウタンポポは葉で生じた栄養分を直ちに地下の直根にためこみます。地上部が刈り込まれても、地下の根に貯めた養分を使って直ちに葉を生じることができるのです。いつも人の手が入って、遷移の進行が妨げられている所に好んで生育する植物を人里植物(ヒトザトショクブツ)とよびます。セイヨウタンポポは裸地などにいち早く入り込んで生育する分布のさきがけ植物で、しかも人との関わりと切り離せない植物なのです。

☆遷移とは

草原に陽樹が入り込み陽樹林ができる。陽樹林に陰樹が入り込んで陰樹林の森ができてやがては安定した極相林ができる。一次遷移、二次遷移、乾性遷移、湿性遷移など勉強しておいてください。遷移は生態学の基礎ですよ。

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▲マサキ

▲コブシ

▲アカマツ(タギョウショウ)

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