白井市環境調査−4− 鳥類調査例
東邦大学東京湾生態系研究センター
1.ホオジロ・ウグイス
2005年3月26日
ホオジロ・ウグイスの個体数推定
ホオジロ、ウグイスは繁殖期になわばりを持ち行動範囲が限定され、特徴的な囀りを頻繁に行う。これらの種は繁殖期の限られた期間で、なわばり記図法により比較的容易に個体数推定が可能であると考えられる。
|
|
- 調査期間 4月−6月くらい
- 調査時期 日の出から2・3時間
- 調査回数 10回以上
- 調査地
- 平成16年度の調査により谷田地区および木地区では出現場所がある程度わかっているため、いずれかの地区を対象にすると調査しやすい(別紙地図参照)。
- 調査に必要な物
- データの取り方(なわばり記図法)
→調査ルートを設定し鳥の出現地点を出現順に番号で地図上に記図する。
- 飛び去った方向
- さえずり合う個体同士を線で結び、線上に”×(バツ印)”をつける
- 争いの場所やその後の飛去方向
→同時に記録用紙に番号順に出現状況を具体的に記載する。
- 確認方法(目視・さえずり・地鳴き)
- 雌雄(目視確認の場合)
- 出現環境
- 行動(さえずり合いや争いなど、なわばりを決定するのに有効な行動を重点的に記録する)
- その他気づいたこと
- まとめ方
- 調査1回分の記録を同一番号あるいは同一色として、一枚の地図に全記録を転写。
- ある範囲に4回程度の記録があればなわばりの存在を認定。
- 各なわばりの範囲を地図上に”○(マル印)”で囲んで示す。
- なわばり数を2倍し個体数とする(繁殖に参加せず単独でなわばりを持っていることが明らかな個体がいた場合は2倍しない)。
- その他
- 対象とした調査エリアを一日で回りきれない場合は何日かに分けて調査しても良い。
- センサス回数は多い程良いがあまり長期にわたるとなわばりの移動や消滅が起き、かえってなわばり数がわかりにくくなる。
- 慣れれば複数の鳥種を一度に調査することも可能。
白井市環境調査 ホオジロ・ウグイス調査票(90kb)
▲ページトップへ
2.ヒバリ
2005年4月17日
ヒバリの草地利用状況
白井市内に数多く点在する草地は白井市を特徴づける景観の一つといえる。二次草原はその由来や利用状況、管理形態などにより植物の生育状況が異なり、それが動物の生息状況にも影響を及ぼすと予想される。
ヒバリは草地を主な生息場として利用し、繁殖期になわばり内で特徴的なさえずりを行うため確認が容易な鳥類である。それぞれの草地の状態とヒバリの生息状況との関連を調査することにより、白井市内でどのような草地を保全していくべきか考えるための有効な情報が得られる可能性がある。
- 調査期間 4月−6月
- 調査時期 日の出から2・3時間
- 調査回数 2−3回
- 調査地 白井市内の草地
- 調査に必要な物
- 双眼鏡
- 地図
- 記録用紙
- クリップボード
- 筆記用具
- 時計
- データの取り方(なわばり記図法)
- 見晴らしの良い場所を選定し30分−1時間程度定点観察を行い、出現地点を出現順に番号で地図上に記図する。飛翔していた場合は飛翔経路を”→(矢印)”で記図する。
→草地の状態を記録する
- 面積(地図から算出)
- 高草、低草の分布を大まかに地図上に記録
- 周辺環境(市街地、畑と樹林など)
- 利用状況、管理形態などわかる範囲で記録
- その他気づいたことを記録
- まとめ方
- ヒバリは一夫一妻の繁殖様式を持つことから、草地内でさえずっていたヒバリ(雄)の数を2倍して個体数とする。
- 草地の状態とヒバリの生息状況との関連性を考察する。
- その他
- 草地の規模が大きく一度に見渡せない場合は、いくつかのエリアに分割してエリア毎に調査を行う。または数名で各エリアを同時に観察し、後で各自のデータを持ち寄り個体数の推定を行う。
白井市環境調査 ヒバリ調査票(64kb)
▲ページトップへ
3.オナガ
2005年4月17日
オナガの群行動の追跡調査
オナガは果樹園や農耕地のある集落、樹木の多い市街地に棲息し、白井市の平均的な環境を特に好む傾向のある鳥類である。オナガは数羽から数十羽の群で生活しており、白井市内でも群で移動する姿をよく見かけることができる。姿と鳴き声は特徴的で、見分けるのが容易な種類である。またオナガは同じ時間帯に同じルートを通ると言われている。この調査ではオナガの群を追跡し、白井市内の環境をどのように利用しているのか明らかにすることを目的とする。また生物の行動調査の一例として参考となればと思っている。
オナガ調査例−1
「一つの群の行動範囲の推定と環境をどのように利用しているかを観察する場合」
- 調査期間と調査時間
- なるべく短期間に集中して、観察時間帯を変えながら日の出から日の入りまでの一連のデータが取れるように日程と調査時間を設定する。
- 調査に必要なもの
- 双眼鏡
- 地図
- 記録用紙
- クリップボード
- 筆記用具
- 時計
- 調査方法
- オナガの群を発見したら個体数をカウント、記録しオナガの行動に影響を及ぼさないよう配慮しながら群を追いかける。
- 同時に地図上に群の移動経路を”→(矢印)”で記図し、追跡開始時間、途中の時間、追跡終了時間を記入する。
- 特記すべき行動が観察された場合その場所を地図上に番号で示し、記録用紙に詳しい行動と環境を記入する。
- 一日にできるだけ長時間追跡することが望ましいが、適宜調整する。
- まとめ方
- 地図上に記録した移動経路の全データを一枚の地図上に転記。
- 行動のデータから、環境をどのように利用しているか考察する。
- その他
- 季節的に行動範囲や群の構造(個体数など)が変化する可能性があるため、より詳しく生態を知りたい場合は季節毎に調査するとよい。
▲ページトップへ
オナガ調査例−2
「白井市内のオナガの群の分布と群の数、個体数を推定する場合」
- 調査期間
- 季節により群の状態が変化する可能性があるため(群の統合や分離)、ある季節内にできるだけ集中して数日間かけて調査地全域をまわる。
- 調査時間
- 観察は人為的な影響を受けにくい早朝の2−3時間程度が適している。
- 調査に必要なもの
- 双眼鏡
- 地図
- 記録用紙
- クリップボード
- 筆記用具
- 時計
- 調査方法
- あらかじめ決めておいたエリア内でオナガを探し、発見したら個体数をカウント、記録しオナガの行動に影響を及ぼさないよう配慮しながら群を追いかける。
- 同時に地図上に群の移動経路を”→(矢印)”で記図し、追跡開始時間、途中の時間、追跡終了時間を記入する。
- 特記すべき行動が観察された場合その場所を地図上に番号で示し、記録用紙に詳しい行動と環境を記入する。
- まとめ方
- 地図上に記録した移動経路の全データを一枚の地図に転記。
- 各群の移動経路を”○(マル印)”で囲む。
- ”○(マル印)”の数が調査地内の群数となる。
- 各群の個体数の総計から、調査地全域のオナガの個体数を推定できる。
- その他
- 季節毎に調査すれば、群構造の季節的変化を知ることができる。
- 複数の調査地で調査を行い結果を比較することで、オナガが好んで利用する環境を推測することができる。
白井市環境調査 オナガ調査票(47kb)
▲ページトップへ