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免責事項


野外生態学実習2 > 陸橋島の島嶼生態系−伊島−の実施について

担当 : 長谷川 雅美
地理生態学研究室URL:http://webbio.bio.sci.toho-u.ac.jp/lab_geoeco/geoeco.html
http://island.bio.sci.toho-u.ac.jp/geoeco/

テーマ
陸繋島の生物相とその成り立ちを陸産貝類、陸生・陸水性甲殻類、両生類相の調査に基づいて考察する

背景と目的

 伊島は徳島県と和歌山県の間に浮かぶ面積わずか1.5平方kmの小島である。この島は、かつて四国本土と地続きであったが、海面の上昇あるいは、地形の変化によって本土から切り離され島嶼化したものである。そのため、この島の生物相は、本土と地続きであった時代に住み着き、その後島嶼化が進んで面積が狭くなり、環境の多様性が減少したなかでかろうじて生き延びてきた生物によって主に構成されている。その一方で、島嶼化してから住み着き現在では島の主要な構成種となっている生物種も存在する。
  前者の代表生物として、海を渡ることのできない陸生貝類と両生類を取り上げ、後者の代表として陸生・陸水性甲殻類を取り上げる。それぞれのグループに属する生物種のファウナとその生息状況を明らかにし、陸繋島の生物相とその成り立ちについて考察する。

徳島県伊島 島北東部の大湿原

行程概略

行程
6/ 9 浜松町発、夜行バス
6/10 伊島昼着
6/11 終日調査
6/12 終日調査、とりまとめ
6/13 午後便で離島
夜行バスで東京着
徳島県 伊島

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交通手段及び運賃

  金額の目安 備考
宿泊費(1泊3食) 7,000円 x3泊
(3泊)21,000円
交通費 浜松町バスターミナル→徳島駅(バス) 8,000円 片道
(往復)16,000円
※学生割引
徳島駅→阿波橘(JR) 640円 片道
(往復)1,280円
阿波橘→伊島 2,000円 往復
(往復)2,000円
合計(標準)
40,280円

宿泊先

宿泊先

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詳細行程

日付 時間 内容
6/ 9 21:50 浜松町貿易センタービル1階 ターミナル発
6/10 6:50 徳島駅前 新降車場着
6:53 又は
9:14
徳島駅発 JR牟岐線 → 7:48 阿波橘駅着
徳島駅発 JR牟岐線 → 10:27 阿波橘駅着
9:00 又は
12:00
阿波橘答島港発 → 9:50 伊島着
阿波橘答島港発 → 12:50 伊島着
  荷物を整理して、午後島内一周:標本採集:
夕食後 セミナー(島の生物相と成り立ち)
6/11   終日 野外調査・夜間調査:標本同定
6/12   終日 野外調査・標本同定・データの取りまとめと標本整理
6/13 午前 荷造り
14:30 伊島発
21:50 徳島駅発 夜行バス
6/14 6:35 浜松町バスターミナル着
レポートの締切り 7月末日

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実習の準備行程

日付 時間 内容
5/13 12:30 理学部1号館3階セミナー室で第一回打ち合わせ
実習内容の説明と、テーマによる班分け
5/14-6/2   準備(随時相談)
6/3 午後 実習道具のパッキングと宅配便による送付
6/9 21:00 浜松町バスターミナル集合、実習開始
6/14 6:35 浜松町バスターミナル着、解散
7/1-   実習室にて、未同定標本の同定作業

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実習テーマの詳細説明

ヤマナメクジ1.陸生貝類

  • 伊島産陸生貝類目録の作成
  • 多産種の生態調査:微生息場所の記載、個体群構成

アカテガニ2.陸生・陸水性甲殻類

  • 等脚類・端脚類相の解明
  • エビ・カニ類相の解明:島の淡水環境を網羅的に調べ、各水域に生息する甲殻類の種類構成を明らかにする。特に渓流に生息する回遊性のエビ類に注目する。

ニホンヒキガエル3.両生類

  • 種別の分布調査:伊島に生息する両生類は、カエル類3種、有尾類2種+とあまり豊ではないが、非常に大型化したヒキガエルが生息すること、小型サンショウウオが生息することなど、島嶼としては非常に特異な生物相を示している。小さな島であるにもかかわらず、放棄された水田跡地の広大な湿地、渓流、水路、ため池など多様な水域が存在する。そこで、それぞれの両生類がどのような微環境を利用して生息しているのかを、野外調査によって明らかにする。夜行性の種類が多いので、夜間調査が主になる。

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個人装備

デイパック/水筒/雨具(安物はさける/今後とも野外調査を手がけるつもりであれば/この際多少高価でも丈夫で長持ちするものを購入することを進める)/折りたたみ式傘/帽子/タオル/軍手/長袖シャツ/運動靴/個人常備薬/ ビニール袋/ コンパス(方位磁石)/ 筆記用具/ 虫除け(蚊が非常に多い)/ かゆみ止め/ 健康保険証(写し)/ 最低限の文房具/ 水に入る場合には長靴

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調査用具(個人で用意するもの)

ヘッドランプと懐中電灯(なければ、どちらか1つ、両方あると便利)/ 野帳/ デジタルカメラ

事前の準備

  • 伊島についての下調べ
  • 対象生物の検索・同定資料の入手
  • 調査計画の立案
  • 島の生物相についての学習

四国本島から望む伊島

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レポートの構成と仕様書

レポートの構成(A4版)

  1. 表紙
  2. 目次
  3. 序言
  4. 調査地
  5. 調査方法(各班毎に記述する)
  6. 結果
  7. 考察

1.表紙

表紙1枚にレポートのタイトル(日本語と英語)、学生番号 氏名、所属をセンタリングして記入する。タイトルは、調べた内容、明らかになったこと、を端的に表現するものでなれればならない。

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2.目次

レポートの構成を1ページ以内にまとめ、目次として示す。

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3.序言

下記、1から6の項目をそれぞれ100−200字以内にまとめ、レポートの導入を全体で500−800字程度にまとめる。

  1. どんなことに興味をもって、伊島の実習に参加したのか?
  2. 伊島の生物や生態系に対して、どんな興味、関心をもったのか?
  3. なぜ、そのような興味、関心をもったのか、その背景を述べる。
  4. 調査対象に関して、これまでにどのようなことが明らかにされているのか、または明らかにされていないのか、可能な限り詳しく調べて、要領よくまとめる(先行研究のレビュー、自分で勉強して分かったこと)。
  5. 具体的にどのようなことを行い、どんなことがわかったのか述べる。
  6. 調査によって明らかになったことに、生物学的にどんな意義があると考えられるか述べる。

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4.調査地

 先ずはじめに、調査地とした、伊島の地理的位置(緯度、経度及び地形、面積、標高など)、地質、気候・気象、人口等の社会学的情報について、調査内容を理解する上で必要な最低限の情報を整理する。調査対象によって、重点の置き方を変える。水域を利用する生物の場合は、池や小川の位置、大きさなどをさらに詳しく記述する。

 調査・観察を行った場所の具体的・詳細な説明は、調査方法とともに次の章で行うのが適当であるが、島の地図に、調査地の位置を示し、どんな環境で何カ所で観察・調査を行ったかを記述しておくことは必要である。もちろん、記述内容が班毎に異なるのは当然である。

 調査地を示す地図は、空間スケールに応じて使い分ける。伊島の場合、目的に応じていくつかの地図作成が必要になる。
例えば次のようなものである。

  1. 隣接した無人島を含めた伊島諸島を大きく描き、その左隅に日本における伊島の位置がわかる小縮尺の地図を挿入する。
  2. 伊島が本土からどれくらい離れているのか、伊島以外にどんな島があるのかがわかるように、本土を含めた中縮尺の地図を左隅に示す。
  3. 伊島とその中で実際に調査した調査地の位置がわかるように、大縮尺の地図を用意する。
  4. 林の内部に設置した調査枠の位置や、トラップをしかけた池の周辺地図を作成する。

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5.調査方法(各班毎に記述する)

記述の順番は、まず調査全体の流れを説明した後に、いくつかの項目に分け、詳細な方法を記述する。調査全体の流れを調査フロー、として図示する場合もある。その目的は、ある現象の存在を証明するためには、3つの観察を行った上で、その観察結果が相反するか、相互依存するか、関係ないか、を考察し、ある現象を引き起こす3つの出来事の因果関係を流れ図として、整理することに他ならない。

扱った生物の一般的な特徴について、説明する場合もあるが、その場合は、対象生物、という項目を別に設けてもよい。
 項目の並べ方は、以下のように系統だった記述をする。内容があちこちに跳んで、本人も読者も混乱することのないように気をつける。

  1. 結果で示す項目の順番
  2. 時系列(行った作業の順番に応じて)
  3. 大まかな作業から、だんだんと細かい作業へと掘り下げる

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6.結果

やった作業の順番ではなく、結論を導くのに用いた論理展開にそって、データを記述する。

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7.考察

まずは、得られた結果を100字程度に要約して示すこと。
その上で、

  1. 得られた結果(データ)の信頼性を揺るがす問題点の整理
  2. 結果をもとに、はじめに提示した疑問に答えるには、どんな問題があるのか、主に論理的整合性に関して整理する。

  3. その上で、

  4. 得られたデータの信頼性を揺るがす問題については、それを擁護し、補強する別の資料、論理を用いてデータを頑健なもの(多少の批判にもびくともしないよう)にする。
  5. 結論へといたる論理を展開し、
  6. 結論の意義付けを行う


  7. ことになる。

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留意点

 序論 材料と方法 結果、考察の流れの中に含まれる項目の構成は、それぞれ同じになっているとよい。序論を書く目的は、どんな調査研究をどんな目的で行い、要約すればこんなことが分かったのか、読者に訴えることにある。それに対応して、考察では、主な結論が何であり、何故そのように結論できるのか、論を通すことが目的である。したがって、序論と考察の論理の流れは対応しているべきである。結果では、証拠の具体的な展開が行われる。
 引用・参考文献は、序論における先行研究のレビュー、材料と方法における参考図書、論文の引用、及び考察における論理展開での既往研究の批判的引用、などのために行われる。
 その他、レポート作成上の注意については、実習の手引きp.43-45を良く読んでから書き始めること。

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図表の作成について

 主要な結果は、文章だけでなく、表や図を用いて表現する。ただし、結果を図1に示す、のように書くだけで、どんな結果だったのか、文章で記述されないのはよくない。図表を提示するとともに、その結果の要領の良い説明と、そこから直ちに導かれる事柄について、記述すること。
 パソコンの発達と共に、安易にエクセル等で作図しがちであるが、グラフ用紙を使って、得られたデータの1つ1つを吟味しながら手書きの図を書くことも大切である。とくに、修行中の学生は、手元のデータをどのような図表で表現するのがよいか、手書き図表で試行錯誤を繰り返しておくとよい。良い図が描けたら、友人に見せ、その図を使って自分が得た結果とその意味を説明してみること。うまく説明できなければ、図を作り直す。


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