掲載:2007年12月18日

第97回鳥島アホウドリ調査(2007年11-12月)報告

北西斜面の新コロニーで35組、燕崎斜面の従来コロニーで343組、燕崎崖上で4組、合計382組が産卵し、鳥島集団は順調に成長!

はじめに

 2007年11月21日から12月8日に、伊豆諸島鳥島で第97回オキノタユウ(=アホウドリ)繁殖状況調査を行ないました。今シーズンは、これまでと比べて超順調で、予定通り11月23日に八丈島を出帆し、24日に鳥島に上陸、8日間滞在して、12月2日に鳥島を離れました。

 現地では、燕崎の断崖の中段から、斜面にある従来コロニーを俯瞰してデジタル・カメラで撮影し、それをベースキャンプに帰ってからプリントアウトしました。その写真をもとに、東地区と西地区の営巣地図を作り、それぞれの巣に卵があるかどうかを調べて、繁殖つがい数を確定しました。また、北西斜面の新コロニーについても営巣地図を作り、同じように産卵したつがいの数を調べました。
  鳥島の近くにいる個体の大部分は、夕方、営巣コロニーに帰ってくると考えられます。日没時刻の前後に従来・新コロニーに着陸している個体だけでなく、その上空を飛翔している個体や、沖の海上に浮遊している群れの個体数もハンド・カウンタ−で計数しました。そのとき、全身白色の壮齢に達した個体を数え、それらを除いた若齢個体(およそ10歳未満)の数を求め、区域別にそれらが占める割合を計算しました。






繁殖現状

表1.鳥島におけるオキノタユウの繁殖つがい数(組)と最近2年間の増減

区域
2005年
2006年
2007年
増減(%)
燕崎
東地区
93
84
88
-5 ( -5% )
西地区
213
230
255
+42 ( +20% )
崖上平地*
4
3
4
0 ( 0% )
北西斜面*
15
24
35
+20 ( +133% )
合計
325
341
382
+57 ( +18% )

 繁殖つがい数は、鳥島全体では2年間で57組(約18%)も増加しました。従来コロニーの西地区では順調に増加し(全体とほぼ同率の20%)、東地区では減少したままです(東地区では2004年11月に122組が産卵)。デコイと音声再生装置によって誘引した北西斜面の新コロニーでは急速に増加し、2倍以上になりました(表1)。

表2.鳥島におけるオキノタウの平均カウント個体数(羽)と若齢個体の割合

区域
2005年
(若齢率)
2006年
(若齢率)
2007年
(若齢率)
燕崎
東地区
128 ( 43% )
128 ( 34% )
123 ( 41% )
西地区
394 ( 67% )
429 ( 65% )
405 ( 63% )
崖上平地*
11 ( 74% )
6 ( 65% )
8 ( 86% )
北西斜面*
34 ( 86% )
68 ( 91% )
71 ( 91% )
合計
579 ( 63% )
635 ( 62% )
618 ( 63% )

 繁殖つがい数は増加しましたが、日没時刻にカウントされた個体数は、昨シーズンよりやや減少しました(表2)。これは、調査期間中、天候や海の状態によって滞在個体数が影響を受けたため、と推測されます。凪の日が続くとカウント数は増加し、風があったり、海が荒れたりすると、減少する傾向があるからです。
  しかし、若齢個体(およそ10歳未満だが、繁殖個体をも含む)の割合は、区域ごと3年間ほぼ同じ傾向を保ち、従来コロニーの東地区で若齢率がもっとも低く約40%、西地区では平均的な65%前後、北西斜面の新コロニーでは約90%でした(表2)。鳥島から巣立った幼鳥は、数年間、海で過ごし、若鳥に成長して、繁殖のために鳥島に帰ってきます。そのとき、東地区ではなくて、むしろ北西斜面の新コロニーを選んで、そこに住み着いているのです。
  この若齢個体の割合が高い北西斜面の新コロニーは、いわば「若者集落」で、今後、繁殖つがい数が急速に増加するはずです。それに対して、その割合が低い東地区は「老人集落」で、若鳥の補給が少なく、繁殖つがい数は減少するにちがいありません。平均的な西地区では、今後も順調に増加するでしょう。

将来予測

 これらのつがいが産んだ卵から順調にひなが誕生し、育つとすれば、2008年春にはおよそ250羽のひなが育つことになるでしょう。それらのうち10羽が、2008年2月半ばに小笠原諸島の聟島列島に運ばれて野外飼育され、海に飛び立つので、鳥島から巣立つひなの数は約240羽になります。
  したがって、2008年6月には巣立った幼鳥を含めて、鳥島オキノタユウ集団の総個体数は、推定でおよそ2100羽になります。1999年6月に1000羽に達してから9年間で、とうとう2000羽を突破するのです。もし、鳥島集団が今後も順調に成長すれば、9年後の2017年に2倍の4000羽に到達するはずで、2020年には約5000羽に到達するでしょう。

  来シーズン、すなわち2008年11月の繁殖つがい数は、西地区で約270組、東地区90組、燕崎崖上で5組、北西斜面で45組、合計約410組になると、ぼくは予測します。とくに、北西斜面の新コロニーでは、繁殖つがい数は今後も急速に増えつづけ、2010年には60〜70組になるでしょう。さらに2020年には、大胆に予測すれば、およそ500組になるでしょう。なぜなら、鳥島集団全体の繁殖つがい数は、2011年に500組、2020年にはおよそ1000組になると予測され、そのころには燕崎斜面が飽和して、その半数が北西斜面で産卵するようになると予想されるからです(燕崎斜面の上限は450〜500 組だろうと、ぼくは考えています)。

 あと10年余で北西斜面と燕崎斜面の繁殖つがい数がほぼ同数になるなど、以前にはだれも予想できない“夢のまた夢”でした。それが実現に近づいています。素晴らしいことです!

→鳥島の位置とコロニーの場所を地図で確認する