伊豆諸島鳥島
鳥島におけるアホウドリの繁殖状況
 

2.鳥島におけるアホウドリの繁殖状況

   

2)区域別にみた産卵数の推移

   

表2. 区域別にみた産卵数の推移

産卵年
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001

2002

1)西地区
 
 
 
 
 
 
 
 
崖下
20
24
28
29
31
33
35
39
中央部
66
70
80
89
86
97
98
108
最下部草付き
3
5
5
5
5
5
5
3
小計
89
99
113
123
122
135
138
150
2)東地区
 
 
 
 
 
 
 
 
中央部
63
70
74
80
88
93
104
110
東端部
5
5
6
9
9
9
8
6
小計
68
75
80
89
97
102
112
116
157
174
193
212
219
237
250
266
新コロニー
1
2
1
1
1
1
1
1
全体
158
176
194
213
220
238
251
267

 西地区の中央部は1993年以降、シバとチガヤの植栽が継続された。とくに2000年には、西地区上部の崖下沿いに新水路が形成された。
  この結果、崖の壁に当って落ちる雨水は新水路に排水されるようになり、それまで雨が降るたびに西地区の東側に流入していた小泥流は防止された。

 そして、この地区にステンレス網籠を設置し、(丸太の埋設の代わりに、搬入しやすく頑丈なステンレス網で籠を作り、地面を安定させた)、そこにシバ・チガヤを植栽した。
  その結果、西地区のほぼ半分の区域がアホウドリの営巣適地に変貌した。また、西地区の崖下には、1998年以降、シバ・チガヤが植栽され、この地区も営巣適地となった。

 東地区では1994年以降、中央部にシバ・チガヤの植栽が継続され、営巣適地が造成された。これらのシバ・チガヤ植栽区域では、近年、産卵数は着実に増加している。

 これまで、シバ・チガヤの植栽がなされなかった区域は、西地区の最下部(草付き)と東地区の東端部である。その理由は、かつてこれらの場所にはほどほどの量の植物が生育していたためである(西地区最下部:ハチジョウススキ群落、東地区東端部:イソギク・ラセイタソウ・ハチジョウススキ郡落)。しかし、1995年秋の超大型台風の鳥島直撃や近年の台風の頻繁な接近によって、この区域の植生は衰退の傾向にある(植栽したシバやチガヤは台風の強風にも耐えている)。
 最近、この未植栽地域で産卵数が減少している。この減少が、今季の台風25号の影響によるのか(実際には産卵したが、強風によって卵が巣から転がり出て壊れ、今回の調査では確認されなかった場合を想定)、それとも営巣適地自体の縮小によるのか、吟味する必要がある。