むすび
 
 

5. むすび

    鳥島でも南小島でも、アホウドリの個体数は順調に増加し、総個体数はおよそ
1500羽に回復した。そして、アホウドリは“復活の離陸”を開始した。

もし、陸上(営巣地)と海洋(採食域)の両環境が今後も現状で維持されてア
ホウドリ集団が順調に増加すると仮定すれば、鳥島集団の繁殖つがい数は、2005
年に約300組を超え(約200羽のひなが巣立ち)、2008年ころ400組、2010年に
は約500組、2020年には約1000組になると予測される。

そして、尖閣諸島の集団は、鳥島集団の個体数増加カーブを20〜25年遅れてた
どることになると考えられ、繁殖つがい数は、2005年に約50組、2010年には約
75組、2015年には100組、2020年には150組を超すと推測される。

鳥島や尖閣諸島のほかでは、2000-01年のシーズンに、北西ハワイ諸島のミッ
ドウェー環礁に、鳥島で生まれた4歳(新加入)、8歳(新加入)、13歳、14歳、
19歳の5個体が訪れた。
それらの潜在的繁殖能力を無駄にしないように、2000年11月から、アメリカ連
邦政府魚類野生生物局ミッドウェー環礁国立野生生物保護区事務所は「デコイ
作戦」を開始した(これには2000年、「アホウドリ基金」や「オーシャニック・
ワイルドライフ・ソサエティ」、積水ハウス梅田オペレーションズ株式会社が
協力した。後述)。

まだ、上記の2羽の新加入を除けば、新つがいの形成という具体的な成果は得
られていないが、鳥島から巣立つひなの数が増え、それにつれてミッドウェー
島に移入する個体が増えれば、いずれここに新しいコロニーができる可能性が
ある。

さらに、2000-01年繁殖期には、小笠原諸島聟島列島の嫁島でも1羽のアホウ
ドリが観察された(「小笠原諸島でアホウドリが“営巣”」という報道がなさ
れたが、東京都小笠原支庁自然公園係によって収集されたさまざまな観察結果
から判断すると、繁殖の積極的証拠がなく、これは私の判断では「誤報」だと
考えられる。
孵化しなかった卵の大きさやその他の状況証拠から判断して、クロアシアホウ
ドリの放棄卵を抱いていた可能性が高い。あるいは、その卵を乗っ取ったこと
も考えられる)。

このように、アホウドリの個体数の増加にともない、繁殖地の島以外にもアホ
ウドリが訪れるようになった。これを、かれらの繁殖分布拡大の傾向とみなし
ても間違いではないだろう。

アホウドリ再発見50周年の年に、私たちはかれらの復活への離陸を目のあたり
にしている。かれらの助走をもう少し後押しすれば、20年後には目標の5000羽
を超え、アホウドリたちは完全復活を成し遂げるにちがいない。
そのことに積極的に関わってきた私たちは、それを大いに喜び、素直に誇りと
しよう!