個体の交流
 
 

4. 2集団の間の個体の交流

    南小島で調査中に足環のついた鳥がいるかどうか、50羽ほどをていねいに観察
した。しかし、1羽も標識個体を観察することができなかった。つまり、鳥島
から尖閣諸島に移入した個体は確認されなかったことになる。

伊豆諸島鳥島では、滞在中に少なくとも5羽の若い未標識の鳥(羽色から3〜8
歳と推測)が観察され、そのうちの1羽はひなに給餌していた。

私は、鳥島でほとんどすべてのひなに足環で標識してきたから、足環の脱落が
ほとんどないとすれば、これらは鳥島以外、つまり尖閣諸島で生まれた個体で
あると推測することができる。
まだ、直接的で積極的な証拠は得られていないが、2集団間で個体の交流があ
る可能性が非常に高い(少なくとも尖閣諸島集団から鳥島集団への移入)。

なお、弘前大学農学生命科学部の黒尾正樹さんたちと共同で、鳥島集団の遺伝
学的多様性を解明している(2001年10月の日本鳥学会で研究発表、後述)。