鳥島

第83回鳥島アホウドリ調査報告

1.巣立ったひなの数は171羽

今シーズンに鳥島から巣立ったひなの数は、従来コロニーで170羽、新コロニーで1羽、合計171羽でした。

 2002年11月末から12月初旬の産卵数調査によって、従来コロニーで266個、新コロニーで1個、合計267個の産卵が確認されていたので、繁殖成功率は64%となりました。

 2001年5月には173羽のひなが巣立ったので、この数字は近年最高とはなりませんでしたが、それよりわずか2羽少ないだけでした。

最近10年間の繁殖状況を、つぎの表1に示します。

▼表1 鳥島におけるアホウドリの近年の繁殖状況

 
従来コロニー
新コロニー
鳥島全体
産卵年
西地区
東地区
小計
新コロニー
鳥島全体
 
ひな
ひな
ひな
ひな
ひな

1993

94
50
53
52
29
56
146
79
54.1
0
-
-
146
79
54.1
1994
92
49
53
61
33
54
153
82
53.6
0
-
-
153
82
53.6
1995
89
35
39
68
26
38
157
61
38.9
1
1
100
158
62
39.2
1996
99
58
59
75
32
43
174
90
51.7
2
0
0
176
90
51.1
1997
113
71
63
80
58
73
193
129
66.8
1
1
100
194
130
67.0
1998
123
80
65
89
62
70
212
142
67.0
1
1
100
213
143
67.1
1999
122
72
59
97
75
77
219
147
67.1
1
1
100
220
148
67.3
2000
135
101
75
102
71
70
237
172
72.6
1
1
100
238
173
72.7
2001
138
86
62
112
75
67
250
161
64.4
1
0
0
251
161
64.1
2002
150
98
65
116
72
62
266
170
63.9
1
1
100
267
171
64.0

砂防と植栽を軸とする従来コロニー保全管理工事は、1993(西地区)と94年(東地区)から環境省と東京都によって継続されてきました。

 その結果、鳥島が超大型台風(95年12号、中心気圧925hPa、1995年9月16-17日)の直撃を受けた1995年とその翌年(植生の回復に時間がかかった)の産卵期を除いて、1997年産卵期からは繁殖成功率が60%以上に回復して安定し、毎年129羽以上のひなが巣立つようになりました。

 これ以降の6年間に従来コロニーから巣立ったひなの合計数は921羽にのぼります。これらの数字は、従来コロニーの保全管理工事が成功を収めたことを物語っています。

 もし今後も、従来コロニーで大きな変化が起らなければ、繁殖成功率は65%前後に維持されるにちがいありません(最近6年間の平均は67.0%)。

 また、最近の10年間に繁殖つがい数は139組から267組に増加したので、この間の増加率は平均して毎年6.7%になります。
  もし、この率で増加するならば、来シーズン(2003年産卵期)には約285個の卵が生まれ、それらからおよそ185羽のひなが巣立つと予想されます。

 さらに2004年秋には、約305個の卵が生まれ、およそ200羽のひなが巣立つと期待されます。繁殖集団の単純モデルによっても、産卵数は2003年には281個、2004年には306個と予測され、ほかの方法による予測とほぼ一致します。 巣立つひなの数が念願の200羽に到達することは、四半世紀前には夢のまた夢でした。この数は、故山階芳麿博士が70年以上も前の1930年2月に鳥島で観察したひなの数で、生前お会いしたたびに“ひな200羽”を話してくださいました。
  アホウドリの繁殖状況をひきつづき見守ることが、ますます楽しみになってきました。