掲載:2011年2月24日

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ミッドウェー環礁でアホウドリのひなが誕生!

 2010年11月中旬に、北西ハワイ諸島のミッドウェー環礁で初めて、アホウドリ(=オキノタユウ)のつがいが産卵し、その卵から2011年1月14日にひなが誕生しました(下記サイトを参照)。

http://www.flickr.com/photos/usfwspacific/sets/72157625522391142/

 日本の鳥島と尖閣諸島以外では、初めてのひなの誕生です。ミッドウェー環礁には、鳥島生まれのアホウドリがしばしば訪れていて、とくに1999-2000年繁殖期に3個体、2000-01年期に5個体が観察されました。また、1989年から訪れていた鳥島生まれの1羽の雌は、1993年から2001年にかけて数回、未受精卵を産みました(詳細は下記サイトを参照)。

http://hbs.bishopmuseum.org/birds/rlp-monograph/pdfs/02-Galliformes-Procellariiformes/STAL.pdf

 そうしたこともあって、それらの個体の潜在的繁殖能力を無駄にしないように、お互いに出会わせてつがいの形成を促進するため、2000年11月からデコイと音声を用いた「社会的誘引作戦」が始められました。今シーズン、開始から10年間にわたる関係者の努力が実って、初めてひなが誕生しました。しかし、ミッドウェー環礁で繁殖集団が確立するまでには、さまざまな関門が待ち構えています。

 その第一は、ひなの食物確保です。ミッドウェー環礁には約40万組のコアホウドリと、約2〜3万組のクロアシアホウドリ、そのほかおびただしい数の海鳥が繁殖していて、その周辺海域の食物資源は枯渇状態に近くなっているはずです。 そのため、親鳥はひなのために繁殖地から遠く離れた、食物資源の豊かな海域に「通勤」していると考えられます。実際、コアホウドリはひなを育てている時期に日本列島近海からアリューシャン列島近海まで、またクロアシアホウドリはアメリカ西海岸の沖合まで、遠出をして採食していることが衛星追跡によって明らかにされました。それらの2種は利用する海域を分けて、食物をめぐる競争を避けているといえます。そうした食物をめぐる厳しい競争の中で、大型のアホウドリがひなのために十分な量のえさを集めることができるかどうか、まだわかりません。 ただ、アホウドリの繁殖期はクロアシアホウドリより約3週間、コアホウドリより1ヶ月早いので、競争がいくらか緩和される可能性があります。

 もし、親鳥が満足な量のえさを確保できなければ、ひなの成長は遅れ、巣立ちの時期も遅くなるでしょう。 そして、そのようなことが、今後、数年間にわたって繰り返されれば、ミッドウェー環礁はアホウドリにとって繁殖に適した場所ではないと判断せざるを得なくなります。 その場合には、デコイと音声装置を撤去し、他個体の誘引を中止しなければなりません。
また、もしひなが順調に成長し、鳥島とほぼ同時期に巣立った場合でも、今後、鳥島から別の数個体がミッドウェー環礁に移住しなければ、繁殖集団が確立しません。

 

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2011年1月7日掲載: 北西ハワイ諸島のミッドウェー環礁とクレ環礁でアホウドリが産卵