掲載:2008年9月8日

アホウドリ野外識別ガイド 写真・解説:長谷川博  協力:大江千尋、堀越雅晴

アホウドリの特徴と他種との類似()と相違(

アホウドリ(年齢)

類似種

1)巣立った幼鳥(1歳未満)

 クロアシアホウドリ(幼鳥)

全身黒褐色
全身黒褐色
くちばしは太く大きい 
くちばしは太めだが短い
巣立ち直後のひなのくちばしは黒色だが、その一部はすでに淡い色で、1〜2カ月でピンク色になる
くちばしは黒色
巣立ち直後のひなの足は黒色(その後、しだいに淡くなる)
足は黒色
       
       

2)ごく若い鳥(1〜2歳)

 
  全身黒褐色    
  ピンク色の大きなくちばし    
  顔は黒褐色で、くちばしの根元の周りと目の下が淡黄白色になる     
  足は淡灰青色(黒色が残る個体もいる)     
  翼の上下面とも全体に黒褐色     
       

3)やや若い鳥(3〜4歳)

クロアシアホウドリ(成鳥)

全体に黒褐色
全身黒褐色
ほほや喉、上胸部が灰褐色〜淡黄白色になる 
くちばしの根元の周りと顔前部が白色
黒褐色の翼上面の胴に近い部分に淡色の斑が見えはじめる
翼は全体に黒褐色で、上面に斑はない
(腰の周りが白い個体もいる)
足は淡灰青色
足は黒色
       
       

4)若い鳥(5〜9歳)

コアホウドリ(若い鳥・成鳥)

全体に淡黄白色の部分が広がるが、
背を除く胴体は白色
後頭部から後頸部には黒褐色が残り、背面が白と黒のまだらになる
目の周りに濃灰色のアイシャドウができる
  くちばしは鮮やかなピンク色(淡紅色)   くちばしはやや細く、黄色味がかったピンク色
翼の上面は黒褐色だが、丸く白い斑が大きくなり、目立つ
翼と翼上面が黒褐色であるため、それらが一本になっているように見える
翼の下面は淡灰褐色となり、黒褐色の縁取りや斑が残る
翼の下面は白いが、黒いすじ状の斑がある(若い鳥では黒いすじが太い)
       

5)成鳥(およそ10歳以上)  

 
  胴体は白色で、頭頂部から頸部は濃黄色、胸部は淡黄白色になる    
  くちばしの、先端に残っていた褐色が消失    
  背面は、黒褐色の小斑が消え、純白になる    
  翼上面の前側の縁が白くなり、白い部分の面積が拡大して、白色の斑とつながる    
  翼下面全体が白色となり、後ろ側の縁だけが黒色の線となって残る    
       

注1) アホウドリの体の色は年齢とともに白色部の面積が増すが、足環標識個体の観察によると、それらの間にきっちりした対応関係は認められなかった。同一年齢でも性差や個体差が著しい。雄の方が換羽が早く進むようで、8歳(産卵から数えて8年)で胴体が純白になる雄もいれば、13歳でも後頭部から後頸部に黒褐色の羽毛を残している雌もいる。

注2) 観察しているときの光線の状態によって、色彩の印象はかなり異なる。たとえば、クロアシアホウドリは、晴天で強い直射日光を順光で受けているときには褐色味が強く、曇天で弱い光を浴びているときには黒が強調される。また、アホウドリ成鳥の頭部から頸にかけての黄色は、光が強いと淡く、弱いと濃く見える。

注3) 1977年以降に鳥島から巣立った鳥には(上陸できなかった1978年のすくなくとも12羽と、1999年に従来コロニーでひなに足環を装着するときに飛び立ってしまった2羽と、2006年5月に北西斜面の新コロニーから巣立った数羽のひなを除いて)、すべての個体に金属の足環が装着されている。2008年までに長谷川が標識した個体数は2920羽にのぼる。
  金属足環は、1979〜1985年には右足に、1986〜1992年には左足に、1993〜1997年には右足、1998年には左足、1999年から現在までは右足に装着された。1979〜1997年までは、金属足環の反対側の足にプラスチック製の色足環(3桁の数字を足環の両側に彫刻)が付けられたが、営巣地で火山灰によって磨耗し、それらの大部分はすでに脱落してしまったと推測される。また、金属足環は、1990年まではモネル製(幅13 mm)、1991年からはインコロイ製(幅 9mm)で、後期のインコロイ製の足環は小さいので海上では見にくい。しかし、映像で記録すれば、それを判別できる可能性がある。
  衛星追跡された個体には、別のプラスチック製の色足環が装着されているので、海上で確認できる可能性が高い。

注4) この識別ガイドに掲載されている映像以外に、『写真館』http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/ahoudori/Photo/にも多数の映像が掲載されているので、ぜひ参照してほしい。

 

 

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