インパクト・ファクター
近年メディアセンターによく寄せられる質問のひとつに、“インパクトファクター”があります。
ここでは、インパクトファクターとは何か、その算出方法と調べ方、また関連する引用文献データベースの紹介をいたします。
学外の方へ:このページは当センターの現状に沿った使い方を説明したもので、学外の方には必ずしもあてはまりません。ご所属の図書館にお問い合わせください。
また、数値のお問い合わせにはお答えいたしかねます。
- Impact Factorとは、特定のある雑誌が1論文あたり平均何回引用されているかを算出した数値で、雑誌の影響度を示す指標です。提供元のトムソンサイエンティフィック社(旧ISI社)は、「インパクトファクターとは、ある特定の年におい て、あるジャーナルに引用された“平均的論文”の引用頻度を計るものです。インパクトファクターはジャーナルの引用 率の一般的な大小を計るものですが、同分野におけるジャーナルの重要度を比較するときに有効に使えます。すなわち、インパクトファクターによれば、雑誌の出版部数の多少、発行頻度数の違い、あるいは刊行年数の長短による偏りを除いて、比較することが可能となるのです。」と説明しています。
- インパクト・ファクターは、雑誌の重要度を示す指標のひとつですが、個々の論文評価に代用できるものではありません。対象となる雑誌は、自然科学分野では約5970誌、うち日本の雑誌は欧文誌を中心に約160誌です。
インパクト・ファクターは、直前2年間のデータを使って年に1回発表されます。例えば、1998年のインパクト・ファクター値は、以下のように算出されます。
インパクトファクターの計算式(1998年版)= A/B
A = 1996年~1997年にある雑誌に掲載された論文が、1998年中に引用された総被引用回数
B = 1996年~1997年にある雑誌が掲載した論文総数
これに従って“Cell”誌のインパクトファクターを算出した例が下図です(出典:Journal Citation Reports on CD-ROM/
Science Edition 1998)


“インパクト・ファクター”を知るには“Journal Citation Reports (以下JCR)”という資料を用います。医学を含む科学技術分野には
Science Edition を使いますが、他に社会科学分野、人文科学分野のものがあります。 これによって 「特定の雑誌のインパクトファクター」や「○○分野のインパクトファクター順の雑誌リスト」
などのデータを得ることができます。
また、後項で指摘されているような欠点を補うものとして、 収録誌それぞれについてのレビュー論文と非レビュー論文の数や被引用半減期(Cited Half-Life:収録誌それぞれの文献の寿命を表すもの) といったデータも収録されています。

JCRの Science Editionは雑誌毎の引用データを集計していますが、 もともとこれは“Science Citation Index
(以下SCI)” というデータベースをもとに作成されています。「Citation Index」を訳せば「引用文献索引」となります。
MEDLINE (PubMed) などの通常のデータベースと同じようにキーワードから文献を検索することもできるのですが、 特長は文献と文献の引用関係もデータに入っていることで、
特定の著者や文献をキーに、それを引用している文献、また引用されている文献を検索することができます。
- SCIはオンライン版、CD-ROM製品などがあります。 当センターではオンライン版の Web of Science (1985年以降)が学内LANから利用できます。
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インパクトファクターについて、山崎茂明氏がその現状や特徴、問題点をまとめ、『インパクトファクターの問題を正しく理解したうえで、科学的な指標として活用する価値はある』と述べています。ぜひ全文をお読みいただきたいと思いますが、そのポイントを紹介します。
- インパクトファクターとは何か:正しい理解と研究への生かし方 (1998) 山崎茂明 (愛知淑徳大学文学部図書館情報学科教授) (http://mlib.kitasato-u.ac.jp/homepage/seminar1.html)
- インパクトファクターをめぐる議論が科学界でよく聞かれるようになった。ひとつの契機としては、 1991年に大学設置基準が改正されたことであろう。基準改訂により、各大学独自の教育が可能になると同時に、大学の自己評価が義務付けられたことで、定量的な業績評価への関心が増大した。また、教授選考にあたって、発表論文をインパクトファクターによって評価することを始めた大学もある。そして、大学で編集している業績年報に、発表した雑誌のインパクトファクター値の記載を要求し、講座や研究者の評価を行なっている例も出ている。
- 引用索引の創始者であり、インパクトファクターを科学界に広めたEugene Garfield博士は、インパクトファクターを個々の教員評価に利用すべきでないと注意を喚起している。
インパクトファクターは、特定のある雑誌が1論文あたり平均何回引用されているかを算出し、科学界における雑誌の重要度を示す指標であるが、そのままストレートに個々の論文評価に代用できるものではないからである。
- インパクトファクターランクではレビュー誌が上位を独占しており、原著論文誌と同等に比較するのは適当ではないだろう。論文誌とレビュー誌をわけてランキングした方が理解しやすい。
- 被引用数を直前の2年間にしていることに問題:最近の文献が集中的に引用されるような、多くの研究者が関心を持っている分野と、研究の進度がゆっくり動き長期的に引用されるような分野とでは、インパクトファクター値に影響がでる。
また、同一専門分野では、基礎系誌の方が臨床系よりも長期に渡って引用されている。
- 広く引用を集めることのできる学際的な雑誌と、特定の専門分野を中心に引用を集める雑誌を区別する必要がある。
- 非常に多く引用される論文が存在すると、雑誌の平均値を大きく上昇させることになる。
- インパクトファクターをめぐる不正行為の疑いが、1997年の総合医学雑誌に報じられた。 Leukemia誌が、ライバル誌であるLeukemia
Researchの編集委員長から、インパクトファクターの操作を告発された。Leukemia誌が投稿論文の著者にたいして、意図的に自誌の文献引用を多くするように要請するレターを入手しコピーをBMJ誌に送付した。これは、明らかにLeukemia誌のインパクトファクターを操作しようというものであり、許されるものではないという。必然性のない自誌引用は、インパクトファクターをあげようとする誘導的な操作であり科学の公正さをそこなうだろう。参考までに、この2誌の自己引用率をみると、Leukemia誌の自己引用率の高さが示されていた。なおLeukemia誌は、この告発に反論している。日本の学会誌もその編集後記や会報などで、できるだけ自誌を論文発表時に引用するよう要請しているケースが存在しているが、インパクトファクターへの過度な対応でありこのような必然性の薄い意図的な自誌引用はフェアではない。自誌引用を除外したインパクトファクターの計算も可能であり、雑誌編集者は注意すべきである。
参考文献: インパクトファクターを解き明かす / 山崎茂明著. 情報科学技術協, 2004(INFOSTAブックレットシリーズ)[002||Y]
引用統計:定量的研究評価に関する国際数学連合,応用数理国際評議会,数理統計学会合同委員会報告(研究評価に際する引用データの利用および誤用に関する報告書)
日本数学会 > 会員用のページ > IMU からの情報

インパクトファクターって何だろう?(by トムソン・ロイター) 
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